運命のロングヘアー

髪の毛で得をしたい。

さまざまな方向でひとり検証してみたが、その効力を発揮するのは「不倫相手宅のバスルーム」では？という結論に行き着いた。

舞台は都内の高層マンション。
帰郷していた奥さんが我が家へもどり、疲れをとろうとバスルームに行くと……。
運命を決める、一本のロングヘアー。
そうだ、風呂場に残したたった一本の髪の毛が、不倫相手の奥さんに自分の存在をアピールしてくれる。
ものすごい破壊力だ。
ただし、奥さんも長い髪の毛を生えそなえていたらさっぱり意味がないではないか。
そこで私は、髪の毛文字を推奨するのである。

シャワーを浴びたあと、風呂のカベに私の髪の毛が1、2本へばりついていることがよくある。
その自然な曲線は、てきとうな感じで空に浮かんでいる雲と似ている。犬だったりソフトクリームだったり、いろんなカタチに見える。
文字がたいへんむずかしかったため、今度は絵を描いてみることにした。
そうだ、髪の毛は風呂場で芸術作品になりうるのではないか。

風呂だいきらい。一刻も風呂からでたい私だが、これで風呂好きになれるかもしれない。

まあいいや。
芸術作品はとっとと断念した。
だいたいまともに絵も描けない私が、髪の毛でなにか描こうなど無茶な話だった。
もっと実用的に、そしてあっという間に、髪の毛を活用する術を探っていこう。