エステーががんばっている人を応援する理由
今回はエステーとのタイアップ企画なのだが、なぜ、エステーはがんばっている人に消臭力10年分をプレゼントするのか?
その答えは消臭力の新しいCMにある。
CMには、残業で夜遅くまでオフィスに残りパソコンを見つめるサラリーマン、学ランに身を包んで声を張り上げる応援団、そして、ハリウッド映画さながらのシチュエーションで人助けをしている外国人など、様々ながんばっている人たちが登場する。そんな人たちを励ますべく、西川貴教さんが笑顔で登場、消臭力をプレゼントするのだ。
エステーはがんばっている人を応援したくて仕方ないのだ。
しかし困った。
がんばっている人を探さないといけない。
がんばっていない人とがんばってる人
がんばっていない人なら心当たりがある。
最近飲み屋で知り合った60才前後のおじさんだ。お酒が大好きなようで、昼間から酒を飲んでる写真がFacebookのタイムラインによく流れてきて、「この人がんばらないなぁ」といつも思う。いや、人知れずがんばっているのかもしれないが、ちょっと分かりづらいし、昼間から酒を飲んでいる写真は説得力に欠ける。
分かりやすく本当にがんばってる人。
何人か思い浮かぶ人はいる。例えば職場の近所の横断歩道のおじさんだ。春夏秋冬、雨の日も風の日も毎日旗を持って歩行者を車から守っている。あの立ち姿はどこか神々しい。
仕事先の営業さんで、いつもカバンを2つ持っている人がいる。常に両手がふさがっていて凄くがんばっている風に見えるのだが、大きなカバン1つにまとめればいいのに、という気持ちもある。
横断歩道おじさんに「あなたはがんばっているので消臭力10年分をプレゼントします」と突然声をかけたら怒るだろうか。とても生真面目そうな人だから、きっと怒るだろうな。
暗礁に乗り上げる
青い鳥のパターンだ!
がんばっている人を探したい。ウェブマスターの林さんに相談した。
投稿でがんばっている人を募集しようか、街に出てがんばっている人を探してまわろうか。色々と頭を悩ますうち、ある一つの答えが導き出された。
「俺たち、がんばってますよね」
ふと思いついたように、林さんがそう言った。
デイリーポータルZは今年で14年目、春夏秋冬、雨の日も風の日も毎日記事をアップし続けている。記事を書いているライターたちががんばっているのは間違いない。
今までの記事の中で、これを作るのにこんなにがんばった。そんな観点でライターにプレゼンをしてもらうのはどうだろう?
横断歩道おじさんを労う前に、身内のがんばりを称えようじゃないか!
がんばった話大会開催決定
ライターによる「がんばった話大会」を実施したい。エステーはその提案を快諾してくれた。
そして、7月某日、都内某所にて「がんばった話大会」が開催されることとなった。
デイリーポータルZから参加するライターは全部で20名。
林雄司、きだてたく、平坂 寛、べつやくれい、岩沢卓、橋田玲子、石川大樹、古賀及子、伊藤健史、江ノ島茂道、ネルソン水嶋、ヨシダプロ、クリハラタカシ、小堺丸子、三土たつお、住正徳、地主恵亮、北村ヂン、大北栄人、安藤昌教(敬称略、プレゼン順)。
プレゼン会場には「消臭力プレミアムアロマ」10年分が届いている。
がんばった話大会会場
消臭力プレミアムアロマ10年分
消臭力は1個で3ヶ月間使用できるので、10年分は40個ということになる。しかし、会場に届いた消臭力は54個。正確には13年半分ということになる。
参加ライターの1人、編集部の古賀さんは54個の消臭力を前にして、
「絶対にもらって帰る!」
と鼻息を荒くした。
なんでも、古賀さんの息子さんが「うちのトイレ臭いから使わない方がいいよ」と友人に言っているのを聞いてしまったのだそうだ。
また、同じく参加ライターの地主さんは「スライドを70枚作ってきました」と張り切っている。事前の連絡で一人の持ち時間は5分と告げられていた。70枚のスライドを5分でこなすことができるのだろうか。
開始前の写真を見ても、古賀さんと地主さんのやる気は明らかである。
拳を突き上げてやる気を見せる古賀さんと地主さん
と、2人のやる気を冷静に伝えているようだが、僕もプレゼンには参加する。もちろん、「がんばった話大会」優勝の称号と消臭力10年分を狙っている。
古賀さんや地主さんや僕だけじゃない。参加ライター全員が、消臭力10年分を取りにくるだろう。誰が一番がんばったのか。プレゼンを聞いてジャッジするのは、エステー宣伝部特命宣伝部長の鹿毛康司さんだ。
審査委員長の鹿毛康司さん
いかにして鹿毛さんのハートを掴むか。それが勝負のポイントになるだろう。
また、プレゼン自体のがんばりを判断する基準としてサーモグラフィーカメラが用意されている。
プレゼン者の体温をサーモグラフィーカメラで観測
高額なサーモグラフィーカメラ(林さん私物)
体温をリアルタイムで表示
プレゼンに熱が入り、プレゼン者の体温が上がるとスクリーンの表示が赤く変化していく。リアルタイムで変化するプレゼン者の熱量も判断の基準にしていただくのだ。
林さんと僕の進行で「がんばった話大会」がスタート。目の前でスマホをいじっている藤原さんが気にかかる。
次ページから、ライターによるがんばった話スライドショーをダイジェストでご紹介しよう。
がんばった話大会 前半戦
ビルの屋上にあるビニールハウスのような会場は、夏の日差しを受けてむしむしと暑い。
そんな暑さを吹き飛ばすように、まずはウェブマスターの林さんから真冬にがんばった話のプレゼンが始まった。
命の火は比喩ではなかった 林雄司
しばれフェスティバルでがんばりをプレゼンする林さん
・氷点下20度になる町で行われた耐寒コンテストに参加した
・寒さのあまりデジカメのバッテリーがあっという間になくなる
・「命の火」という焚き火があったがその名は比喩ではなく、本当に助かった
林「ちょうどその日、休憩所のテレビでスペースシャトルがバラバラになっている映像が流れていました。寒いだけじゃなく、世の中が大変なことになっている。そんな風に思ったことを思い出します」
大変だったから数年後に大北くん、石川くんを送り込んだのは負の連鎖だと思う。でもあれ以来誰も行ってないのでそろそろ誰かが行くべきでは。
知らないおばちゃんから記念撮影を頼まれました
一晩でおにぎりを7、8個食べる きだてたく
食レポの苦労をプレゼンするきだてさん
・食べ物系のネタが多く、食べるシーンの撮影には苦労が多い
・セルフタイマーで撮影しているがNGカットだらけ
・コンビニおにぎりを煮るという企画では一晩でおにぎり7、8個食べて大変だった
きだて「セルフタイマーで1度のに10カット撮影する設定にしているのですが、10枚のうち9枚は失敗カットです。美味しそうに食べてる写真を撮るのは大変です」
きだてさんは良くダイエットを試みているが、食べ物系のネタを続ける限り、ダイエットは難しいように思う。
失敗カットにはこういう表情の写真がいっぱい
380日かけてカスみたいな魚を捕まえた 平坂寛
カスみたいな魚を釣ったがんばりをプレゼンする平坂さん
・カスみたいに簡単に釣れると噂のカスザメを釣ろうと思った
・実際は全然簡単ではなく、途中から釣り上げるのを諦めて、手で捕まえる方向に
・捕まえるまでに費やした日数は380日。かかった費用は213,000円
平坂「カスみたいな魚を釣るためにかかった費用についてフィッシングツアーの会社に問い合わせたところ、その金額があれば南の島でカジキのリゾートフィッシングが楽しめると言われました」
1匹の魚を釣り上げたい。その執念が強すぎて、途中から釣りじゃなくて潜って捕まえる作戦に切り替えている。しかもかかった費用が213,000円である。一言で言うと、バカだ(もちろんいい意味で)。
壮大なスケールのがんばり
読者の愛犬にチョップしたかったけどグッとこらえるのをがんばった べつやくれい
犬とのがんばりをプレゼンするべつやくさん
・テレビの知識だけで犬を散歩させたいと思った
・レンタルペットと読者の飼い犬で試してみた
・実際はテレビのようにうまくいかず、読者の愛犬だから気を使って大変だった
べつやく「タッチという名のチョップで犬を躾ける方法があったのですが、読者の愛犬にチョップをするわけにもいかず。チョップしたい気持ちを抑えることにがんばりました」
チョップしたい気持ちを抑えるのにがんばったとのことだが、チョップしたところでワンちゃんが言うことを聞いたかどうかは分からない。だから、チョップしなくて良かったのだと思う。
タッチという名のチョップを封印するがんばり
ギネスチャレンジの動画記録でたくさん走らされた 岩沢卓
とにかく走って動画を撮影したがんばりをプレゼンする岩沢さん
・ハイタッチでギネスチャレンジという企画の動画撮影を頼まれた
・ハイタッチに挑戦する安藤さんの姿を撮影していたら、ギネスの人から記録確認用に映像を使いたいと言われた
・期せずして安藤さんと並走して撮影することになり、トラックを何往復も走らされた
・ランナーは走る服装だったが自分は普段着だった
岩沢「以前にハイタッチに挑戦した人の映像を見たら、ランナーの頭に記録用のカメラをつけていて、並走するカメラマンはゴルフカートに乗っていました。撮影後にそれを知ったのですが、下調べの大切さを痛感しました」
期せずしてトラックを何往復も走らされた岩沢さん。撮った映像をその場で再生して確認する必要があり、動画再生ソフトのインストールまでやらされたという。何でも屋さんか!
がんばった結果、鬼武者のような表情に
友のためにベンサンを大量に仕入れる 橋田玲子
友の会グッズ仕入れ業務の苦労を語る橋田さん
・デイリーポータルZ友の会のグッズ仕入れ業務を担当している
・今までに46個のオリジナルグッズを会員に送ってきた(グッズが届くのは月額1000円の松コースの会員のみ)
・会員増を狙って会費よりも高い「いいもの」を送ったり、商品のお金を個人的に立て替えていたり苦労が絶えない
橋田「グッズ送付が完了するまで、商品がちゃんと届くのか、立て替えたお金は戻ってくるのか、グッズについて友に怒られやしないか、など色々と不安を抱えながらではありますが、がんばっていこうと思います」
「いいもの」の例の中にベンサン(便所サンダル)がある。ベンサンをいいものだと思っている価値観が斜め上を行っている。しかも、自費で立て替えて大量に仕入れて。世の中には色々な仕事があるものだ。
「いいもの」の例がサングラス、ベンサン、Tシャツ。
真冬の渋谷駅前でダンゴムシを誘導する4時間 石川大樹
ダンゴムシと格闘した苦労をプレゼンする石川さん
・徒歩5分、ダンゴムシ何分? という撮影をした
・徒歩で5分かかるところ、ダンゴムシだったら何分かかるのかという検証
・渋谷駅からスタートしたが、その日はその冬一番の寒波がやってきた
・寒さのせいでダンゴムシが冬眠しそうになるのをホッカイロで温めたり、お巡りさんから声をかけられたり
・寒波の中、4時間にわたってがんばった。
石川「一緒に撮影をしていた大北くんが、途中で抜けて一人だけ牛丼を食べていました。その間、僕は外国人たちに囲まれながら、がんばっていました」
なぜダンゴムシなのか? それを考えたら負けなのだろう。4時間がんばった結果、ダンゴムシは13m75cm進んだらしい。要らぬ知識とはまさにこのことだ。
渋谷駅前での撮影は苦労が絶えなかったという
車がないからずぶ濡れになるし獣道に出るし 古賀及子
車がない取材の大変さをプレゼンする古賀さん
・1日に十数軒のロードサイド店を訪ねるような取材でも車がない
・電車、バス、徒歩で目的地を巡るしかない
・バスの本数が少なかったり、ずぶ濡れになったり、気づいたら獣道を歩いていたり
・とにかく車がないと大変である
古賀「長い間そんな苦労を続けてきましたが、タクシーというものの存在に去年気づきました」
車があると便利は便利だが、車を使ってしまうとずぶ濡れになったり気づいたら獣道を歩いていたりといったハプニングは望めない。タクシーには気づかなかったことにして、電車・バス・徒歩のスタイルを貫いて欲しい。
気づいたら獣道
がんばった話大会 前半戦終了
以上8名のプレゼンが終わったところで、前半戦は終了した。
この後、当日予定の合わなかったライターから送られてきた「がんばった話」を朗読するコーナーに入る。がんばった話を送ってくれたライターは全部で7名。その朗読を僕が担当する。
朗読は住が担当します。
がんばった話大会 朗読編
住の朗読に合わせて
スライドショーが展開する
初めての海外、しかも一人 伊藤健史
初めての海外旅行が一人旅がこれ
・ライター平坂さんの取材同行でタイに行くことに。でも、海外に行ったことがない
・海外経験が豊富な平坂さんからは「スワナンプーブの空港で会いましょう」と現地集合を告げられた
・初めての海外、しかも一人。不安しかない旅で、なんとか平坂さんのペースに合わせてがんばった
伊藤「飛行機で隣に座った台湾人のタイ語教師のおっさんになぜか気に入られて、俺これから日本に帰るんだっつうのにタイ語の教科書を見ながら発音させられました」
過酷なエイ釣りにも挑戦
電車で漏らさなかったから大人だと思った 江ノ島茂道
朝帰ってきた時の江ノ島さん
・「定時で会社を出て朝までに戻れる地方都市の旅」という記事の取材
・高速バスのチケットを忘れてしまい予定のバスに乗れなかった
・別のバスを手配したが、そのバスが遅れ時間がなくなり最終的にトイレを我慢しながら電車に乗った
江ノ島「トイレに行くか、漏らすことを覚悟して電車に乗るか迷った結果、電車に乗ることにしました。結果、漏らさなかったです。大人だなと思いました」
トイレに行くか、それとも漏らすか。そんな低レベルの選択を迫られないのが大人だと思う。漏らさなかったから大人!とかじゃなくて!
ご飯を食べたくて少し泣いた時の写真(イメージだった)
せっかく調達したドリアンの皮を掃除のおばちゃんに捨てられた ネルソン水嶋
捨てられていたドリアンの皮
・「トロピカルフルーツを武器化する」という記事を書いた
・「南部フルーツフェスティバル」というイベントで捨てられていたドリアンの皮を拾った
・撮影日まで1週間あったので自宅のバスタブに保管したが掃除のおばちゃんが捨ててしまった
「なんとか後日に調達でき、無事に撮影までこぎつけられ、満足する写真が撮れました。一度全てがムダになったこの企画は、がんばった取材だったと思います」
ドリアンの皮をバスタブで保管している間、お風呂はどうするつもりだったのか? シャワーの間ドリアン臭いのは大変だし。おばちゃんが捨ててくれて、かえって良かったのではないだろうか。
バスタブに置いておいたら捨てられていた
病的ダイエットに打ち込んだ結果、産業医と面談した ヨシダプロ
3ヶ月で10kgヤセた「病的ダイエット」
・3ヶ月で10kgヤセた「病的ダイエット」に打ち込んだ
・ダイエットに打ち込むキッカケは、「人間ドックの結果があまりにもみじめだったから」
・ワカメを病的に食べる「ワカメダイエット」や、バナナを病的に食べる「バナナダイエット」、ショウガを病的に食べまくる「ショウガダイエット」など、あらゆるダイエット法に病的に打ち込んだ。
「そういえばあの時期、メンタルもおかしくなって、産業医と面談とかもした。糖分とかが足りなくなって、何かおかしくなったのかな? 何でもやりすぎはいけないようである」
ヨシダプロは太っている時の自分の腹を「ラフランスのようになっていた。この曲線美、嫌いではなかったが、世間的にはメタボという類のようだった。」と分析していた。ラフランスとか、ちょっといいものに喩えるメンタリティーだとダイエットに失敗しそうだが、ヨシダプロは見事に成功している。不思議だ。
「NAVERまとめ」のダイエット法まとめでも、最初にまとめられた
ドラムスティックをこけしにするのに3年かかった クリハラタカシ
3年の月日を費やしたドラムスティックこけし
・ドラムスティックに絵付けをしてそれをこけしに仕立て上げる企画を思い付いた
・構想から完成までに3年の月日を費やした
・「こけしの特徴であるカラダの横ラインをきれいに描く方法が思いつかなかった」から
・企画を思い付いてから3年後、子どものおもちゃがヒントになってこけしは完成した
・だが、仕上げにニスの透明スプレーをかけようとしたら間違えて黒スプレーをかけて、こけしが真っ黒になった
クリハラ「努力だけでは手に入らないアクシデントを自分の力にする瞬時の判断力をこれからの努力で手に入れて行きたいと思う次第だ。そういうところがダメなんだ。頑張ろうと思う」
3年間もドラムスティックをこけしにすることを考え続けたのも凄いし、できた瞬間にそれを台無しにしてしまったのも凄い。全体的に何かの罰みたいだ。
透明と黒スプレーの紛らわしさ
代わりにあなたの財布の中身をみせてくれる? と店主に怒られた 小堺丸子
神保町を10時間半にわたって歩き続けた小堺さん
・神保町にある古書店を1日でまわろうとした
・店主に「店には何冊くらい本があるのか」と質問をする、というミッションを自ら課した
・しかし、古書店の店主は怖い人が多く、「じゃあ代わりに、あなたの財布の中身みせてくれる?」と言ってきた店主もいた
・途中から「オススメのカレー屋」を聞くことにした結果、編集部からタイトルを「神保町の古書店を1日でまわれるか」から「神保町の古書店が薦めるカレー屋」に変更すると言われ、悲しかった
小堺「最後に、、、消臭力の「せっけんの香り」を愛用しています。これからもエステーを応援します」
大人になると他人から面と向かって怒られる機会が減るはずなのだが、取材をしているとたまに怒られる。「代わりにあなたの財布の中身みせて」などと回りくどく怒られることを想像すると、胃がキューっとなってしまう。明日は我が身、用心したい。
もう動きたくないし誰とも話したくない
まったくがんばりが伝わらない、弘法大師パターン 三土たつお
弘法大師の軌跡をマッピングしようとしたら膨大な作業時間が
・弘法大師が奇跡を起こしたすべての場所をまとめて地図にしようと思った
・始めてみると、奇跡が集まらなかったり、文献に載っている地名が古かったり、とにかく大変だった
・約20時間かけて登録した奇跡は412件
・出来上がった地図は、「図にしてしまうと『ふーん』くらいの感想しか出てこないのもつらいところです」という仕上がりに
三土「今でも記事を作っていると、『あ、これ弘法大師のパターンだ』と途中で気づくときがあります。すごく大変なのに結果が地味なやつです」
確かに、写真からまったく大変さが伝わってこないし結果も地味だ。僕にもそういう経験はたくさんある。そして、そういう記事は反応が薄いのも特徴だ。努力が全く報われない記事。これからそういう記事を「弘法大師パターン」と呼ぼう。
苦労したのに地味な結果に
朗読してウケると自分がウケたような気持ちになる
朗読のエントリーが終わり、がんばった話大会も終盤を迎える。残るライターは僕を含めて5名。
後半戦は僕のプレゼンからである。朗読で40分近く喉を使っているのに、だ。
喉を使ったハンデはあるが、何としても消臭力10年分を狙いたい。
疲れていないだろうか
休憩を挟まずに後半戦に突入したのだが、僕には1つ懸念があった。審査委員長の鹿毛さんが疲れてはいないだろうか。
鹿毛さんが疲れているっぽい
前半戦は一番前の席でプレゼンを聞いていたのに、気づいたら後ろの方に座っている。
大丈夫だろうか?
休載後マスクマンとして復活するがスルーされた 住正徳
14年間のがんばりをプレゼンする住
・2002年のデイリーポータルZオープン当初から今まで、全部で382本の記事を書いた
・連載5年目くらいから迷走し始めた
・「週刊すみましーん」というスタイルで記事を書いてみたり、3年ほど休載したり
・休載後、マスクマン・サントスジュニアとして復活したが全く注目されず辛かった
住「迷走と言われても仕方のない14年間だったとは思いますが、とにかく続けてきた! というがんばりを評価していただければ幸いです」
それは主に迷走の歴史であった
絶滅危惧種のアザラシを探す 地主恵亮
ハワイで絶滅危惧種のアザラシを探した地主さん
・絶滅危惧種のアザラシをハワイで探した
・ハワイ自体は楽しい場所だったが、いざアザラシを探すと顔つきが険しくなるほど大変だった
・路線バスで2時間半の道のり。さらに、約20キロ、4時間の道を徒歩。足元はサンダルで、携行した水は500mlのみ
・大変な思いをした結果、目的地にアザラシはいなかった。来た道を戻り、ホノルルの水族館に行くとそこには絶滅危惧種のアザラシが…。
地主「これだけ苦労した記事だったのですが、数字が悪かったです。数字が悪いと空気が悪くなる。そんな時、空気をかえてくれるのが消臭力。消臭力を使ったら楽しくワクワクする空気になりました」
抜けるようなハワイの青空に地主くんの険しい顔のアップ。戦争が終わったことを知らされていない兵士のようでもある。
アザラシを探し始めると険しい顔つきに
遠い温泉 北村ヂン
最寄り交通機関から徒歩2時間の温泉でがんばった北村さん
・ロープウェイの終点「さんちょう」という駅から、道なき道を歩いて2時間の場所にある温泉に行った
・冬は休館する旅館に冬直前の最終日に泊まった
・行きは天候にも恵まれ無事に到着できたが、一泊した翌日、辺りは白銀の世界に豹変していた
・雪に埋もれて帰り道が分からない。先に帰った人の足跡をたよりに帰ったが道に迷ってしまい、大変なことに。命からがら下山してきた
北村「がんばった、というより危うく命を落としそうになった取材です。ちょっと泣きましたが、カバンの中にバナナが入っていて命をつなぐことができました」
ヨシダプロはバナナでダイエットして、北村さんはバナナに命を救われて。そういえば林さんは陸別でバナナで釘を打とうとしていたし、デイリーポータルとバナナは縁が深い。
これはまた別の温泉でのスナップ
さかもと丼を食べまくった話 大北栄人
さかもと丼を食べまくった時の話をする大北さん
・下高井戸の「さかもとそば」に「さかもと丼」という独特などんぶりがあるが、実は各地に存在することを知った
・府中、調布市国領、大岡山、方南町、新高円寺、八幡山とすべてのさかもと丼を食べまくった
・最後に、さか本そばの総本山、下高井戸店に取材に行くと、そこには巨人帽をかぶったおじさんが
・おじさんに店主を出してくれと頼むと「俺が店主だ」と巨人帽
・一度は取材拒否されるが、粘ってなんとか写真を撮らせてもらった。
大北「取材拒否をされて焦りました。しかし、そこで諦めるわけにはいきません。がんばって食い下がりました。店のお母さんを懐柔して、なんとか許諾を得ることができました。がんばりました」
なぜ大北くんは巨人帽をかぶって来たのか、プレゼンを聞いてその謎が解けた。大北くんなりの店主リスペクトだったのだ。いや、違うか。
実はこの人が店主だった
折り合いの悪い実家に、特攻服を着て帰った話 安藤昌教
折り合いの悪い実家でメンタルをがんばった話をする安藤さん
・日本郵便とのタイアップ企画で、「年賀状を出しましょう」というテーマだった
・特攻服に年賀状の文面を刺繍して、それを着て実家に帰った
・でも、実家とはずっと折り合いが悪かったので気まずくてたまらなかった
・「どちらかと言うと、メンタルの部分でがんばった」企画だった
安藤「義理の兄に撮影をお願いしたことも気まずさに拍車をかけたと思います。それでも家族で20年ぶりの記念写真を撮れたことは良かったと思っています」
自ら気まずいシチュエーションを作り出しているとしか思えないが、安藤さんなりの折り合いのつけ方だっただろう。記念写真のぎこちなさがかなり気になるけど。
20年ぶりの家族写真
結果発表、がんばった大賞の栄冠は誰の手に?
これでライター全員のがんばりアピールは終わった。
審査委員長、鹿毛さんの採点はどうなっているのか!
20名分のプレゼンを振り返る鹿毛さん
協議の結果が決まったらしい。鹿毛さんが前方にやって来た。
果たして、優勝の栄冠は誰の手に!
結果を発表する鹿毛さん。誰ががんばったの?
鹿毛さん「それでは発表させていただきますが、最終的に5つまで絞ってみました」
5人のライターが最終選考に残ったらしい。
鹿毛さん「平坂さん、古賀さん、小堺さん、北村さん、安藤さんの5名です」
あっ、僕の名前がない。息子さんに「うちのトイレ臭いから」と言われてしまった古賀さんは残っている。70枚のスライドで挑んだ地主さんも落ちた。
鹿毛さん「この5名から誰にしようか悩んだんですが、がんばって決めるのはやめまして、あみだくじにさせていただきました」
がんばった話大会なのに、がんばって選考するのを諦めてあみだくじ!
鹿毛さん「あみだくじの結果、優勝は平坂さんに決定いたしました!」
がんばった話大会優勝は、
平坂さん「カスみたいな魚を捕まえるために消耗しきった話」
優勝は平坂さんに決定した!
盛り上がる会場。
「魚臭くなっても大丈夫!」
「部屋で魚腐らせても心配ないぞ!」
と声が上がった。
そして、鹿毛さんから平坂さんに消臭力の贈呈である。
消臭力の贈呈
10年分の消臭力に囲まれる平坂さん
こうして、エステープレゼンツ「がんばった話大会」は無事に閉会した。
がんばりを認められた平坂さんは、向こう10年、部屋の匂いに悩まされることはない。
がんばっている人を応援したい。そんなエステーの粋な計らいで、デイリーポータルZのライターたちは自分のがんばりを人に伝えることができた。それぞれの発表をみんなで笑いながら聞いている様子は、ちょっとしたセラピーのようでもあった。
そして、お気づきの方もいるだろう。サーモグラフィーカメラはどうなった? と。そう、会場にいた全員がその存在を忘れていたのだ。誰もサーモグラフィーカメラの映像に注目せず、判断の基準にならなかったのである。