■目的地到着
スイスイと快適にソリを引きながら目的地へ。
入口の前でしばしたたずむ。
うーん、ビルに入るには、また重い荷物を持たなければいけない。
でも外は寒いので、いつまでもいたくない。
それ以前に、もう約束の時間だ。
ふたたび、重い荷物を手に、相手先の会社へ向かう。
ソリを持って会社におじゃますると、約束していたお一人だけでなく、他の皆さんも出迎えてくださった。
いつもならうれしいはずの出迎えだが、青いソリを片手に持った今は気まずい。
なんとなく事情を察しているらしい皆さんは、うっすら笑いを浮かべている。
ああ、誰か、誰かこのソリについて触れてくれ。
内心そう思っていると、一人の方が声をかけてくださった。
「ソリ、すごいですね!それ引いて来たんですか?」
ありがとうございます!!
このまま、このソリについて触れられないままだったらどうしようかと思いました。
私が今日、ソリを持ってくると伝えてあった方は
「さっき外に、ソリを引っ張っていたおじさんがいたので、加藤さんの関係者かと思いました」
そんな、「ソリ」というキーワードで、見ず知らずのオジサンといっしょくたに。
この会社に来るのは初めてだったが、ソリのおかげで一気に和気あいあいとした雰囲気に…と言いたいところだが、ソリがなくてもたぶん和気あいあい。
むしろソリを持ちこんだうえ、写真を撮って帰った非礼をお詫びしたい。
理解のある会社さんでよかった。 |