申込用紙を書き終わる頃に、後から、僕と志同じく性感染症検査を受けると思われる男性が来た。ライオンのたてがみのように雄雄しく立った金髪と、小麦色の肌、オサレっぽい服の3拍子揃ったやんごとなきイケメン様だった。超自由な感じの。
ロンドンの大手コンドームメーカー「デュレックス」が世界41カ国のぱやぱやに対する調査を行った結果、日本人が1年間に行うぱやぱやの回数は、平均46回だそうで。「あのイケメンとオレのぱやぱや回数の平均を出したら、そうなるか」と思った。いや、もっといくか。いくよな。イケメンだもんな。
僕の人生の中で、絶対に同じような境遇になることはないな、と思っていたイケメンと、今ここで、このようなところで出会うことになるとは。彼は順走、僕は逆走、トラックの果てで巡り会った、運命を共にする2人であります。
用紙を書き終わると、「2」と書かれた縦長の札をもらい、指定された部屋の前に行く。しばらくすると「2番さん」と呼ぶ声が部屋の中からしてきた。このとき初めて「匿名」というのを意識した。今僕の名前は「2番」。サイボーグ009で言ったら、鼻の長いヤツだ。とにかく今ここには誰も僕の名前を知る人はいません。 |