子供の頃に夢中になった遊びのひとつ、折り紙。
いつ頃からか、大人になるにつれてやらなくなってしまった。ただ、ちょっと調べてみるとわかるが、世の中にはその道の達人が考案した、ものすごく精巧な折り紙もある。
かなりすごくてテンションが上がるが、自分には絶対できそうもない。そう考えると、上がったテンションもすぐ下がる。
それでもいろいろ本を当たると、初心者向けのおもしろい折り紙もあるではないか。今回は、入門向けの楽しい折り紙に挑戦してみたい。
(小野法師丸)
折り紙でテンションを上げたり下げたりしてみようという今回の試み、まずはすごい折り紙で興奮してみたい。
ふりがなも振ってあるし、大人ならできるよね
まず参考にしたのは、『はじめての多面体おりがみ―考える頭をつくろう!』」(川村みゆき・著 日本ヴォーグ社)という本。
「考える頭をつくろう!」という呼びかけには「いや、そういうつもりは…」と弱気になるが、「はじめての」というタイトルの部分で、なんとか挑戦してみようという気になる。
この本に載っている作品の基本的な考え方は、一枚の折り紙で一つの部品を作り、それを組み合わせて幾何学的な立体を作ろうというもの。
作品の完成像はかなりすごいのだが、部品一つ一つはそんなに難しくない。
部品それぞれは簡単だが、いくつも作る必要があるので、打ち込んでいるうちに自然と気持ちが作業に集中してくる。丁寧に折り目をつけていく心地よさの感覚は久しぶりだ。
折り始めてしばらく、作ろうとしている作品に必要な部品が折りあがった。これを組み立てていくと完成だ。
部品の接続部同士を組み合わせる。作られた部品の隙間の形にフィットしたものをカシカシと入れていくのは、何かができあがる予感を湧かせる。
おお、組んでみると、それが折り紙だとは思えないくらいのものに仕上がった気がする。読んでいる方と気持ちを共有できているだろうか。
やればできるじゃん、自分。折り紙でうれしくなる気持ち。今度はもう少し難しいのに挑戦してみよう。
なかなか根気の要る作業。それでもうんざりしないのは、しばらくがんばればちゃんと作品ができるという実りが約束されているからだろう。
働く大人が普段している仕事では、それをしたことで何がどうなるのかよく見えていないこともままある。折り紙はそうじゃないから単調な作業でも楽しいのかもしれない。
今回の作品は先ほどのよりはかなり難しい。組む段階になっても、何がどうなっているのか試行錯誤しながらやっていくことになった。
あ、今、考える頭が無理やり作られているかもしれない。
おお、完成して普通にうれしい。苦労した分だけ喜ばしい。
しかしこの立体、見たことある気がする。金平糖、でもいいのだが、もっと懐かしい感じのあれだ、そうだ、エヘン虫だ。
ご存じない方のために簡単に解説しよう。昔、のど薬のコマーシャルで、のどがイガイガする原因としてこうした物体がのどにいる、という模式的な説明がされていたのだ。その物体の名が、エヘン虫。
立体的な彼と出会えてうれしいのだが、長時間の作業で疲れたのも事実。今度は癒し変化球とでも言える折り紙をやってみたい。