溶けない夏も、今年で終わりだ
今年は本気でベイクを溶かしにいきたいと思う。そのために4人の食の鉄人たちにそれぞれの得意技でベイクを調理してもらった。
覚悟しろよ、ベイク。今年で決着をつけてやる!
油で揚げる
揚げ物の聖地、善行ビーバーにベイクを持って行った。
小見出し
しかも5年前よりも明らかにレパートリーが増えている。なんだ揚げチョコバナナって。
なにはともあれここに来たらまず食べてほしいのがこちら、揚げアイスである。
店長の言うとおり、揚げたてあつあつをほおばると中のアイスが冷たいまま口の中に飛び込んでくる。
たまらん。
「他にもいくつかためしたんだけど、これじゃなきゃだめなんですよ」と。
確かに揚げたモナカのサクサクとアイスのふわとろ、チョコのパリパリが絶妙に混ざり合って意識が遠のく。
店長、これは美味いよ。
ベイクを揚げてください
これ、油で揚げてみてもらえませんか!
「揚げることはできるけど、ようはそこに意味があるかどうかなんだよね。」
揚げているあいだ「いまの油の温度は何度ですか」と聞いたところ
「…高温!」と言っていた。揚げ時間や温度はすべて感覚、店長がいいと思った時が上げ時なのである。
衣をつける作業から合わせて2分ほどでベイクが揚がってきた。
揚げベイクの美味さよ
これがうまいからまいる。
揚げベイク、表面のカリッと感は感じられなくなってしまったが、代わりに衣がサクサクを演出。中がとろっとしていて噛むと瞬間に溶けて無くなっていく。
でもこれも賞味期限2分くらいだろうか。揚げたてじゃないとわざわざ揚げる意味がないと思う。そういう意味ではまさに善行ビーバー向けのメニューではないだろうか。
あげチョコバナナにも挑戦
ビーバーでは材料のバナナはストックしていないのだ。
「管理できないですから。食べたい人には材料を持ってきてもらっています。」
と。
ストイックというか自由すぎるというか、さすがはビーバーというしかない運営方針だ。
揚げチョコバナナはお店の前でつぎつぎ揚げ物を摂取していた高校のバレー部のみなさんにも食べてもらって感想を聞いた。
あと店長はネタ帳(次に何を揚げようか)に「森永ベイク」と書き込んでいたので、もしかしたらいつか揚げベイクが定番化する日が来るかもしれませんよ。
善行ビーバー
神奈川県藤沢市善行1-26
電話:0466-82-1010
直火でじっくり焼く
「日本のバーベキューってさ、外で薄い肉と焦げた野菜を食べるイメージじゃない。本場アメリカはそうじゃないの。」
そのためにスパイスをしたり漬け込んだり、長時間スモークしたりして、ワイルドな肉を柔らかく、美味しく食べられるようにしたのが始まりなのだ。
裏で、と言わなかったのはウッチーさん、メディアに出慣れていて写真写りがよすぎるからだ。
「これはオガ炭って言って燃焼効率がいいんだ。バーベキューの敵はなんといっても炎だからね。」
ウッチーさんいわく、炭は一度炎が落ち着いて、表面が白くなったあたりからが使い時なのだとか。
温度の測り方は「ミシシッピ」で
一台のバーベキューコンロで3種類の温度を制御する、これぞバーベキューの極意、スリー・ゾーン・ファイヤーである。
いよいよベイクを焼いてもらいます
ベイクを置いてふたをすると、1分くらいで甘いにおいが立ち込めてきた。その後すぐに焦げた香ばしいにおいも混じる。
う、ウッチーさん、これ焦げてませんかね。
それではさっそくウッチーさんにワイルドに食べてもらおう。
僕も食べさせてもらったが、低温、中温で焼いたベイクは単に中だけ柔らかくなったかな、という感じだった。それに対し、高温で焼いたベイクは表面のカリッとした食感にとろっとした中身、そして焦げの苦みがスパイスとなって別物のうまさなのだ。
「タイミングと裏返しでもう少し極められるんじゃないかな」
ウッチーさんが凝りだした。
トライアンドエラーの結果、焦げ付きを押さえるためクッキングペーパーを敷くことにした。これが後にすばらしい効果を発揮する。
とウッチーさん。
味はどうですかね。
これは確かに別格である。表面がカリッと絶妙に焦げていて、甘さの中に苦みをプラスしている。遠赤外線の効果で柔らかくなっている中心部との食感の違いも面白い。
大掛かりすぎて試すのが大変ではあるけれど、いつか外でバーベキューする機会があったら、ぜひクッキングシートを敷いてベイクを焼いてみてください。
塩釜焼きにする
どうですかね、さすがにダメですかね。
塩と卵白とで作った釜の中にはベイク。そのまま高温のオーブンで蒸し焼きにしてもらった。
さらにもう一品、こちらは馬場さんオリジナルの料理「ベイクのカレー風味豚バラ肉の塩釜焼き」。ベイクの、以外はすんなり頭に入ってくる。
ベイクを直接塩釜焼きにするとしょっぱくなってしまうので豚肉で巻いてみたのだとか。その工夫、思いつくのがプロですな。なんでもメキシコの方に同じようにカカオのソースで肉を食べる料理があるのだという。
塩釜を割るとベイクが出てくる違和感たるや。料理というより化石の発掘みたいな面白さがある。そしてベイク、溶けていない。
「食べてもらうとわかるけど、塩釜焼きはただしょっぱいですよ。」と馬場さん。
しょっぱいとはいえもともとチョコである。丁寧に塩を取り除けばさほどでもないのではないか。
そう思い一口で食べてみた。
塩釜焼きならではのしょっぱさ
ほぼチョコの甘さを感じさせないくらいにしょっぱい。ベイクは溶けていないが、塩釜焼きにしたことで隅々にまで塩がしみこんだようだ。
豚肉に包んだあとに塩釜焼きにしてもらったものはどうだろう。
ふかふかの豚肉を噛むと中でベイクがほろりと崩れて料理と一体化する。不思議な後味。
これ、今回一番の衝撃だった。うまい。豚肉の油が塩をちょうどよく取り込み、チョコの甘さとカレーの風味が後に残る。しょっぱいことはしょっぱいが、お酒を飲みたくなるくらいの絶妙な味の濃さだ。
最後にベイクの燻製をいただきます。
これ、ちょっとまて
通は塩で酒を飲む、とか聞いたことがあるけれど、ベイクで飲むってさらに上を行っているのではないだろうか。通中の通である。
ケーキにする
食の鉄人、4番目はフランス菓子のパティシエの登場である。
お菓子の専門家にお菓子を持って行くのだ。いいんだろうか。おとといきやがれ、って追い返されないか。
今回ベイクを使ったお菓子作りをお願いしたのはCAFE PiPiPi。ぼくの知る限りこの世で最も美味しいお菓子を作るカフェである。
バーベキューの直火でも溶けなかったベイクだけれど、素材として温めながらバターと一緒に砕いてしまうとさすがに形がなくなった。要するに口の中で溶けるのと同じ仕組なんだと思う。
それでもメレンゲと混ぜた段階ではまだベイクの「つぶ」が残っていたのだとか。ケーキになってもベイクは主張するのか。
あゆこさんは学校でパティシエの勉強をしたあと製菓衛生士という資格をとってお菓子職人になった。このCAFE PiPiPiをはじめたのは5年ほど前だが、パティシエ歴は言えないくらい長い(女性への配慮)。
その正確な分量の中にどうやってベイクを忍び込ませたのだろう。
「今回は一般的なガトーショコラの分量で、チョコをベイクに置き換えていますね。この1台でベイク4袋分くらい使っています。」
ほどなくして登場したベイクケーキに息をのんだ。
ベイク、跡形もありません
跡形もない。
溶け残ったベイクが「鬼まんじゅう」みたいに突き出ているイメージだったのだけれど、見事にケーキに馴染んでしまった。やはり崩して焼いたのがよかったのか。
ベイク入りガトーショコラは、盛りつけてもらうとさらにおしゃれ度が増した。
まさかここまで化けるとは思わなかった。完全に他力本願だけれど、いい素材といい職人に恵まれたとに感謝しています。
さっそくお店に来ていたお客さんに食べてもらった。
この感想、ベイクとのコラボ的に大丈夫だろうか。ここは僕が食べて最高にベイク感あるね!って言って取材を終えたい。
ベイク感はない、だけど美味しい
ベイク感はない、ただ、ものすごく美味しい。遺伝子レベルで体が美味いと言っている。いわゆるガトーショコラなんだけど、甘さと苦みのバランスがちょうどいいのだ。
食感もしっとり、ざらつきもなく、はっきりいってベイクは影も形もなくなってしまったけれど、ケーキになってもここまで美味しく存在を主張してくるベイクも敵ながらあっぱれである。
神奈川県茅ヶ崎市東海岸北2-14-38
電話:0467-86-0377
溶けたけど美味しかったです
でも今回の勝負はこれ、僕の勝ちってことでいいですよね。
ぼくらが生きてる環境では
溶けないことがわかりました。