何を焼く?
ヤバい、せめて珍しいイモを買おうと、高級食材屋「クイーンズ・シェフ」へ行った。
でも紅イモくらいしかなかった。イモ産地、埼玉・川越で青春を過ごした私にとっては、ショックであった。
「東京ってイモ偏差値低い!!」とわけのわからない怒りにまかせて、ウインナーとか、鳥のモモとか、キノコとか、めちゃくちゃに買ってしまった。
戦後の買い出しのように、リュックに肉野菜をいっぱいつめて、ニフティの担当編集のHさんと、ほぼ初対面のIさん宅へ向かう。
落ち葉掃除のための、三角巾も持っていった。イモは掘れなかったけど、落ち葉で本格派焼きイモはできるぞ!と思いながら、待ち合わせ場所の駅前の吉野屋で待っていると………。
しとしと雨が降ってきたのだ。
落ち葉、絶望的。
バーベキューセットを地面に置いて
Iさん宅には、「知人がビンゴ大会で当たったやつを借りっぱなし、のバーベキューセット」があった。雨のかからない軒下で、炭を着火する。人の家の、勝手のわからない台所で、いろんなものを切って銀紙に巻く。
「なんか考えてたのと全然違う気がする………」と思ったが、もう既に火は燃えていた。もう何も元には戻らない。
平日夕方、縁側で焼ける火を見つめる大人3人。ビールも飲まず、もちろんシラフだ。
「なんか、新婚家庭の、新妻のムチャな料理みたいですね」
「こんな新妻いませんよ」
「お、なんか肉の焼ける匂いがしてきましたよ……」
「美味しそう。でも同僚が仕事してるときに、肉とかイモ焼いてるっていいんですかね?」
「あ、この銀紙からは甘い香りが……リンゴかな?」
「この細長いの、絶対バナナでしょ」
なんだかんだいって、焼けてくると、楽しくなってきた。多少ヤケクソであった。
次のページから私たちが焼いて食べたもの全品を紹介します。
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