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東急メディアコミュニケーションズ


はっけんの水曜日
 
東京の車窓から

(text by 大塚 幸代



野球中継やサッカー中継を見るのが苦手だ。
めちゃめちゃキライというわけではない。たとえば同居人がいたとして、その人がナイターが大好きだったら、相手が喜んでるところが見たいので、ナイターをつけるだろう。
でもコドモの時は辛かった。家族中がマラソン中継に熱狂してる時は、ブーたれていた。退屈でしょうがなかった。
「人が走ってる画面だけじゃーん! 変化ないじゃーん! どこが面白いんだよ、お笑いスタ誕とか見ようよ!」とか思っていた。

そんな「動く画面」のなかで、唯一好きだったのは「ツール・ド・フランス」だ。
私が見たときは、車かバイクにカメラが付けてあって、選手を追っていた。
つまり、選手の目線が見れた。
地面スレスレに流れて行く景色はきれいで、いつまでもいつまでも、見ていたいような気持ちになった。
で、「あれ? 何かに似てるなあ」と思った。

「あ、運転席の景色だ」

(野球もサッカーも、選手の視点にカメラを設置するのは、不可能だろう。もし出来たら、すごい映像なのだろうけれど)

競輪のように、走る自転車を横から見てもぐっとこないのに、走っている自転車の視点は楽しい。
自分が移動しているような、疑似体験が出来るからだろうか。
「移動」ってどうして楽しいんだろう。移動中は移動以外、何も出来ない状態なのに。


「流れて行く画面を、自分で撮ってみたいな」
とふと思い、手持ちのデジカメ

を持って、町に出た(ご老体のザクティだ)。

こいつには限界がある。512メガバイトのカードが入っているので、30分弱しか、動画が撮れないのだ。

「東京、30分以内…たくさんの人の記憶にあるような場所で移動って……何撮ればいいんだ?」

2分くらい考えて、安直に「中央線」を撮影することにした。
東京の真ん中を走る電車だ。

1日目の撮影は、まず新宿から東京まで。
すいてる時間を狙って、運転席横のガラスを陣取る。

撮影してから駅で、早送りでプレビューした。20倍速だ。

 

おおおお。すごい。ただこれだけのことなのに、なんだか楽しい。
youtubeにアップしよう! 世界の人に見せたいな! そう思いながら、いったん自宅に帰った。

ちなみに5倍速の動画はこちら。

 

2日目、こんどは新宿から、吉祥寺に向かうことにした。
まずは横から撮影した。私がいつもよっかかるほうのサイド、新宿に向かって右側を撮った。
高い高いビル群から、しばらくすると、どこまでもひらぺったい町になっていく。
この家の部屋のいっこいっこに、人の人生が入っているとグラグラする。

(20倍速動画)

 

(5倍速動画)

 

 

帰りはまた、運転席横から撮影した。 

(20倍速動画)

 

(5倍速動画)

 

 

撮影しながら、ずっと前、「電車でGO!」という運転ゲームの第一回大会に、取材に行ったときのことを思い出した。
「高い点数を出すのと、美しい運転をするのは違うんですよ」
と、選手は言った。
「どういうことですか?」
「例えばね、駅に止まるとき、ゆっくり減速したほうが高得点が出るわけです。
でもね、ホームが近付いてるのに、電車がノロノロ、なかなか止まらなかったら、乗っているお客さんがイライラしちゃうでしょう?」
周囲にいた選手達も、うんうん、そうなんだよねえ、とうなづいていた。
彼らはみんな、「架空の乗客」を乗せていたのだ。

私は昨年、うっかり、自動車運転免許を失効してしまった。
だから自動車にもバイクにも乗れない。

人の運転するもので移動して、景色が見れるのって贅沢なことなんだろうな、たぶん。
しかも、それがデスクトップで気軽に見れて疑似体験出来るなんて、すごい世の中になったもんだ。
これからも、いろいろ車窓から撮影してみたいな。

そんなことを思った、夏の終わりでございます。

 


※youtubeにもアップしました、地味に世界に発信中。

https://www.youtube.com/profile_videos?user=yukiy02


映像編集:Masaru Imayoshi(digital beam)


 

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