カニを模倣したかまぼこ、カニカマボコ。日常的にはカニカマという略称もなじみ深いと思う。
カニという豪華な食材に憧れる気持ちが生み落としたカニカマ。カニの代替食品とも思われがちだが、個人的にはおいしさのポテンシャルは高いと思う。
実際おいしいよね、カニカマ。別にカニをまねたことで卑屈になる必要はない。
もしかしたら本物のカニよりおいしいと言ったら言い過ぎか。スーパーなどでは100円くらいで売られているカニカマだが、その実力を確かめてみたいと思う。
(小野法師丸)
●人はカニとカニカマとの見分けがつくのか
カニカマの実力を検証する今回の試み、実験を行うに当たって用意したのは「スマイル」というカニカマだ。
カニカマ界、ネーミングの新機軸・スマイル
オホーツクや北の味サラダと名乗っているカニカマもある中、スマイル。一気に抽象的だ。
念のため「smile」を辞書で引いてみたが、そこにあった訳語はあくまで「微笑」や「ほほえみ」といったもの。中学校のときに習った通りの意味しかない。
もちろん異論はない。微笑というのはカニカマが持つたたずまいをよく表しているとも思う。
今回の実験は、本物のカニとカニカマとを用意し、目隠しをして食べたそれがどちらなのかを当てるというもの。カニカマの実力とともに、人間の認識の正確さを問う実験でもある。
この実験は妻の実家で行っていたのだが、様子を見ていて「それはわかるでしょ!」と、自信たっぷりに言い放ったのは義母だった。
そういうわけで、まずは義母が挑戦。
ニつを順番に食べてもらい、どちらが本物でどちらがカニカマかを答えるというルール。自信はかなりあるようだが、果たしてどうだろうか。がんばれ、カニカマ!
少しばかり首を傾けはしたものの、「うん、うんうんうん……」と、自分の中での答えに自信はある様子だ。ちなみにこちらがカニカマだが、やはりわかってしまっているのだろうか。
続いてふたつめ、本物のカニを食べてもらう。
「これはやっぱり簡単よ!」と義母。「最初のがカニカマで、あとのが本物でしょ」。
ご名答だ。アイマスクをした状態でも「当たり前じゃない」という表情が伝わるくらいの余裕。悔しくてこのあとも何度か答えを告げずに二つを食べてもらったが、百発百中で正解だ。
義母を越えられなかったカニカマ。やはりカニカマはカニカマでしかないのか。
こういう結果を見せ付けられると、このあと同じことをする私に大きなプレッシャーがかかってくる。大丈夫だろうか、ちゃんと見分けることができるだろうか。
さあ、口の中に未知のカニが入ってきた。もぐもぐもぐ…神経を味覚に集中させろ。こんなに真剣な気持ちでカニカマ(もしくはカニ)を食べるのは初めてだ。
思わずうなって考え込んでしまったが、考えていることはそれがカニかカニカマかということ。
まずはっきり言えるのは、どっちもうまい、ということだ。
いや、そんな答えを求める実験ではない。最初がカニ、あとのがカニカマ。目隠しをしたままそう告げると、周囲から「正解!」との声。
そうか、やはりそうだったか…。
この嬉しいような悲しいような気持ちはなんだろう。やはりカニカマはカニカマだとわかってしまう。それでいいのか。
別にいいとも思いますが、カニカマには別のやり方でもうひとがんばりしてもらいます。