試してみるのは新商品
10月4日の発売日まで、街中で無料配布されているらしいのだが、とにかく先入観なく飲んでもらいたいのだとか。
いいだろう、そっちがその気ならこっちにも考えがある。専門家にお願いしてテイスティングしてもらおうではないか。
本物を連れてきた
そんな八木さんに聞いた。
--テイスティングってどうやるんですか。
「テイスティングでは主に外観、香り、味の順にチェックします。資格受験では、ブラインドテイスティングの試験があって、チェックシートに記入しながら、品種や産地、ビンテージなどを回答したりしますね。」
「ワインはぶどうの品種によって味わいが大きく変わってきます。テイスティングの勉強にはまず代表的な5品種を飲んでみて、それぞれの特徴を把握しておくといいと思いますよ。」
■白ワイン
ソーヴィニヨン・ブラン
シャルドネ
■赤ワイン
ピノ・ノワール
カベルネ・ソーヴィニヨン
メルロー
しかし聞けば聞くほど「コーヒー飲んでください」とは言い出せない状況になってきた。困ったぞこれは。
「ワインは目と鼻と舌とで楽しむことのできる飲み物です。」
八木さんはいう。
「それからワインは料理に合わせて、そのマリアージュを楽しむシーンが多いかと思います。どのワインを選べばいいのか迷ったら、基本的にはお料理や食材との産地を合わせるといいかと思います。」
--はい。でも今回はですね。
「あとこれはご存知かもしれないんですが、基本的にお肉には赤ワイン、魚には白ワインを合わせます。あとは軽めの料理には軽めのワインを、逆に重ための料理には重厚なワインを合わせましょう。」
今回は、コーヒーなんですよね
これ
ワインエキスパート、缶コーヒーをテイスティングする
ほら、缶コーヒーにもいろいろ種類や味があるだろう。それを的確に言葉にできたら便利だと思わないか。後付けだけれど、僕は思う。
というわけで半ば強引に話を切り上げ、コーヒーのテイスティングに移ってもらった。今回は評価してもらうKIRINの缶コーヒーに加え、比較のため他社の商品も3種類飲み比べてもらっている。
どうでしょう、八木さん、新しいコーヒーは。
「そうですね、まず外観ですが、少し濁りがありますね。」
--濁ってますね、なにせコーヒーですからね。
いまおれはワイン詳しい人にワイングラスでコーヒー飲ませているのだ、という経験のない後ろめたさとそれに比例した達成感を感じる。なんというか、満足である。
「このKIRINの新しい缶コーヒーは、他の商品とくらべてローストしたアーモンド、干し草やナツメグのようなアロマが印象的ですね。鼻に抜けていく香ばしさと余韻が長く、心地よさを感じさせてくれるワインです。甘口ですがキレがあり、サラッと滑らかなタッチですね。酸味が少ない分シンプルな味わいといえます。すみません、ワインではなくコーヒーでしたね。」
すばらしい。いや、もうワインでいいです。
こんな聞き惚れるほどすばらしい評価を与えられた缶コーヒーがこれまであっただろうか。
あとで八木さんのテイスティングシートを見ると実に細かくチェックがされていた。
香り:十分な、豊かな、芳醇な、コーヒー、ほし草、ナツメグ、クローブ、薪、炭、焼きたてのパン
味わい:なめらか、甘口、穏やか、ほろ苦い
テイスティング、おもしろい
そしてこのシートを使えば、テイスティング素人の僕たちでも、ある程度味や香りを言葉にすることができそうである。八木さんの真似をして、われわれも缶コーヒーの味を説明してみることにした。
ワイン素人が缶コーヒーをテイスティングするとどうなるのか
ちょうど企画会議に集まっていたライター陣にテイスティングをお願いした。そうだ、われわれはライター、いわば言葉のプロである。見えない「味」を言葉にするのも、むしろ得意なんじゃないか。
期待していますよ!
すごい気遣いだ。
ここで気が付いたが、そもそも僕たちは言葉のプロとはいえワインに詳しいわけでもないし、テイスティングだって初体験なのである。それをいきなりコーヒーでやるのだ。みかん農家にうまいリンゴの見分け方を聞きに行くみたいなものである。
それでもテイスティングシートを前に真剣に缶コーヒーを味わってみると、何か味覚を分解して指先から出力しているような気分になってくる。普段こんなに考えながらコーヒー飲むことないもの。
今回は比較のために他社の缶コーヒーも一緒に味わってもらいながら新しいコーヒーの味を分析していく。
きだてたく(文具ライター)
香り:控えめ、コーヒー、ナッツ、鉛筆
味わい:なめらか、甘口、ソフトな、心地良い
さすが文具ライター、鉛筆で表してきた。2Hくらいの、というところからしてシャープでキレのある味わいが見て取れる。と思ったら味わいに、ソフトでなめらかって書いてあるな。どっちなんだ。
他社製品に比べてキレがありながらなめらか、という複雑なコーヒー感を表現してくれたと信じたい。
つづいて辞書や県境を専門とするライター西村さん。
西村まさゆき(県境ライター)
香り:強い、黄桃、干しあんず、コーヒー、サンザシ、こけ、バニラ、なめし皮、枯葉、ファンデーション、焼きたてのパン、コルク
味わい:心地よい、やや甘口
都市計画の珍しさが評価されて世界遺産に登録されたというブラジリアをあげてきたのはさすがである。言いたかっただけともとれるが、香りにこけと枯葉を入れているところにも西村さんならではのわびさびを感じた。新しい缶コーヒーから感じられる「焦がし感」を枯葉に見立てたか。
そんな西村さん、実はコーヒーは年に1杯飲むかどうかという生粋の紅茶派であるという。
毎日1~2杯はコーヒーを飲むというウェブマスター林さんはどうか。
林雄司(ウェブマスター)
香り:控えめ、ブラックベリー、干しプルーン、コーヒー、サンザシ、ピーマン、胡椒、なめし皮、鉛筆、石油、パイ生地、濡れた雑巾
味わい:なめらか、辛口、苦い
それから他の人がのきなみ「甘口」と表現しているところを「辛口」にチェックしたのも、コーヒー好きの林さん的に新しい缶コーヒーの「コーヒー感」を表しているのかもしれない。
会社でもよく缶コーヒーを買っているライター藤原くん。
藤原浩一(プープーテレビ)
香り:芳醇な、黒すぐり、干しプレーン、コーヒー、ナッツ、しだ、シナモン、なめし皮、薪
味わい:なめらか、爽やかな、苦い
石原たきび(俳人)
香り:ほどほど、ブラックベリー、レーズン、コーヒー、サンザシ、干し草、シナモン、なめし皮、薪、ファンデーション、焼きたてのパン、コルク
味わい:なめらか、やや甘口、ソフトな
最後に以前お店でコーヒーを出す仕事をしていたことのある編集部安藤のテイスティング結果です。
安藤昌教(むかない安藤)
香り:豊かな、ナッツ、シナモン、じゃ香
味わい:心地よい、やや甘口
コーヒーはなめし皮なのか
嗅覚と視覚よりも、味覚と嗅覚から得た情報の方がふくらむイメージが広い、ということだろうか。これはおもしろいなと思った。
テイスティングしてみよう
今回は缶コーヒーでやってみたのだけれど、普段こうやって真剣に味や香りについて考えて言葉で表そうとすることってほとんどないので面白かった。「味」って向き合えば向き合うほど濃く、印象的になるんじゃないかと思う。
KIRINの新しい缶コーヒーを飲んだ人はぜひテイスティングに挑戦してみてください。どの人の感覚と似ているのか、照らし合わせてみても面白いと思います。