東京には星がないという人がいる。 たしかに田舎の夜空に比べてみると星は無いに等しい。 けれども、東京の夜には赤い光が無数にちりばめられている。 高層ビルに灯る赤い光が。 あの明かりを、ぎゅっと集めてしまえたなら、きっときれいじゃないだろうか。
(工藤 考浩)
美しい赤い光
僕は東京の夜空が好きだ。 確かに満天の星は見られないけれど、それとおんなじくらい素敵な光が東京を埋めつくしている。 マンションの窓から漏れる蛍光灯の光や首都高の高架を照らす街路灯。 そして何よりも、高層ビルに取り付けられたあの赤い光。 とてもきれいだ。 どれだけ見ていてもあきないくらいに美しい。
航空障害灯
この赤い光の正式名称は航空障害灯という。 空を飛ぶパイロットたちがその美しさに見とれてしまい、飛行の障害になるためにこの呼び名なのかと思ったがさにあらず、高層ビルに飛行機が衝突してしまわないように法律で取り付けが義務づけられているものらしい。 航空障害灯があるのに飛行機がぶつかってしまっているのを何年か前にテレビで見たことがあるので実際の効果の程は疑問だが、あの美しい赤い光は法律に守られているのだ。
美しい日本の景色を守りたい
ところが、この東京の夜を彩る航空障害灯の設置基準が緩和されてしまったのだ。 どうやら航空障害灯の光を美しくないと感じる人もいるようで、赤い光を減らそうとしているのである。 こんなにキラキラときれいな光が減らされてしまうなんて。 クリスマスの装飾は良くて航空障害灯は悪だなんて、僕は残念でならない。