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ひらめきの月曜日
 
イクラの中身だけ食べたい

やはり御飯と食べたい

イクラといったら、ベストパートナーは御飯だろう。それが酢飯であろうが普通の白飯であろうが一向に構わない。とにかく御飯にかけよう。醤油のようにかけてやろう。

「せっかく瓶を一杯にしたのにな…」という気持ちも多少はあったが、全てはおいしく食べるための布石でしかないのだ。「瓶がかわいい」とか「色がキレイ」とか「いつまでも見つめていたい」とか言ってる場合ではない。


それにしても、うっとりするなぁ…
躊躇することなくジョバーっとかけます

普通のイクラの場合は乗せた量が一目瞭然だが、この「中身だけイクラ」の場合、いくらかけても御飯に吸い込まれてしまい、見た目がいまいちパッとしない。

でもこれは、あのツルンと歯から逃れる忌々しさが皆無のイクラ御飯なのだ。念願なのだ。いや夢と言ってもいい。見た目ごときに惑わされてなるものか。


さっそく食べてみます。
残されたシワシワの膜も食べてみた。

中身だけのイクラ御飯は、やけにアッサリとした上品な味だった。いや、うまい。うまいですよ。でも、その後に食べた「膜だけ」のイクラ御飯の方が数倍おいしい。

…どういうことだろう。量が足りなかったのか? それとも醤油に直接漬かった膜の部分の方が食べ応えがあるということなのか?

まあいい。次は酢飯だ。


軍艦の上に、中身をタラタラと。
…なんという華のなさ。

瓶に詰まった状態はあんなにキレイだったのに、御飯にかけた途端にこれだ。地味すぎる。

「ぼくたち、膜できちんとコーティングされてないと実力が発揮できないんです」という声が聞こえたような気がしたが、たぶん空耳だ。無視して先を急ごう。

とっとと食べないと、さらに見た目が悲惨なことになる。


どんどん御飯に吸収される中身

普段、イクラの軍艦には醤油を付けずに食べているが、さすがにこれは「醤油を付けるべきだったー!」と後悔する結果となった。アッサリにも程がある。

…やはりそうか。中身だけってのは味が薄いんだ。醤油の味がしっかり付いた膜の部分と一緒に食べることで、イクラとしてのバランスが取れていたのだ。

さっきの声は空耳ではなく、中身たちの心からの叫びだったのだろう。すまなかった。私が悪かった。もう君たちをバラバラに食べようなんて思わないよ。プチプチと我慢強く噛むことにするよ。

でも、せっかくだから最後にもう1つだけ、違う食べ方を試してみてもいいかい?


甘塩のシャケに中身をたっぷりかけて食べます。
…こ、これは!

ビックリした。卒倒するんじゃないか、というほどウマかった。卒倒する代わりに、冷蔵庫に走ってビールを取ってきた。これは酒だ! 出来ればビールじゃなく日本酒だ!

シャケがしっとりとして、なんとも言えずにウマイ。御飯と一緒に食べた時は「物足りない」と感じた塩加減が、ここではシャケ自体の塩気とうまく調和している。

中身、やれば出来るじゃないか!

嬉しくなったのでさらに中身をスポイトで吸い取り、瓶を再び満タンにした。そう、中身をおいしく食べる方法が見つかったのだ。


ほぐしたシャケと御飯を混ぜ、そこに中身をかけます。
しっとりする御飯。

これでどうだ!

マズイわけがない。素晴らしくおいしい。見た目も豪華になったし、ほんとうに満足だ。やって良かった。もう心残りはない。燃え尽きた。

やはりイクラの中身は、それだけでは心もとない食べ物なのだ。何かと一緒になることで初めて実力が発揮でき、人を満足させることが出来るのだろう。その「何か」があの膜であったことに、今さらながらに気が付いた。

すまなかった

「イクラのプチプチは邪魔なだけだ!」と思っていたが、これからは認識を新たにせねばなるまい。

プチッと噛んで中身がジュワーッと出て来たら、残った膜はお役御免になるのではなく、味のバランスという点で無くてはならない存在だったのだ。あれにはきちんと意味があるのだ。

そうとも知らずに数々の御無礼、誠に申し訳なく、ただただ己れを恥じるばかりである。失礼を詫びたい。

膜、うまいね

 
 
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