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ロマンの木曜日
 
百穴、のち、土蜘蛛人

ブラックホールは山にもあった。冷たい。

墓の下の軍事工場へ

まずはひときわ大きな穴に入ってみましょう。

こちらは墓穴ではなく、1945年に起工された「地下軍需工場」です。
じっさいに見学できるのは、3500人もの労働者がいた区内のほんの一部。
閉ざされた鉄格子の奥には、この何倍もの世界が……。

闇のなかに、なにかがうごめいているような気配がします。同行者をおどろかせたいのと、気を紛らわしたい一心で大声を張りあげましたが、あまりの反響のよさに自分が一番ビビりました。

山でのエコーはすがすがしいものですが、内部ではそうではないと思い知りました。


思い知ったところで本物の百の穴を見学します。

今でこそ墓とされている穴の正体。

明治二十年当時、大発掘ののちに認知されていたのが「住居説」でした。


こんなに正々堂々と、断定しちゃっています。

「土蜘蛛人(コロボックル)の住居であり、のちに墓穴として利用されたものであると断定された。」

と看板にそうハッキリと書いてあります。

駅のホームに降りた時から、ただならぬ空気を感じてはいました。そこへきて「土蜘蛛人」です。私たちはヤられてしまいました。

この看板を目にしたあとに見上げる穴だらけの山。私の目には古代の集合住宅としか映りません。
もうムリ、墓とかぜったいムリだから。

どうみても大集合住宅(団地)です。じっさいには291戸。

 

穴のある風景。穴情緒があります。
古代文字を解読する現代人

土蜘蛛人は地底人だよね?
先人たちが諸説をくりかえしてきたように、私たちにも「土蜘蛛人は地底人説」が持ちあがりました。
説というより当然のなりゆきでしょうか。

ケイタイで検索したところによると、「背は低く手足がやたら長い」という容姿にたどりつきました。
旅人を地底の巣窟へ誘いこんでは生き血を吸うともいいます。幸い生き血はまのがれましたが、魂を抜かれた気分です。

土蜘蛛人の文字を発見
とうとう住居跡の壁に、土蜘蛛人の古代文字を発見しました。
「愛」「殺」「参上」「夜...露..死....苦!」ここには書けない卑猥なことばも散見されます。
中でも私たちをのちのちまで苦しめた「まどぎわ」
またか。でも一番多かったのが「合格」です。さっぱりわけがわかりません。やはり土蜘蛛人の書いた文字は現代に生きる私たちには解読不可能でした。

穴はエントランス説
いくら身長が低くても、この穴を家族の住居とするのは窮屈ではないかとの意見がでました。
総勢9名で協議の結果、今私たちが目にしている穴は「住居ではなく入り口である」と断定されました。

手足も長いことですし、地底から手を伸ばして郵便物を受け取ることもできるわけです。

寝心地はよかったのですがこのあと歯が取れる祟りが……
土蜘蛛人もこうしてすべり降りていたにちがいない


この建設的な意見によって、今まで疑心暗鬼にかかっていた数名も「土蜘蛛人の存在」をにわかに信じてきたようです。

それまでさほど関心がなさそうにしていたイラストレーターのフジモトマサル氏が、私たちが描いていた「想像図」をいきなりもぎとったのには驚きました。よほどガマンがならなかったのでしょう。
そしてササッと、「これぞ土蜘蛛人」と自信100%で描いてくださいましたのでこっそり載せておきます。


 

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