マイナス30度の世界がどの程度のものか想像も出来なかったので、陸別町の町役場に電話して聞いてみた。
「あのー、どんな服装で参加したらいいんでしょうか?」
「まあ、そうですねー、常識の範囲内で暖かい格好でしたら」
と突き放されてしまう。その常識の範囲が知りたかったのに。
町役場で防寒対策のヒントを得る事が出来なかった僕と林さんは、とりあえず神保町の「さかいや」で一通り買い揃える事にした。
登山・キャンプ用品の総合ショップ「さかいや」はグッズ毎に建物が違う。
「上着はあっち、下着はそっち、靴はこっちで帽子は向こう」
一通り揃えるのに色々な建物を巡らなくてはならない。
建物が変わる度にボーイスカウトみたいなスタッフの人と
「マイナス30度の場所で野宿するんです」
「運動とかはしますか?」
「いや、基本的にはじっとしていると思います」
というやりとりを繰り返す。
防寒に対して何の知識もない僕たちは、とにかく店員さんの言う事を聞くしかない。
「下着は裏が起毛している厚手のタイプがいいです」
「えっ、チクチクしないですか?」
勧められるグッズがどれも防寒度マックスなものばかりで、暑そうだ。
「僕、フリース着ると汗かいちゃって駄目なんですよ」
林さんも不安そう。
でも、ここは東京で、暖房がきいた店内。これは暑すぎるだろう、っていう位の装備がちょうどいいのかもしれない。
結局、買い揃えた防寒グッズは以下の通り。
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頭を守る |
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耳あて付帽子(うさぎの毛)、目出し帽、ネックウオーマー |
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ボディを守る |
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長袖下着(起毛タイプ)、フリースジャケット、ダウンジャケット、ヤッケ(ゴアテック製) |
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指先を守る |
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フリース製手袋、その上から雪山用手袋(ナベ掴みの様です) |
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下半身を守る |
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タイツ(起毛タイプ)、ダウンパンツ、オーバーパンツ(ゴアテック製) |
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お洒落は足元から |
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防寒靴下(2枚)、防寒シューズ |
これだけの装備を整えても、スキーをする訳でもなく、雪山に登る訳でもなく、ただかまくらの中で一晩過ごすだけ。
林さんは「スキューバダイビングの機材を揃えたと思えばいい」
と言うが果たして本当にそうだろうか?
疑問を感じながら、いざ陸別へ。
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