■お話を聞いてみた
このままだと、売りもしない本を持ってきたり、買いもしない本を漁っているだけの迷惑な人になってしまうので、作業をお手伝いしながらお話をうかがうことにした。
――まずお店を持つにあたり、何をしましたか?
白樫さん:まず「安くて住居つき」という条件で店舗を探して、たまたまここが開いてますよと。住居つきにしては安くて。(札幌の)相場としては、駅から近くて10坪くらいだったら、店だけで9〜10万円なんだけど、それより安かった。他に探すのも面倒だったし。
――開店のきっかけは?
白樫さん:勢いだなあ。
――開店するには、売り物の本を集めないといけないですよね。
白樫さん:本は、すでになんとなく集まってたんだよね。もちろんそれだけじゃなくて仕入れもしたんだけど。大型古書店も探したし。
――自分の置きたい本を探したんですか?
白樫さん:救出だね。「こんな本がココにあっちゃいけない!」という本を救出。たとえばさっきの映画秘宝のような、一部の人にとって価値のある本が、100円コーナーに置いてあったら買わなきゃ。ちゃんと正統な値段をつけてうちに置いてあげます、と。
――家賃以外で高かった設備投資とかありますか?
白樫さん:特にないかなあ。カウンターもカラーボックスだし。レジスターと本棚1個くらい。最初からリフォームはしてあった。前は居酒屋だったって聞いたけど。
――私、この界隈に10年以上住んでますから知ってます。居酒屋の前は中華料理屋で、よく来てました。夫婦でやってたんだけど、おじさんが病気になって店をやめたんですよ。ホイコーロー定食がおいしかった。懐かしいなあ…。
白樫さん:この建物は築40年くらいだって。
――開店は2006年の6月。8ヶ月たって、どうですか?
白樫さん:どうにもこうにも。長くやりたいんだけど厳しいね…。まあ楽しいからいいか。
――お店を続けていけそうですか?
白樫さん:10年続けたいと言ってたけど、3年にしたよ。
――でも、経営は悪いスパイラルではないですよね?
白樫さん:悪いスパイラル中だよ。うまくやらないとサヨウナラだよ。
――ええっ!?
白樫さん:古本屋はどこも大変だもん、明日どうしようかって。
――なるほど…。お客さんはどういう人?
白樫さん:お年寄りが多いな。読んで、売って、また新しい本を買っていく人がいるよ。「今日はどれを借りていこうかな」って言いながら。
――自分の私物の本もあるんですよね?
白樫さん:あるよ、そのへん(カウンター周辺)に積んであるやつ。
――売りたくない本はどうするんですか?
白樫さん:高くつける!
――前職は何をしてたんですか?
白樫さん:学童保育の指導員やってたんだけど、あんまり関係ないね。本は昔から好きだったし。
――このお仕事、本の話ができるのが面白いですね。
白樫さん:それはある!前は本の話ができないっていうのがストレスで。本読んで面白いなあって思っても、同意してくれる相手がいなくて。基本的に古本屋には、本好きが来るし。
――お客と語ったりするんですか?
白樫さん:よく考えたら、俺、知らない人としゃべるの得意じゃないんだ。
――ええっ!?
白樫さん:なんで客商売やってるんだろう。わりと人見知りだしね…。お客さんが来て、声かけようかな、どうしようかな〜と悩んでるうちに帰っちゃう。
――(笑)
白樫さん:そういうのを繰り返してる。たまにお客さんに声かけたら、話が続かないで、何も買わないで帰っちゃったりして。
――せつない!でも、話しかけてほしいのかそうでないのか、わかんないですもんね。
白樫さん:最近ちょっとわかってきた。お年寄りはまず話しかけてOK。逆に戦争の話を始められたりして。「この本いいですよー」なんて話しかけて買ってくれたりしたらうれしいね。あんまりやりすぎると、俺のお勧めでしか買わないような客がいてね。
――いいじゃないですか。
白樫さん:プレッシャーなんだよね。「前にすすめられたアレはイマイチだった」とか言われて。逆にお客さんの方から「これが面白い」って教えてもらって広がったりすることもある。あと、変な本をすすめてしまって、後悔したりとか。
――何か言われたんですか?
白樫さん:そのお客さん、それっきり、来なくなった。
――切ない…。
白樫さん、ありがとうございました! |