まずは巣鴨 地蔵通り商店街にやってきた。夕方だがとげ抜き地蔵まえの広場には数人のお年寄りがいる。何人かにインタビューを断られたのち、ひとりの男性にお話を伺うことができた。
お酒・タバコ・宗教
−−好きな食べ物は何ですか
ないよ。酒だけ。うん、毎日飲んでる。昨日は田町でホームレスと飲んでて、日本酒一升を4人で飲んだね。おれはチョンガーだからさ、おかあちゃんも死んじゃって、外食専門。
お酒は小学校4年から飲んでるよ。家がもともと麻布で六本木に歩兵三連隊があって、そこに働きに行っていたんだ。そして兵隊さんに酒とタバコを教えられて。タバコは軍隊の「ほまれ」ってやつ。最初はむせて、でもそれからやみつきで。
6月に東京都美術館で写真展をやってるんだよ。新美術協会というのに入ってて。カメラはおかあちゃん死んでから始めたんだ。ひまでやることがないから。
かばんからアルバムを取り出して写真を見せてくれた。そこには八代亜紀や○○○○とのツーショット写真が。
○○○○は二十歳ぐらいのころからの付き合いだ。でも嫌いだよ。去年結婚しただろう。結婚するって連絡くれてもいいのにさ。三田の駅で写真展やってたんだよ。俺が撮った彼女の写真を並べて。帰ったら結婚するってテレビで言っててさ。すぐに戻って写真ひっぱがしたんだ。
−−どうやって○○○○さんと知り合うんですか?
それは宗教だよ。(ここから先、書くとめんどくさそうな話が続きますので僕の相槌だけ書きます)
−−へえ、そうなんですか。
−−あ!だからなんだ。
−−そういう仕組みになってるんですね。
サバイバルナイフで餅を切る
いまは芝浦に住んでるんだ。空襲で焼けちゃったから。
−−戦争にはいかれたんですか。
特攻隊に志願したんだ。でも終戦の20日前だったんで飛行機がなかったんだ。軍隊はいっても年中ビンタばかりで、ビンタもらいにいったようなものだ。
東京大空襲ってのがあって、うちのほうは3月8日だったんだ。え、疎開?おれ、田舎ないから疎開できないんだよ。江戸っ子なんで。両親は青山。
アメリカの飛行機は焼夷弾を落とす前にドラム缶でガソリンまくんだ。よく燃えるように。ひどいことしたんだよ。だからいまだにアメリカが嫌いで。アメリカ人見るとぶっころしたくなる。
戦争終わってからアメリカ兵を丸太でぶったたいたことがある。黒人兵といっしょにね。白人の兵隊が日本の女の子をおそってたんだ。それを見た黒人兵が丸太もってきて、いっしょにやろうって。あいつも相当差別されてたんだろうね。そのとき取り上げたサバイバルナイフは今でも持ってるよ。それで餅を切ったら刃が割れちゃった。
−−え、餅が割れたんですか?
違う違う。刃が欠けたんだ。
−−サバイバルナイフでお餅を切ったんですか?
(答えずに)ヨーロッパには行くんだけど、アメリカだけには行きたくないね。同級生とかみんなやられた悔しさがあるから。いまのイラクも無差別にやってるんだろう。なのに小泉さんは自衛隊を出すなんて言って。戦争を知らないんだよ。
話はどんどん進みます
来月から秋の交通安全週間が始まるんで、それで田町駅でキャンペーンやるんだ。だから三田警察にはよく行くんだよ。このまえ田町駅でちょっといいなって思う女の子に声かけたら私服に着替えた婦人警官でさ。「逮捕するよ」って言われたんで、「二人で留置場に入るんならいいよ」って答えたんだ。ははは。
かあちゃんは田町の駅前で交通事故で死んだんだ。横断歩道わたってたのにバイクにはねられて。それで警察によく行くようになって、交通安全の世話役みたいなことをしてるんだ。
今日もこれからどこかで飲んで帰るよ。
−−ありがとうございました。
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