ベーコンを作るために思い出を集める
思い出には2種類ある。いい思い出とそうじゃない思い出である。
いい思い出はしっかりとしまっておいて嫌なことがあったら取り出して眺めたらいいと思う。
いい思い出はしっかりとしまっておいて嫌なことがあったら取り出して眺めたらいいと思う。
いい思い出の例、ハイタッチでギネス取った。
問題はそうじゃない方の思い出だろう。
告知ラジオでも話したけれど、僕にもいくつか思い当たる節がある。前にKIRIMIちゃん.の誕生日イベントをやった時、用意した2万円のオリジナルケーキの領収書を精算し忘れて今でも持っていたりする。燃やしたい。
誰しも一つや二つ、そういう物があるんじゃないか。
告知ラジオでも話したけれど、僕にもいくつか思い当たる節がある。前にKIRIMIちゃん.の誕生日イベントをやった時、用意した2万円のオリジナルケーキの領収書を精算し忘れて今でも持っていたりする。燃やしたい。
誰しも一つや二つ、そういう物があるんじゃないか。
忘れたい思い出の例、割れたメガネ(あとでエピソードが出てきます)。
この企画は、そんな忘れてしまいたい思い出を持ち寄って燃やし、その熱と煙でベーコンをつくろうというものである。大きくいうと破壊(燃やす)と再生(ベーコン作る)、インドの神様がクッキングスクール開いた、みたいな話だ。
燃やしてしまいたい思い出の品を募集したところ、たくさんの応募をいただきました。ありがとうございました。全て読ませていただきました、泣きながら。
その中から、以下の条件にあてはまる人に連絡を取って、集まってもらうことにした。
・すでに自分の中で折り合いがついていそうな思い出
・事件性のない思い出
・ぜひ僕が見たいもの
最後は単純に興味である。これら燃やしたい思い出を持って6月某日、梅雨の晴れ間に集まってくれた人たちがこちら。
その中から、以下の条件にあてはまる人に連絡を取って、集まってもらうことにした。
・すでに自分の中で折り合いがついていそうな思い出
・事件性のない思い出
・ぜひ僕が見たいもの
最後は単純に興味である。これら燃やしたい思い出を持って6月某日、梅雨の晴れ間に集まってくれた人たちがこちら。
ただならぬワケあり感。
真ん中に置かれているのは燻製器である。これでベーコン焼く。
バックアップのアクロニスとのコラボ企画です
今回の企画はバックアップのアクロニスとのコラボ企画です。
パンドラの箱を開ける前に言っておかねばならないことがある。今回の企画はバックアップのアクロニスとのコラボ企画である。どうしてアクロニスが!とお思いだろう。説明しよう。
いまから思い出の品物を燃やしてベーコンを作るわけだけれど、やはりなんというか燃やしてしまうと灰になってしまうではないか。その前に、最後のバックアップを取りたくないか。
今回はアクロニスからバックアップの専門家に来てもらい、焼く前の思い出の品すべて、完璧にバックアップ取ってもらった。
しかし全員に話を聞いたあと、会場の誰もが「これはもうそのまま燃やした方がいいんではないのか」と思っていたのは内緒だ。
いまから思い出の品物を燃やしてベーコンを作るわけだけれど、やはりなんというか燃やしてしまうと灰になってしまうではないか。その前に、最後のバックアップを取りたくないか。
今回はアクロニスからバックアップの専門家に来てもらい、焼く前の思い出の品すべて、完璧にバックアップ取ってもらった。
しかし全員に話を聞いたあと、会場の誰もが「これはもうそのまま燃やした方がいいんではないのか」と思っていたのは内緒だ。
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思い出話、披露
ではさっそくお集まりいただいたみなさんの思い出話を聞いていきたい。
まずはこの方、ペンネーム「しゃも」さんから。自宅マンションの耐震ゴムの設計ミスが発覚して、現在絶賛係争中なのだとか。
今日はそのエビデンス資料を持ってきてくれた。
まずはこの方、ペンネーム「しゃも」さんから。自宅マンションの耐震ゴムの設計ミスが発覚して、現在絶賛係争中なのだとか。
今日はそのエビデンス資料を持ってきてくれた。
ザ・リアル。
いきなり燃やしていいのか迷うもの来た。
資料は正直ぼくらが見てもよくわからないではあるんだけれど、マズイっていうことだけはビンビンに伝わってくる。これから耐震工事が入ったりするんですか?と聞いたところ「いま争っているところだから、まだわからない」とのことだった。
焼きましょう、焼いてベーコンにしましょう。
こんな感じで、次々いきます。
資料は正直ぼくらが見てもよくわからないではあるんだけれど、マズイっていうことだけはビンビンに伝わってくる。これから耐震工事が入ったりするんですか?と聞いたところ「いま争っているところだから、まだわからない」とのことだった。
焼きましょう、焼いてベーコンにしましょう。
こんな感じで、次々いきます。
大量のスケッチブック。
ペンネーム「緑茶50ml」さん。イラストの仕事に就きたくて練習してきたのだけれど、どうもこれは実を結びそうにないぞ、と思い、決別したくて今日持ってきてくれた。ラフが描かれたスケッチブックの束である。ベーコン的にはいい燃料になりそうだ。ちなみに「緑茶50ml」さんは応募フォームに
「人の夢とかいて儚いと読むんですよね」
と書いてあった。いいこと言っているが、重すぎて使いみちに困る言い回しだ。
壊れたメガネを持って参加してくれたのはペンネーム「アイザワ」さん。
「人の夢とかいて儚いと読むんですよね」
と書いてあった。いいこと言っているが、重すぎて使いみちに困る言い回しだ。
壊れたメガネを持って参加してくれたのはペンネーム「アイザワ」さん。
最近壊れたというメガネを持って参加。
聞くと就職活動中なのだとか。
アイザワさんは現在就職活動中で、つい最近ものすごく入りたい会社の面接を受けたのだとか。でもその日にメガネが真っ二つになった。これは、、と思ってベーコンにするため持ってきてくれたという。なんだかすみません。うまくいっているといいですね。
思い出エピソードはまだまだ続きます。
思い出エピソードはまだまだ続きます。
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思い出エピソード、つづき
ペンネーム「ザキ」さんは別れた彼女との写真アルバムを持って参戦だ。
「彼女と別れて、5年くらいですかね。」
経験上、忘れたい思い出は5年では忘れられない。最低10年は必要である。
ザキさんは大丈夫だろうか。
ザキさんは大丈夫だろうか。
やはり絶句。
ギターが弾けるザキさんにはこの後、「ファーストキッス」という曲を弾き語りしてもらったのだけれど、本当に申し訳なかったと今写真を見ていてそう思う。
ザキさん、ごめん。
つづいてはペンネーム「ktr」さんの忘れたい思い出の品を見せてもらった。
すごい量だ。
なんですか、それは。
「文通していた手紙です。」
学生時代に文通をしていたというKtrさん。最初のうちは楽しくてまめに書いていたのだけれど、飽きてくるとぱったり自分からは書かなくなったのだとか。それでも相手からはどんどん手紙が来る。なぜなら、ステイタスはまだ文通中だから。
「たまっていく手紙の山が視界に入ると罪悪感でやられそうなので」と、まとめて持ってきてくれた。
わかりました、燃やしましょう。
それにしてもいいエピソード揃いである。一人では思いきれないけれど、みんなでならば勢いで燃やせる。そんな感じだろうか。やってよかったと思う。
しかしこのあと、ペンネーム「血の池」さんが持ってきた一枚の写真に、会場は凍りついた。
「たまっていく手紙の山が視界に入ると罪悪感でやられそうなので」と、まとめて持ってきてくれた。
わかりました、燃やしましょう。
それにしてもいいエピソード揃いである。一人では思いきれないけれど、みんなでならば勢いで燃やせる。そんな感じだろうか。やってよかったと思う。
しかしこのあと、ペンネーム「血の池」さんが持ってきた一枚の写真に、会場は凍りついた。
安心してください、心霊写真ではないです。
血の池さんには当時好きな人がいた。写真はその人と肩を組んで仲良く写っている思い出の一枚である。
しかしこのあと血の池さんが
「私が彼とのことを相談していた親友がいたんですが」
ここまで言った時にみんなすべてを悟った。
しかしこのあと血の池さんが
「私が彼とのことを相談していた親友がいたんですが」
ここまで言った時にみんなすべてを悟った。
そうだよね、それってその親友と彼とが付き合ってたパターンだよね。
涙で濡れていなければ、写真はよく燃えそうである。
燃やす前にバックアップ
いかがだっただろうか。
紙面の関係上、本当にざっくりとしか紹介できなかったが、立ち上がると貧血起こすくらい濃いエピソードを持った品々ばかりだった。よく今まで手元に置いておいたな、と思うほど。
それでは燃やす前にバックアップを取ってもらおう。
紙面の関係上、本当にざっくりとしか紹介できなかったが、立ち上がると貧血起こすくらい濃いエピソードを持った品々ばかりだった。よく今まで手元に置いておいたな、と思うほど。
それでは燃やす前にバックアップを取ってもらおう。
アクロニスからはバク柄のバックアップソフトを提供してもらいました。かわいい。
紙ものはスキャン。できない物は写真を撮ってバックアップします。
みんながバックアップを取っている間に、僕が仕込んでおいたベーコンの話をさせてください。
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ベーコンつくりは1週間かかる
最初に言っておくが、自宅でベーコンをつくろうとすると、すくなくとも1週間はかかる。
だから水曜くらいに「そういえば週末友達が来るからな」、とか思って作り始めても残念ながらそれでは間に合わないのだ(買え、出来たのを買え)。
最初から厳しいことを言うようだが、ベーコンを作るということは、そのくらいの心構えが必要なのだ。思い出の重さに負けないほどの面倒くささである。
だから水曜くらいに「そういえば週末友達が来るからな」、とか思って作り始めても残念ながらそれでは間に合わないのだ(買え、出来たのを買え)。
最初から厳しいことを言うようだが、ベーコンを作るということは、そのくらいの心構えが必要なのだ。思い出の重さに負けないほどの面倒くささである。
自家製ベーコンのつくり方
ベーコンは豚のバラ肉で作る。
バラ肉のかたまりを買ってきたらよく洗ってから皮の方にフォークで穴をあける。味がしみ込みやすくするためだと思う。
バラ肉のかたまりを買ってきたらよく洗ってから皮の方にフォークで穴をあける。味がしみ込みやすくするためだと思う。
皮の方にフォークで穴をあけます。
塩を塗って寝かせる
穴をあけたら塩とかスパイスとかをすりこむ。先に砂糖をすりこむ、といったレシピもあったのでいろいろ試してみるといいと思う。そのへんは自由である。
次に肉の重さの2%くらいの量の塩を塗りこみます。このとき好きなハーブを加えてもよい。
思う存分塩を塗ったらラップして冷蔵庫へ。ここから長い1週間がはじまる。
ラップに包んでジップロックに入れ、冷蔵庫で1週間ほど寝かす。
この1週間はほとんどやることはないのだけれど、たまに出してひっくり返したりして様子をうかがっておくとよい。
忘れた頃に塩抜きをする
1週間くらい置いておくと肉の熟成と反比例して、ベーコンを作りたい気持ちが冷めてくる。燻製に、したい時分に肉はなし、である。このあたりでもう一度クックパッドとか見て気持ちを盛り上げておこう。
1週間寝かせた塩漬け肉はしょっぱすぎるので流水で塩抜きする。
1週間寝かせた塩漬け肉はしょっぱすぎるので流水で塩抜きする。
水を細く流しながら3時間くらい放置します。
塩抜きの3時間というのも適当である。
抜けたかな、と思ったら端っこを少し切って焼いて食べてみよう。それでしょっぱかったらもう少し、といった具合に、様子を見ながら塩抜きしていく。
抜けたかな、と思ったら端っこを少し切って焼いて食べてみよう。それでしょっぱかったらもう少し、といった具合に、様子を見ながら塩抜きしていく。
念のための下茹で
塩抜きが終わったら普通はこのまま乾燥させて燻製にするらしいのだけれど、今回は人に振る舞うことを考えて安全のために下茹ですることにした。あまり火を通しすぎると硬くなってしまうので、70度くらいのお湯で1時間ほどじっくりと茹でる。
この時点できっと美味い。
乾燥、そして燻製へ
このあと冷蔵庫か干し網で乾燥させたらいよいよ燻製の作業にはいる。
ベーコンって豚肉を燻製にしたものでしょう?と思っていなかったか。僕は思っていた。違うのだ、燻製っていうのは最後の最後であって、その前に下準備で1週間かかっているのだ。冗談で手を出していい趣味ではないことがわかった。
燻製は70度くらいの温度で温めながら燻すといいらしい(これを温燻という)。
ベーコンって豚肉を燻製にしたものでしょう?と思っていなかったか。僕は思っていた。違うのだ、燻製っていうのは最後の最後であって、その前に下準備で1週間かかっているのだ。冗談で手を出していい趣味ではないことがわかった。
燻製は70度くらいの温度で温めながら燻すといいらしい(これを温燻という)。
だいたい2時間くらい燻製にします。
今回の「思い出ベーコン」では、思い出の品物を燃やした煙で燻製にするわけだけれど、下準備として燻製用のウッドチップで数時間いぶしておいた。どんな思いでが集まるかわからなかったので、最後に思い出の煙を浴びせたら完成、という手順にするためである。
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燃やす前にお祓いを
ここで思い出会場に戻る。バックアップが終わった思い出の品たちをこれから燃やすわけだけれど、その前にお祓いしてもらうことにした。
ちゃんとした神職の方を呼びました。
先に披露したように、どれもかなり思い入れの強い品々である。そのまま燃やすときっと悪いことが起きるだろう、僕に。
ということで、思い出の品の「思い出」の部分をお祓いで抜いてもらった。
ということで、思い出の品の「思い出」の部分をお祓いで抜いてもらった。
思った以上に本格的なお祓いでした。
神職の方には打ち合わせの際、可能ならば抜いた思い出をウッドチップに閉じ込められないか、と聞いてみたのだけれど、それは無理とのことだった。そういうものではない、と。
ただ、物についた「魂」を抜くことは可能なのだとか。お札とか人形とかをお焚き上げする前にするのと同じだ。これで安心である。
安心して別れた彼女との写真も燃やせる。
ただ、物についた「魂」を抜くことは可能なのだとか。お札とか人形とかをお焚き上げする前にするのと同じだ。これで安心である。
安心して別れた彼女との写真も燃やせる。
おりゃー。
メラメラメラ…。
この思い出を燃やした煙でベーコンを燻します。
思い出が煙となって燻製器を満たす。
この涙は煙のせいだろうか。
きっと煙のせい。
しばらくして、思いっきり美味しそうなベーコンが完成した。
てっかてかです。
ほとんど下ごしらえで完成していたとはいえ、最後に思い出の品を燃やした煙で炙ったことで、ベーコンに味がしみ込んだのは確かだと思う。みんなの思い出が、ベーコンという形で再生されたのだ。
思い出ベーコンの写真を撮る参加者。これは未練ではない、そう信じたい。
完成したベーコンはこの後みんなで試食した。参加者からは
「美味しいんだけど、ふとした瞬間に何かを思い出す」
「同窓会に行けそうな気がする」
など、前向きととらえてさしつかえない感想をいただきました。ありがとうございました。
「美味しいんだけど、ふとした瞬間に何かを思い出す」
「同窓会に行けそうな気がする」
など、前向きととらえてさしつかえない感想をいただきました。ありがとうございました。
じっさい美味しかったです。
ピザに乗せても美味しかった。
思い出で焼いたベーコンの美味しさよ
みんなの忘れたい思い出の品物を持ち寄って焼いて作ったベーコンは美味しかった。
こんなに美味しくできたということは、思い出たちが「もう忘れていいんだよ」と言っていたのかもしれない、と根拠のないポジティブ解釈を放り込んで今回の試みの締めとさせていただきたいと思います。
みなさん、ありがとうございました。
こんなに美味しくできたということは、思い出たちが「もう忘れていいんだよ」と言っていたのかもしれない、と根拠のないポジティブ解釈を放り込んで今回の試みの締めとさせていただきたいと思います。
みなさん、ありがとうございました。
試食する時には全員が笑顔でした。それがなにより。