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ちしきの金曜日
 
カニカマの実力を検証する

●カニカマ騙し討ち

 カニとカニカマの区別はつく。これまでの実験の結果からは、残念ながらそうとしか言えない。

 しかし前ページの実験方法は、カニカマにとって不利なものだったかもしれない。被験者がもともとカニとカニカマがあるとわかっている状態でいるだからだ。それでは「どっちがカニカマか」と、犯人探しに躍起になるのが自然だろう。

 ならば、あらかじめカニカマにカニのふりをさせてはどうだろうか。


すっかりカニ気取りのカニカマ


 空になったマジカニの甲羅にカニカマを詰める。カニ気分も俄然盛り上がってくる。

 お読みの方でこれがカニカマに見える方がいるのなら、それはここまでの記事でこれがカニカマだと知っているからではないか。なんだかわからないが、僕はカニカマ側の人間だ。

 では、これをカニカマだと知らない人に食べさせたらどうなるか。


一見おだやかな夕食のひとときに見えるのだが
交錯するカニとカニカマ

 そういうわけで、やってきたのは筆者の実家。あらかじめ「カニ持ってくから」と連絡をし、マジカニの脚の身と並べて盛り付ける。カニカマがカニと認定される演出にぬかりはない。

 カニカマとカニとの融合。その瞬間は近い。


静かにそのときが訪れのを待つ

 普通に始まった夕食。高鳴る胸を隠すのがつらい。

 しかし、こういうときに限って父も母も寿司を連発で食べてばかりだ。早くカニを食べてくれ。

 じれったく思っているところに、「このカニもおいしそうね」と言いながら母がカニに箸を伸ばしてきた。食べやすくなっていることもあってか、甲羅の中のカニをつかんで小皿に取る。


皿の上のものをじっと見つめる母

 母の動きが止まった。

 皿へ落とした視線に疑念の色が浮かぶ。


「これはカニカマだよ!」

 じっくりと見極めた上で放たれたカニカマ宣言。「カニカマじゃない?」という疑問形ではなく、きっぱりと断定。

 惜しい、あと一息だったのだが…。

 趣旨を明かした上で話を聞いてみると、盛り付けてある段階ではあくまでカニだと思っていたとのこと。手元の小皿に乗せてまじまじと見た時点でわかったらしい。

 カニカマ、ここに散る。今回の実験では、カニカマはカニの壁を越えられなかったと言わざるを得ない。

カニカマとわかっても笑顔

●カニカマのおいしさよ永遠に

  実験としては厳しいものがあった今回の検証。しかし印象的だったのは、カニカマだとわかっても喜んで食べていた母の姿だ。「カニカマもおいしいよね!」と、怒った風もない。

 原点を忘れていた自分に気づく。カニカマはカニカマでおいしいのだ。

 どうして僕たちはカニとカニカマを比べてしまうのだろう。カニカマをカニだと思い込もうとすることが間違いの始まりなのだ。カニカマはカニカマ、それでいいじゃいないか。

 カニカマのありのままを受け入れたい。そう、目の前にあるカニカマは、世界にひとつだけのカニカマなのだから…。


 

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