高崎線、両毛線と乗り継いで部下の実家に向かう
今回の旅の目的地、荻原君の実家までは上野から高崎線に乗り1時間45分、高崎駅で両毛線に乗り換え20分ほどで着く。乗換時間を含めても片道2時間半とちょっと。他のライターたちが大変な時間をかけて移動している事を考えると申し訳ない気持ちになってくる。
でも、今回の僕は部下の実家にお邪魔して色々とお話を伺ってくる、というプレッシャーを抱えていて、それを距離に換算すると広島くらいまでにはなるものと自負しております。
高崎線の各駅停車にゴトゴトと揺られて群馬へ。
上野を出た時はガラガラだった車内も、駅を超える毎に乗客が増えていき大宮あたりではほぼ満席状態に。ギャル2人組みが僕の隣りに座り、ずっと恋の話をしている。
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「1回っきりって感じするもん、あの飲み会」
「マジ、あり得ねえー」
「3対3だったら、どうだったかな?」
「したら、みんなあんなに飲んでないね」
「っていうか、マジ枝毛やべえ」
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僕の隣のギャルが枝毛を抜いて僕の方に捨てる。
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「絶対彼女とかいるよ」
「そうかな、ギャルとか好きそうじゃない?」
「モトカノ(元の彼女)に未練タラタラだって」
「男ってそういう所あるよね」
「みんなそうだよ」
「帰ったらクシ買いに行こ」(枝毛を抜いて僕の方に捨てる)
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鴻巣という駅で正午のチャイムが鳴った。
2人は終始こないだの合コンについて話していて、そこで知り合ったちょっといい男に僕の隣のギャルは気持ちが傾いているのだ。
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「あっ、鴻巣だ。駅前にミワちゃんが住んでるよ」
「マジで?いいなあ」
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何がいいのかちっとも分らなかったが、その後2人は熟睡モードに入り、高崎に着く頃には僕の方に思いっきり寄り掛かって寝ていた。
高崎駅からギャルたちはそれぞれ別の線で家路に戻り、僕は両毛線に乗り換える。
両毛線で僕の隣に座ったオジサン2人組は競艇新聞に見入っていた。
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「カネコは昔はいい選手だった」
「うん」
「でも今回の頭はカトーかスダだな」
「そうだな」
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たまに会話を交わし、それ以外は新聞の同じ部分ばかり熱心に見ている。僕には見る事の出来ない何かが、競艇新聞の行間にはあるのだろう。
20分程で目的の駅に到着。
まだまだ検討を続けるオジサンを車内に残し、僕はホームに降り立った。
この街で荻原君は高校時代までを過ごした。
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