特集 2014年10月31日

名古屋は「またぎがち」なのか・「名古屋根」を鑑賞する

「名古屋根」とはこういやつのこと
「名古屋根」とはこういやつのこと
先日ひさしぶりに名古屋に行った。その際見て回ったのが「名古屋根」だ。

以前から気になっていたこの「名古屋根」。今回改めてじっくり鑑賞してみた結果、「名古屋根」の行き着いた先がアレだったのか!と気がついたので、それをお知らせしたい。
もっぱら工場とか団地とかジャンクションを愛でています。著書に「工場萌え」「団地の見究」「ジャンクション」など。(動画インタビュー

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正式名称はわかりません

名古屋根、名古屋根と連発したが、名古屋根とは何か。それは、ビルの出入口から歩道をまたいで伸びるテントのことだ。
こういうやつ。ホテルに多い。
こういうやつ。ホテルに多い。
正面から。ちなみにこれは今回泊まったホテル。温泉がついててよかったです。
正面から。ちなみにこれは今回泊まったホテル。温泉がついててよかったです。
なんのことかわかるだろうか。こういうもののこと、としか言いようがなく、これ以上の説明を迫られても困っちゃう。アメリカのテレビドラマなどで、リムジンから降りてこの下を歩くシーンがよくあるあれ、と言えばよいか。黒人の大男がドアマンとして立ってるのとセットで。

ホテルによく付いていることから、おそらく敷地に充分な車寄せを作ることができない場合の雨避け対策だと推察する。正式名称があるはずだが、よく分からない(ご存じの方がいらっしゃったらご一報ください)。

なぜ今回ことさら気になったのかというと、雨だったから。名古屋根の本領発揮である。
とはいえ、びみょうにみんな遠慮しちゃって外れたところに車停めちゃうんだよね。あたらせっかくの名古屋根がもったいない。
とはいえ、びみょうにみんな遠慮しちゃって外れたところに車停めちゃうんだよね。あたらせっかくの名古屋根がもったいない。

ホテルは当然として

で、この名古屋根、以前から名古屋ではやたら見かけるなあと気になっていた。名古屋に多いので「名古屋根」という。というかいまぼくがそう名付けた。

ほんとに多いんですよ、名古屋。
こちらもホテルの名古屋根。
こちらもホテルの名古屋根。
こちらは冒頭のもの。時雨に紅が映えますな。
こちらは冒頭のもの。時雨に紅が映えますな。
この安心感。まさにおもてなし。
この安心感。まさにおもてなし。
だんだん名古屋根がいとおしくなってきた。
だんだん名古屋根がいとおしくなってきた。
と、まあホテルにあるのは当たり前なんだけど、名古屋の場合は、ホテルじゃない業態の店先にやたらあるのだ。
魚がウリの居酒屋に名古屋根。
魚がウリの居酒屋に名古屋根。
洋食屋にも名古屋根。
洋食屋にも名古屋根。
ラーメン屋にも。
ラーメン屋にも。
今回歩いたのは伏見駅周辺から栄まで。後述するような「名古屋根モドキ」も含めると、このエリアはやたら歩道にテントがまたいでいる。少なくとも東京近辺でこんなに歩道まで出っ張っているテントがたくさんある場所はない。

「いや、あるよどこにでも」とおっしゃる向きもあると思う。いや、あれは違うんですよ。
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「アーケード」はちがうんですよ

アレとはなんのことかというと、アーケードだ。
これは「名古屋根」ではない。アーケードだ。
これは「名古屋根」ではない。アーケードだ。
なので、これも名古屋根ではない。名古屋根モドキだ。
なので、これも名古屋根ではない。名古屋根モドキだ。
やはり黒人のドアマンが似合うかどうかで判断すればよいだろうか。

つまり、出入口の幅だけ屋根がかかっている状態が名古屋根であり、ビルの幅いっぱいに屋根かけちゃうのはちがう。本来アーケードに大男ガードマンは似合わない。それは川崎の銀柳街だ。
こういうことです。稚拙な絵ですまん。
こういうことです。稚拙な絵ですまん。
なのでこれは名古屋根に認定。ただ、なんか車道側に像があってアプローチ感が弱いのであまりぐっとこない。
なのでこれは名古屋根に認定。ただ、なんか車道側に像があってアプローチ感が弱いのであまりぐっとこない。
これはなー、確かに幅いっぱいじゃないんだけどなー、アーケード感あるんだよなー。
これはなー、確かに幅いっぱいじゃないんだけどなー、アーケード感あるんだよなー。
逆にこれはビルの幅いっぱいだが、ビル自体が細いので名古屋根感ある。エレベーターそこにもってくるか!ってのもうれしい驚きだし。きらいじゃない。困った。
逆にこれはビルの幅いっぱいだが、ビル自体が細いので名古屋根感ある。エレベーターそこにもってくるか!ってのもうれしい驚きだし。きらいじゃない。困った。
これも街路樹があってアプローチ感が低いが、横から見るのと正面からとで印象が違ってなかなかいい名古屋根だ。
これも街路樹があってアプローチ感が低いが、横から見るのと正面からとで印象が違ってなかなかいい名古屋根だ。
車道からのゲート部をふさいじゃって、アプローチ感ゼロ。形態は条件を満たしているが、こうなるとこれは名古屋根と言っていいかどうか迷う作品。
車道からのゲート部をふさいじゃって、アプローチ感ゼロ。形態は条件を満たしているが、こうなるとこれは名古屋根と言っていいかどうか迷う作品。
凝ったテント造形がすてきだが、これもいまひとつアプローチ感に欠ける。ただ、ご覧のように雨よけとしてちゃんと活用されていた。
凝ったテント造形がすてきだが、これもいまひとつアプローチ感に欠ける。ただ、ご覧のように雨よけとしてちゃんと活用されていた。
まあ、勝手に定義して勝手に名前付けて「それは違う」「これはいい」なんて言って、だからどうした、って話なんですが。

でも、このなんというか「アプローチ感」が重要だという感覚は分かっていただけたのではないかと思う。1000人にひとりぐらいには通じたはずだ。

ぜんぜん関係ないけど、すごいマンション

みなさん「ほんとに名古屋に多いのか」「多いとしたらなぜなのか」が気になっていると思うが、どちらに対してもちゃんとした答えは出せない。すみません。

でも名古屋の伏見・栄あたり行ったらぜったい「多いなあ」って思うはず。

で、ぜんぜん関係ないんだけど、せっかく名古屋行ったので、名古屋根以外で気になったものも見せてしまおう。
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中が見える立体駐車場!
中が見える立体駐車場
おそらくここだけじゃなくて、全国各地にあるんだろうけど、ぼくは初めて見た。
おそらくここだけじゃなくて、全国各地にあるんだろうけど、ぼくは初めて見た。
あとこのマンションの形すごい!って思った。
あとこのマンションの形すごい!って思った。
反対側から見るとこんな。
反対側から見るとこんな。
通り沿いのビルがみんな同じように斜めなので、前面道路が狭く、いわゆる建築基準法の「道路斜線制限」ぎりぎりまで建てた結果の造形だ。「雪崩ビル」(吉村靖孝さん命名。『超合法建築図鑑』っていうすごくおもしろい本で解説されているので、こういうの興味ある方はぜひ!)だ。
通り沿いのビルがみんな同じように斜めなので、前面道路が狭く、いわゆる建築基準法の「道路斜線制限」ぎりぎりまで建てた結果の造形だ。「雪崩ビル」(吉村靖孝さん命名。『超合法建築図鑑』っていうすごくおもしろい本で解説されているので、こういうの興味ある方はぜひ!)だ。

名古屋根はタダではない

いきなりマンションのかたちと建築基準法の話をしてしまったが、実はこれ名古屋根にも通じる話なのだ。

通常、公道たる歩道に屋根を架ける際には、管轄するところ(市など)に届け出をして、専有使用料を払わなくてはならない。
だから自分のビルの敷地境界線までしか庇が出っ張らないのがふつう。
だから自分のビルの敷地境界線までしか庇が出っ張らないのがふつう。
なので、名古屋根を架けている店舗は、それだけのコストを支払っているのだ。そこまでして歩道をまたぐその心意気や良し。
使用料削減のためか、なんとも煮え切らないでっぱり。屋根と言うより看板ですね。でもこれ、きらいじゃない。
使用料削減のためか、なんとも煮え切らないでっぱり。屋根と言うより看板ですね。でもこれ、きらいじゃない。
そう思って見ると、名古屋ってやたらと公道またぐのが好きみたいなのだ。
たとえばこれ。
たとえばこれ。
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このエリア、すごくゲートが多い。以前伊藤さんが商店街のゲートを見て回っていた。これらのものにはあれほどの素っ頓狂さはなく、いたって堅実なゲートたちだが、これほど頻繁に建てられているのはめずらしい。
首都圏で喩えると、そこらじゅう横浜中華街、って感じ。
首都圏で喩えると、そこらじゅう横浜中華街、って感じ。
前ページ最期のこれなどは「長者町ゑびす祭り」の際、これくぐれるように山車側に細工がしてあるそうだ。そこまでして、ゲート。
前ページ最期のこれなどは「長者町ゑびす祭り」の際、これくぐれるように山車側に細工がしてあるそうだ。そこまでして、ゲート。
いわばそこらじゅう商店街の中、通りごとに競って建てている雰囲気。
いわばそこらじゅう商店街の中、通りごとに競って建てている雰囲気。
こちらはプリンセス!(調べたら名前の由来に諸説あり。ホテルの名前からとって通称としたというものが有力か)
こちらはプリンセス!(調べたら名前の由来に諸説あり。ホテルの名前からとって通称としたというものが有力か)
なんでこんなにあるんだろう、と思っていたら、通りに興味深い碑が。
なにやらゲートの絵と写真が。
なにやらゲートの絵と写真が。
凱旋門があったそうです!もしかしてこれが発祥か?
凱旋門があったそうです!もしかしてこれが発祥か?
ともあれ、これらゲートといい名古屋根といい、歩道、車道を問わず名古屋は「またぐのが好き」ということになるだろう。
長島町通を見ると、巨大な球体が道路をまたいでいるように見えるし!これ初めて見た時ぎょっとした。(科学館の建物です)
長島町通を見ると、巨大な球体が道路をまたいでいるように見えるし!これ初めて見た時ぎょっとした。(科学館の建物です)
と、まあ明確な理由は分からないまま、とにかく「名古屋、またぎがち。それが結論」と思いながら東京へ戻るため、名古屋駅へ向かったところ、アレが見えて膝を打った。そうか!これだ!と。
そうだった。「歩道をまたぐ」といえばこの方ではないか。(ARではない)
そうだった。「歩道をまたぐ」といえばこの方ではないか。(ARではない
凱旋門に始まり(ほんとか)、ナナちゃんにまで引き継がれる名古屋の「道をまたぐ文化」というわけだ。

記事の終わりにちゃんとオチがついたかっこうだ。これ、実際ほんとに帰り際に気がついてちょっと感動した。

ちゃんと調べます

とりあえず今回は「多いよね」って感じのてきとうな記事でしたが、今後なぜ多いのか、ほんとうに多いのか、についてちゃんと調べようと思う。
そもそもナナちゃんがいる名鉄百貨店の歩道自体が充実したアーケードだし
そもそもナナちゃんがいる名鉄百貨店の歩道自体が充実したアーケードだし

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