湯葉とわたくし
たとえば居酒屋で。「ものすごく湯葉な気分だぜ!」と思って注文したのに他の人の箸がどんどん伸び、思うように湯葉を口に出来なかった、という経験はないだろうか。
私はある。ものすごくある。
さらに、たとえば和食屋で。おいしそうな湯葉がチンマリした器にチンマリした量しか盛られておらず「湯葉、もう終わりか」と思った経験はないだろうか。
私はある。わりとある。
そんなこんなで、私にとって湯葉とは「遭遇するチャンスは数あれど、たくさん食べた記憶のない食べ物」というイメージが出来上がっている。
今回の試みは、その積年の恨みを晴らす絶好のチャンスだ。今日ばかりは誰にも邪魔されず、湯葉を独り占めできるのだ。好きなだけ食べられるのだ。 |