5、6年前から、都内に増えた、アルファベットのカラフルな落書き。それを見て「何だコレ?」と思っていたら、ヒップホップが好きな知人が、
「これは、グラフィティといってね、ヒップホップ文化のひとつなんだよ」
と教えてくれた。
「へー」
「ヒップホップというのは、1970年代にニューヨークのブロンクスで生まれたストリートカルチャーなわけだけど……ダンス、ラップミュージック、DJ、グラフィティアート、この4つの要素で出来ているんだ」
「へえ、音楽だけじゃなくって、4つでワンセットなのか。でも、人んちの塀に文字や絵を書くのは迷惑じゃない?」
「これは芸術なんだ、命がけでやっているんだよ」
「……でも、私、日本人だから、英語で書いても、何て書いてあるか、わからないし。分からないメッセージを書くのって、意味なくない? それに『分かってる人同士』にしか分からないものって、芸術としてだめなんじゃない?」
「そんなことはないし、そういう問題じゃない」
……ケンカになりそうになったので、話すのをやめた。
その後、池袋で、この「黒猫」を見つけた。
これが『グラフィティ』なのか何なのか分からないし、落書きがいいことだとは思わないけれど……「やられたー」と思った。
遠くから見ると、本物の猫が、たたずんでいるみたいだ。
実はこの黒猫、池袋の数カ所で発見されている。
この影を、徹底的に追ってみた。
(text by 大塚幸代)
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