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ひらめきの月曜日
 
ソリ引くビジネス人間


今年はまだ、雪が少なく感じる札幌。
以前、「ソリ引くお母さん」という記事で、雪国におけるソリ事情をお伝えしましたが、その記事の最後に以下のようなことを書きました。

ふだん、重いノートパソコンや書類を持ち運ぶのがつらいという方は多いと思うが、いっそソリではどうだろう。ソリ自体は軽いし、いらないときはそのへんに立てかけておけばいい。

ビジネスシーンにソリ。

いかがだろうか、雪国のビジネスマンのみなさん。
「冬はラクだよ、ソリが使えるからね」
そんな風に、冬を自慢してみたい。

…そんな風に冬を自慢できるかどうか、ビジネスシーンにソリを持ち込んでみました。

(text by 加藤 和美



■荷物が重い(切実)

なぜ今回、ビジネスシーン…つまり仕事の場でソリを使おうと思ったのかというと、とにかく自分の荷物が重い。

まずノートパソコンが重い。
ふだんはバッグを2個に分けるか、入りきらずに旅行用バッグを使用している。

私は荷物が重いのが嫌いで、できる限り荷物を減らす主義だった。
荷物が重いくらいなら、不便だってかまわないくらいの意気込みで荷物を減らす。

しかしビジネス人間(ビジネスマンというと男性のようなので、ここではビジネス人間と呼ぶことにする)としては、仕事に必要なものを「重いから持ちたくない!」というわけにもいかず、ひーひー言いながら荷物一式を持ち歩いている。

それにしてもなぜこんなに重いのかと、この日のバッグの中身を並べてみた。


本当は、ゴミとか紙クズも入っている。

  • ノートパソコン、電源アダプタ、マウス
  • 書類、ノート、スケジュール帳
  • 筆記用具
  • 名刺ケース
  • デジタルカメラ、バッテリー
  • ポケットティッシュ、ハンカチ
  • 携帯電話2個、電源アダプタ
  • 領収書、印鑑
  • サイフ
  • メモリースティック
  • 手袋、マフラー
  • Wiiリモコン(非ビジネス)

よく見ると化粧ポーチを忘れていた。
これ以外にも、本やペットボトルなどが加わるとより重い。

改めて重さを測ってみた。
バッグが2個で、3.4キロ+1.8キロ=5.2キロ。

5.2キロ!?

重い重いとは思っていたが、具体的に数値で知ってしまうと、さらにげんなりだ。

冬場になると、札幌のお母さんがたは子供をソリに乗せて引っ張っている。
私もこの荷物をソリに乗せて引っ張れば、スイスイと歩けるのではないだろうか。

とにかく重い生活から脱却したい。
いざ、ソリライフへ。


買う前にソリをチェックする友人。
私たちの後にソリを買っていた親子連れ。やはり冬のマストアイテムか。

■ソリを求めて

お子さんのいる友人につきあってもらい、ホームセンターへと向かった。

この季節、ソリは売れセンなのか、店舗の外に置かれていた。
友人いわく、ソリを買うときの注意事項は

    • ソリの深さが浅いと、引っ張っているときに子供がバランスを崩してひっくり返るので、深い方がいい。
    • ヒモは最初についているものより、長いヒモに付け替えた方がいい。

なるほど、実体験にもとづいた貴重なアドバイスだ。

ちなみにこれはあくまでも「子供を引っ張って歩くためのソリ選び」であって、「レジャーのためのソリ選び」ではないのでお間違えなく。


よくお母さんが子供を乗せて引っ張っている、中型サイズでシンプルな形のソリを購入。

ちなみに価格は、定価880円、特価で595円だった。
予想以上にリーズナブルだ。

ソリを買うビジネス人間。
ソリ、ゲット。これで重い荷物とオサラバできるか。

 

うれしくなって走り回るビジネス人間。
自分の荷物を引っ張る。ふだん重い重いと言ってるのがウソのようだ。

■とりあえず引っ張ってみよう

ソリを購入したので、まずはスタンダードな使用法を試してみた。

友人のお子さんを乗せて引っ張ってみる。
お子さんは4歳、体重は約15キロ。
子供を乗せたソリを引っ張るのは、子供のころ以来、約20年ぶり。


実際に引っ張ってみたところ…軽い!!
15キロとは思えない。
少し引っ張っただけでスイスイとソリが進む。

調子に乗って走り回ったら、ソリがひっくり返ってお子さんが落ちそうになった。
いかん、はしゃぎすぎた。


では、次に自分の荷物(約5キロ)をソリに乗せて引っ張ってみる。

やっぱり軽い!!
荷物の重さを感じないくらい軽い。


これなら、もっと重い荷物だって平気かも!?
借りたはいいが、持っていくのが重くて返していないマンガを返せるかも?
ビールをダース買いとは言わず、箱買いできるかも?


ソリ導入に、意外と期待がふくらむ。
よい手ごたえを感じつつ、住宅街からビジネス街に向かった。

じゃ、行ってきま〜す。

 

ソリを持ちつつも、なるべく颯爽と歩こうとこころみるビジネス人間。
人々の視線を感じるのは気のせいだろうか。

■ビジネス街に行く前に

駅までの道中は荷物も軽く、通行人もほとんどいなかったので快調だったが、駅に着いたところでフト我にかえった。

「駅ではソリを持ち歩かなきゃいけない!」
「まわりに人が多い!」


住宅地では、子供を乗せたお母さんや、荷物を乗せたご老人をよく見かけるが、駅や電車の中ではほとんど見かけない。

それなのに、お母さん風でも、ご老人でもないビジネス人間が、ソリを片手に歩いているのは異質だ。

「きっと何か事情があって、ソリを持って歩いているのだな。それにしても何の事情があるのだろう」
と思わずにはいられない雰囲気でもある。


この際、恥ずかしがる方がみっともないので、なるべくさりげなくソリを持ち歩いたつもりだが、どうだろうか。

ソリを持って歩くと、ソリが風にあおられて歩きにくい。
もたもたしていたので、必要以上に異質だったかもしれない。

切符を買うビジネス人間。
通勤電車だと迷惑だな、こりゃ。

 

歳末で浮かれ気味の地下街を歩くビジネス人間。

■ソリとともに歩く

約束まで時間があったので、地下街やお店をウロウロしてみた。
やはり通りすがりの人々に「チラッチラッ」と見られたが、時間がたつにつれだんだん平気になってきた。

ただ、やはり不便なのは否定できない。

  • ソリ自体は重くないが、片手でソリを持ってしまうと不自由。サイフの出し入れなどが難しい。
  • 荷物を片手で持たなければいけないので、より重く感じる。
  • とにかくじゃま。
「スイスイと重い荷物を引っ張って歩く」という姿のみを想像していたが、よく考えたら移動は屋外だけではなかった。
快適なビジネスライフを送るつもりが、反対に、より不自由にしてしまっている。
来年の手帳を物色するビジネス人間。
客観的に見ると、「コイツどっから来たんだ」と疑問がわくのは否めない。

 

■では、いざビジネス街に

屋内(地下街)では、その実力を一切発揮できなかった、むしろ迷惑だったソリだが、ひとたび屋外に出れば活躍するだろう!

と、鼻息も荒く屋外に出る。
そして、周囲を見回す。

……ビジネス街の主要な歩道は、ロードヒーティングされていた!!
おまけにまだ雪が少ないので、ほとんどの歩道に雪が積もっていなかった。


雪の積もっている歩道を探してみるが、なかなか見つからない。
重い荷物とソリを持って、雪道を探してウロウロと歩き回る…。

「重い荷物を持って歩く」
という、私が最も嫌う行為を、なぜ、わざわざしなければいけないのか。
悲しい気持ちでいっぱいになりながらも、とりあえず約束の場所へと向かった。


想像以上にロードヒーティング面積広し。
整備された札幌のインフラが、この時ばかりは憎い。

 

ソリを引いて横断歩道を渡るビジネス人間。
拡大するとこうだ。

■雪道発見!

約束の場所へと向かう途中、雪が積もっている…というより凍結している場所を見つけた。

それは横断歩道だ。
車や人が常時通るので、横断歩道上はツルツルになっている。

これなら、ソリを引ける!!


さっそくソリに荷物を乗せ、信号を渡る。
おお、軽い!
そうだよ、この感覚を求めていたんだよ!

などと浮かれたのもほんの数十秒。
十数メートル歩いただけで、横断歩道は終わり。
いつもツルツルしていて転びやすく、歩くのが怖い横断歩道も、この時ばかりはありがたい存在だった。


ソリを引く(荷物が軽い)余韻にひたりつつ、またソリと荷物を手に持って歩いていくと、だんだんロードヒーティングされた歩道が少なくなってきた。

待ってましたとばかりに荷物をソリに乗せて引っ張る。
軽い、軽いぞ〜!

住宅地のボコボコ道路と違って、歩道が平らで、ソリが引っ張りやすい。
加速がついて、ソリが私の足にドカドカぶつかってくるくらい快調だ。いててて。
ソリは真後ろで引くより、体の横で引く方が良いようだ。

相手先のビルを探してさまよう。暗いけどこれで午後4時。
ソリを引くビジネス人間を動画でどうぞ(音が出ます)。

 

今日は1階の管理人さんがいなかった。ラッキー。
こんにちは〜。
出入口にこのソリを置いたら、みなさんの迷惑になりそうだ。

■目的地到着

スイスイと快適にソリを引きながら目的地へ。
入口の前でしばしたたずむ。

うーん、ビルに入るには、また重い荷物を持たなければいけない。
でも外は寒いので、いつまでもいたくない。
それ以前に、もう約束の時間だ。

ふたたび、重い荷物を手に、相手先の会社へ向かう。


ソリを持って会社におじゃますると、約束していたお一人だけでなく、他の皆さんも出迎えてくださった。
いつもならうれしいはずの出迎えだが、青いソリを片手に持った今は気まずい。

なんとなく事情を察しているらしい皆さんは、うっすら笑いを浮かべている。

ああ、誰か、誰かこのソリについて触れてくれ。
内心そう思っていると、一人の方が声をかけてくださった。
「ソリ、すごいですね!それ引いて来たんですか?」

ありがとうございます!!
このまま、このソリについて触れられないままだったらどうしようかと思いました。


私が今日、ソリを持ってくると伝えてあった方は
「さっき外に、ソリを引っ張っていたおじさんがいたので、加藤さんの関係者かと思いました」

そんな、「ソリ」というキーワードで、見ず知らずのオジサンといっしょくたに。


この会社に来るのは初めてだったが、ソリのおかげで一気に和気あいあいとした雰囲気に…と言いたいところだが、ソリがなくてもたぶん和気あいあい。

むしろソリを持ちこんだうえ、写真を撮って帰った非礼をお詫びしたい。
理解のある会社さんでよかった。

というわけで荷物と一緒に、かたわらに置く。
ソリの色がビビッドで少し落ち着かない。
「どうですか、ソリ」「正直じゃまですね」と、ソリ雑談で打ち合わせの雰囲気もなごやかに。

■ソリの可能性はまだあるはず!

今回、ソリと共に1日過ごして、以下のことがわかりました。

  • ソリは想像より安かった。ノーマル880円、ジャンボ1480円。
  • 普通では持てないような重い荷物でもラクラク運べる。この点は間違いなく便利。
  • ソリは軽いが、ハバをとる。
  • 乗せているもの(例:子供)がひっくり返りやすいので、カーブでは注意が必要。
  • ソリを引っ張って歩くと、荷物がひたすら無防備になるので、荷物を持っていかれても気がつかない可能性がある。防犯面で弱い。
  • 札幌中心部は歩道にはロードヒーティング、地下道や地下街が多く、予想以上に雪道を歩くことがない。
  • 私の荷物の重さは1歳児と同じくらいの重さ。ふだん子供を抱っこして歩いているお母さんはすごい。


記事だけを読むと、「ビジネスシーンでソリを活用する」という企画がハズレのように思えるかもしれませんが、私と、同行してくれた友人(子供の送り迎えにソリ使用)の総意としては、
「ビジネス用のソリを作ってくれれば使えるかも!いや使いたい!」
ということです。


今回の問題点「じゃま」「見た目がかっこ悪い」「荷物を盗まれそう」という点を改善して、従来の見た目ではなくシンプルなデザインで、折りたたむことができ、軽くて、荷物をバンドなどで止められるようなソリがあれば、実際に使えるのではないでしょうか。

駅やバス停から自宅までの距離が長い人にとっては助かるアイテムになるかもしれません。

重い荷物から解放される日を夢見つつ、今日も重い荷物を背負っています。

パフェを食らうビジネス人間。ソリを隠しきれていない。

 

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