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はっけんの水曜日
 
近所のヤギ探し

ここだ。

ホテルにヤギがいる

次の目撃情報はなんと家のすごく近くだった。ホテルの隣にある小屋でヤギを見ました、というもの。かなりきれいなリゾートホテルのはずなのだが、ヤギなんているのだろうか。行ってみた。

いた。

頂いた情報のとおり、ホテルの近くに小屋があった。動物ふれあい広場、とかかれている。ここのホテルが宿泊客のために開放している小さな動物園のようだ。小屋をのぞくといた、確かにヤギが二頭暮らしていた。ようやくヤギと対面だ。メエーー。

人が来ると寄ってきます。
ここのヤギは人になれているらしく、触られても嫌な顔せず寄ってくる。だけど首をつかまれたりとか、気に障ることをされると静かに怒る。
子供に触られても平気。
だけどたまに怒って急に振り向くので怖い。

ヤギいた。だけどこれは僕が思い描いていたヤギのいる風景とはちょっとちがった。もっと自然の中で、ほとんど放し飼いの状態で暮らす昔ながらのヤギが見たかったのだ。そういうヤギは本島にはもういないのだろうか。

 

歩道を一歩それると深い緑だ。

草むらにいたらしい

そういえば浦添市の草むらにいましたよ、ヤギ。という情報も頂いていた。浦添市といえば沖縄本島中部に位置する住宅の密集している場所だ。昔に比べ放し飼いのヤギがいなくなったのは、宅地化が進みヤギを飼育できる環境が減ってしまったからではないか。そいう意味では浦添市にヤギが、という情報もにわかには信じ難い。

いるのだろうか、ヤギ。

頂いた情報を頼りにヤギを探す。ここは住宅街の一角なのだけれど、ぽっかりといきなり緑が深い。沖縄にはこういうところがよくある。住宅街にいきなりでかい墓があるように、ある一区画だけが突然手付かずのジャングルだったりするのだ。

 

あれなんだ。

ヤギいました

胸の高さまで伸びた草むらをかき分けて踏み込むと、目の前の斜面で何か動物の気配を感じた。また猫だろうか。ガサガサ・・。いや、でかい。もしかしたら。

「メエエエーー」

ヤギだ。

ヤギだ。
ヤギは自由に跳ね回る。
草むらからヤギがこっちを見ていた。ホテルで飼われているヤギとは違いかなり警戒心が強そうだ。ヤギと僕との間には10メートルくらいの距離があるのだけれど、二人の視線は逸れることなくお互いを捕らえていた。耐えられなくなってカメラに手を伸ばすと、ヤギはぴょんぴょん跳ねながら行ってしまった。

 

紐の先は切り株に繋いでありました。

ちゃんと飼われているようです

このヤギは野生でも放し飼いでもないようだった。曖昧な表現なのは、どうやら長い紐が首輪についているらしかったから。でも本当にすごく長い紐なので、この草むら一帯ではほぼ自由に行動することができるようだ。

なんか用?

実はこのほかにもヤギを探していろいろな場所を回ったのだが、僕の求めていた野生に近い形で飼われているヤギというのは結局この一頭だけしか見つけられなかった。近所にヤギがいる、という状況はもう過去でしかないのかもしれない。

大切な文化です

前述のとおり、沖縄では以前から祝い事などの際に家畜のヤギを倒して振舞うという文化があった。しかし家庭でのヤギのと殺は違法であり許可のある食肉処理場でしか解体してはならない、と考えられ、この伝統文化も風化しつつある(許可なく解体を行う「密殺」が横行しているのが実態というが)。実際は事前に県に届出さえすれば家庭でと殺することは違法ではない(もちろん解体、処分はしかるべき方法で行う必要があるが)。このままだとあと数年もしたら本当に近所にヤギのいる環境はなくなってしまうのではないか。

住宅地にぽっかりと茂った草むらにたたずむこのヤギは、僕たち人間になにか大切なことを語りかけているかのようでした、と世界遺産を紹介する番組みたいに含みを持たせて終わりたいと思います。メエーー。


 

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