ランチタイムをはさんで調査は続く

AM11時45分。
飼育管理主任の渡邊深雪さんが牛たちにエサをやり始めた。茨城県出身の渡邊さんは福田牧場に務めて4年になる。それでも今までに牛のゲップを聞いた事はないという。

渡邊さん「ゴホッゴホッってむせてる所は見たことありますけど……」

咳ではなくゲップ。僕は牛のゲップを求めているのだ。

2種類の干し草をもぐもぐと反芻し始めた2番。

マイクを向けたまま、僕もコンビニで買ってきたおにぎりを食べる事にした。鮭と明太子。2番が物欲しげに見ている、様な気がした。

2番も僕もランチを終え、更に小一時間が過ぎて牛舎内が肌寒くなって来る。2番はいっこうにゲップをしてくれない。10時から見張ること3時間、集音マイクからは2番の鼻息しか聞こえてこない。

ヘッドホンから聞こえてくるこの鼻息がやけに人間ぽい。僕のすぐ隣りで太った人が作業している様な錯覚に陥ってしまう。耳元にそんな吐息を感じながら、時間は無情にも過ぎて行く。

以前、某テレビ番組がヤギの出産シーンを撮影しに福田牧場にやって来たという。AD風の若い女の子が一人、夜通しカメラをまわしていたらしいのだが中々出産に至らず、朝ご飯を食べに小一時間ほどはずしたら運悪くその間に出産してしまったという。その女の子が会社でどれくらい叱られたかは想像に難くないが、僕も同じミスを犯さない様、牛の前から離れずに6時間粘った。

しかし、2番はゲップをしてくれない。

牛のゲップ、調査報告

結局、現場では牛のゲップを確認する事が出来なかった。

念のため、事務所に戻ってから録音されたデータを聞き直してみた。すると、これはゲップなんじゃないか、という音を５つピックアップする事が出来た。

現場では気付かなかったが、これがきっと牛のゲップの音なのだ。そして、音で確認出来たゲップの頻度は6時間に5回。更に、牛のゲップはさりげない、という事を補足させていただき、今回の調査報告とさせていただきます。

僕が借りたロッカーの鍵

取材協力：福田牧場　https://www.fukudafarm.jp/