おいしいお店に連れていって下さい
まずは麻布でタクシーを拾った。
「どちらまで?」
「ええと、おいしいお店に……」
「えっ?おいしいお店?」
「はい。どこかありましたら」
「この辺はあまり知らないんですよね…」
「あっ、この辺じゃなくても」
「じゃあ、神保町かな。あそこはいいですよ」
というやり取りを経て、神保町に向かった。
運転手の谷島さんは62才。勤続25年のベテランドライバーだ。
「これから行く場所には、天婦羅屋と天丼屋ととんかつ屋がありましてね、全部『いもや』っていうんです。系列なんでしょう。夕方過ぎるとどこも満席ですよ」
その『いもや』グループに10年以上通っている谷島さん。道中、いかに『いもや』グループが素晴らしいか、熱心に説明してくれた。
推薦コメントの内容をまとめると……、
・ごはんはいつも炊きたてだ
・天婦羅はお客の顔を見てから揚げる
・とんかつはこんなに厚い(指で3センチくらいの隙間を作ってみせて)
・天丼500円、天婦羅定食600円、カツ丼700円。とにかく安い。
・ごはんの大盛りは無料だ
・ゴミがひとつも落ちていない
「まあ、あそこだったら誰に紹介しても恥ずかしくないですね」
という谷島さんの熱弁に頷くこと20分。車は神保町に到着、白山通り沿いで停車した。
100メートルくらいの範囲に『いもや』グループの3店舗が点在している。
全部食べたいところだがそれは無理なので、天婦羅定食を出してくれる『いもや』で食べる事にした。
「あっ、お新香は100円ですから」
車を降りる僕に声をかける谷島さん。わ、わかりました…、行ってきます。
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