以前「工場デート」という記事を書いた。初対面の女性を工場へ連れて行ったらどうなるか、というヒューマンドキュメンタリーだ。いや、それは言い過ぎか。
結果はといえばめでたく大成功だったのだが、振り返れば人選がやや特殊だった感が否めない。そもそもあれがはたしてほんとうにデートであったかどうかはなはだ疑問ではある。だけど、それはそれはとても楽しかったので同じメンバーでまた工場に行ってきました。
(text by 大山 顕)
今回出かけたのは、首都圏の工場好きならば一度は訪れておかねばならないあの工場。そう、安中の東邦亜鉛だ。「そう」とか言われても困ると思うけど。
前回の工場デートは鹿島コンビナートで、まさに「ザ・臨海部のコンビナート」といった雰囲気を堪能したが、今回はそれとはまた趣の異なった「山系」の工場を楽しめるはずだ。楽しみだ。メンバーの期待も大きい。
車内ではやはりというかなんというか工場の話題でもちきりだ。妙齢の男女が狭い車内で工場の話ばかり。健全なんだかなんなんだかよくわからん。
■思い思いの工場鑑賞スタイル
まずは安中への道中立ち寄ったセメント工場。大規模な物件で、姿形も美しい。ぶっといパイプが昇り龍のようにうねうねと這うさまはセメント工場の醍醐味だ。
車から飛び降り、歓声を上げながら見入り写真に納める一同。しかしそんなとき…
ひとりだけ工場じゃないものに夢中な人がいた。以前「壁とマッカーサー」でご紹介した、日本を代表する壁の痕跡鑑賞家・杉浦さんだ。
案の定というかなんというか、彼女はこの後の行程でももっぱら壁に興味を惹きつけられっぱなしだった。
一口に「工場鑑賞」といってもいろいろなスタイルがあうものだなあ、とこのときは思った。