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ひらめきの月曜日
 
濁ったワインを飲んできた

発酵途中のワインでした

腑に落ちないまま店を後にしたのだが、なんと店で飲んだナゾの飲み物はガイドブックにちゃんと載っていた。ホテルに帰り、今さらながらに「地球の歩き方」を読み込んでいたら、あっさり掲載されていたのだ。泥縄式とは、このようなことを言うのだろう。

正式名称は「シュトゥルム」。まったくナゾでもなんでもない。ちゃんとした飲み物だった。

シュトゥルムとは発酵途中のワインのことで、発酵して4週間くらいの物を指し、9月上旬から10月下旬にしか出回らないらしい。なるほど、そんな時期限定商品ならば、わざわざ紙を貼るワケだ。シュトゥルム。よし、覚えたぞ。

新しい言葉を覚えてからウィーンや近郊の街を歩いてみると、やたらと貼り紙の存在が目に付いた。これに今まで気が付いていなかったとは、非常に悔やまれる。


まだ開店前の店の扉にも
手書きの紙が
こちらはカフェですが
ここには2枚。frischer って、きっと「新鮮な」って意味に違いない(違うかもしれない)
この店は黒板だらけですが
手書きで「STURM」の文字発見

もう至るところシュトゥルムだらけだ。日本でいうところの「冷やし中華始めました」的なノリなんだろうか。いや、この場合は日本酒の「新酒あります」みたいなもんか。

味は限りなくジュースに近いが、アルコール分はワインと同じくらいあるらしい。しかも「甘く糖分が高い為に血液に吸収されやすく、まわりが早い」のだそうで、飲みやすいだけに非常にキケンな飲み物なのだという。

それにしても、フランスやイタリアでは国が解禁日を決めて新酒のワインを飲むというのに、オーストリアでは発酵途中の物が飲めるとは驚きである。なんだか、急にこの国に対して親しみが湧いてきた。いいぞ、オーストリア!


町中の一画にある小さな路上カフェにも
貼り紙発見!

貼り紙ばかり観察していたってしょうがない。ここはやはり、飲まねば。席へ着いて給仕さんに「シュトゥルム!」と告げ、あとはじっと届くのを待つ。

昼間っからワインかよ、とも思うが、周りだってビールだのワインだのを好きに飲んでいる。ああ、素晴らしき哉、観光客。そしてウィーン。


やってきたシュトゥルム。色が濃い。おそろしく濃い。

最初に飲んだものより濁り度がずいぶん増した。発泡は全くなく、アルコール臭もプンプンする。でも甘い。そしてえらいことウマイ。おかわりしたいくらいウマイ。

かと思えば、次に飲んだシュトゥルムはこんなだ。


これが同じシュトゥルムか?ってほどに色が極薄です
こちらはザルツブルグ近郊の湖を走る遊覧船の中で売っていた一杯。景色も含め、まるごとウマイ

きっとワインの醸造所によって仕込みの時期が違うのだろうし、味や見た目も違って当然なのだろう。飲む店によって全てタイプが異なっていたが、どれもこれも非常に美味しかった。

さらに、スーパーをブラブラしていて「おや?」と思う瓶を発見。なんと、シュトゥルムは自宅でも飲めるのか!


なぜか、お酒売り場じゃない棚に置いてありました。1本2リットルの巨大瓶がズラリ
赤いシュトゥルムまであったとは! 飲みてぇー!

きっとワインの醸造所によって仕込みの時期が違うのだろうし、味や見た目も違って当然なのだろう。飲む店によって全てタイプが異なっていたが、どれもこれも非常に美味しかった。

さらに、スーパーをブラブラしていて「おや?」と思う瓶を発見。なんと、シュトゥルムは自宅でも飲めるのか!


ぜひホテルに持ち帰って飲みたかったのだが、この日はあと数時間で帰国、という日であった。瓶ごと抱えて日本に持ち帰ろうかとも思ったが、なんとこの瓶、コルクで栓がされていない。

そりゃ発酵途中のワインなのだ。栓などしようものならポン!と飛び出てしまうのだろう。アルミで形ばかりの覆いをしてあるだけの瓶を抱えて飛行機になど乗ったら、気圧の変化でどんな惨事が待ち受けているか分からない。

泣く泣く諦めて日本へ帰ってきた。

再訪したい場所が、またひとつ

日本へ帰って来てから、インターネットでシュトゥルムのことを調べてみた。sturmとはドイツ語で「嵐」を意味する言葉らしい。瓶の中で泡立ちながら発酵する様子を嵐に見立てたのだろうか。なにやらロマンチックじゃないか。

そして、どうやら完成前のワインを飲ませるのはオーストリアだけではないという。ドイツでは「ノイアーヴァイン」や「フェーダヴァイザー」という名前で、同じような時期に飲まれているようだ。な、なにー!?

なんて素敵なんだ、ドイツ語圏! いやもう、これはそのうち絶対にまた飲みに行きます。それまでは白ワインとリンゴジュースを合わせた疑似シュトゥルムでも飲んで、教育テレビのドイツ語講座を見続けたいと思います。

旅は、きちんと下調べをしてから行きたいものだ

 

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