紙ねんどで鉢植えに
立形水飲水栓の土台になりそうな物を求めてホームセンターをさまよっていたのだが、ちょうどよい大きさの盆栽の鉢が目についた。 よし、これで行こう。 紙ねんどで立形水飲水栓を固定すれば、すてきな土台になりそうだ。 そもそも盆栽の鉢は、植えられた樹木を引き立たせるためのものだ。 用途としてはぴったりではないか。
ちょっとカッコよくなっちゃった
試みは成功した。 立形水飲水栓はしっかりと力強く立っている。 栓を開くハンドルの重みでやや傾いているが、紙ねんどが固まるまで補正してあげれば大丈夫だろう。
それにしても、まるで何かのオブジェみたいになってしまった。 なぜだろう、芸術作品のような存在感がある。
せっかくだからケースに入れる
思いのほか立派なのが出来上がってしまった。 一体これはなんだろう。 当初の「立形水飲水栓を愛でたい」という意図とは違っている気もするが、立派なのはいいことだ。 立派ついでに、人形ケースに収めてみよう。 そうすれば、より価値あるものに見えて来るのではないだろうか。 実際には水の出ない蛇口なんて何の価値もないが、ケースに入れると新しい価値が生まれるかもしれない。
フリマで売れるんじゃないか
蛇口を鉢植えにしてケースに入れたら「なにか立派そうなもの」になることがわかった。
もしかしたら、これ、売れるんじゃないだろうか。
この鉢植え立形水飲水栓(ケース入り)の価値を確かめるべく、週末に開かれているフリーマーケットに出店してみた。
おもいきり警戒される
会場の運営本部で受付をすませ、出店準備にとりかかる。 といっても、持ってきたのは「鉢植え立形水飲水栓(ケース入り)」のみである。 他の出店者が、与えられたスペースいっぱいに商品を広げる中、 ボクは「鉢植え立形水飲水栓(ケース入り)」を前にぽつんとたたずんでいる。 隣のブースにいた女性の出店者は、こそこそと一度広げた商品をまとめて、ボクから離れた場所へと移動をはじめた。 たぶん怪しまれているのだろう。 ボクは何も悪いことなんかしていないのに。
人が近寄ってこない
フリーマーケットの会場にはたくさんのお客さんが来ているのだが、みんなボクの前を避けて通る。 中には「鉢植え立形水飲水栓(ケース入り)」に興味を持ってちらりと視線を落とす人もいるのだが、ボクが「よろしければどうぞ」と声をかけると(これは、他の店の人が言っているのをまねしてみた。なにが「どうぞ」なのかはわからないんだが。)逃げるようにその場を立ち去る。 ボクはちっとも悪いことなんかしていないのに。
欲しいって言ってもらった!
雨も降ってきて、フリーマーケットの終了時間も迫ってきて、誰も「鉢植え立形水飲水栓(ケース入り)」の価値を理解してくれないのかとあきらめかけていた所、ひとりのお客さんが立ち止まってくれた。 「これ、何ですか?」 「蛇口です。」 「いいですね、欲しいです。」 「本当ですか?」 「はい、欲しいです。」 率直に言って驚いた。 逆に申し訳ない気持ちになってしまう。 気の迷いじゃないかと何度も意思を確認するが、本当に欲しがってくれているみたいだ。
お買い上げありがとうございます
「鉢植え立形水飲水栓(ケース入り)」が欲しいと言って下さった柿野さんというこちらの男性、お部屋のインテリアにたいへん凝っているとのこと。 そのお眼鏡にかなって嬉しい。 嬉しいので、お代は頂戴しないことにした。 これでお金をもらったらバチが当たりそうだから。 柿野さんの気が変わらないうちに、さっさと梱包して、手渡してしまえ。
お家に飾ってもらってます
その後、柿野さんから写真付きメールが届いた。 「公園の蛇口と盆栽のミスマッチがやけに怪しくエロくなんともいえない個性を出している作品だと思い、思わず足を止めて見つめてしまいました。」 気に入っていただいた様でうれしい。 トイレットペーパーが二つも付いているような豪華なトイレに飾っていただいて、作った甲斐があるというものだ。 柿野さん、ありがとうございました。
柿野さんが経営されている会社のHP https://genki-web.com/