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コネタ839
 
遺伝子で体質検査〜お酒のめるクチ?〜

「その赤さに勝てるのは松崎しげるくらいだよ」と言われたことがある。
飲酒の席での話だ。飲み屋に飾ってある漆塗りの天狗を指さされて「あんな色」と言われたこともある。
私は飲むと赤くなる。しかし酒は大好きだ。でも量はあまり飲めない。
これってどういうことなんだろう。酒に弱いの? 強いの?

そういった体質の疑問を、遺伝子レベルで解明してきました。

佐倉 美穂

検査に申し込む

上に書いたように、私は酒を飲むと赤くなる。父も母も兄二人も赤くなるので、正月などはなんともめでたい真っ赤な顔揃いになる。
てことは、やはりこういうのは遺伝が関係しているのだろう。


酔った私の額とペットの白フェレット。酔っぱらいは嫌いか。

そこで知ったのが「体質を遺伝子診断するサービス」だ。

やらいでか。

そう思った私は、「朝まで飲み続けられる」というニフティ古賀さんを比較対象に誘って、ディーエヌエーバンクという会社に診断を申し込んだ。

送られてきた検査キットにある綿棒のようなもので口の中をこする。


先端は厚紙のような感触
頬の内側をこする

けっこう固く、ぎざぎざにできており、それで口腔内の細胞を取るのだ。
気合いを入れてこすり過ぎたため、出血させてしまった。あちゃ。

その綿棒の先だけをDNA抽出液の入ったチューブに入れ、郵送すると、後日結果が届くというシステムだ。


細胞がうようよしているチューブ内

送った綿棒の先から、どうやって体質がわかるのか、その現場に行ってみた。

 

研究所でお話を伺う

古賀さんと訪れた横浜研究所のドアには、ばーんとバイオハザードマーク。おののく古賀さん。


ゲームではなく。

古賀「普通の生活でこんなマーク見ないですよねえ!」
佐倉「そうですよねえ! ……学生の頃、テストでこのマークを書けって出題されたことありましたよ。書けませんよ!」

中に入ると、マークよりさらに日常では目にしない機械や部品がずらり。うおお、白衣じゃ、ピペットじゃー。

ふがふがと興奮していると、お話をしてくださる大澤さんが出迎えてくださった。


お若そうなのに所長さんです

「今回はアルコールが分解されてできた『アルデヒド』を分解する遺伝子を検査します。アルデヒドは二日酔いなどの原因になる毒性の高い物質で、それを分解する酵素を人間は持っています。しかし、その酵素を作る遺伝子に異常があると、あまりうまくお酒が分解されず、飲めない人、ということになります。」
赤ら顔になるのも、この遺伝子に異常がある人らしい。

--簡単に作業手順を教えていただけますか
「届いたチューブからDNAを抽出して、関係する遺伝子のDNAだけを機械で増やします。」

DNAとは物質の名前で、遺伝子の本体である。遺伝子の素材がDNAという感じですな。
長いDNAの上に、点々と遺伝子が存在するのだ。


PCRというDNA増幅マシン

「増えたDNAを酵素で切断します。遺伝子に異常があると切れないようになっているので、そのDNAの長さを比較して、異常があるかどうか=お酒が飲めるかどうかを判別します」

くぼみをつけて固めた寒天(アガロース)にDNAを注いで電気を流すと、磁石に引っ張られる鉄のようにDNAは移動する。その移動距離でDNAの大きさがわかるのだ。

うひょひょ、私もやらせてもらった。
実験好きなので、つい浮かれてしまう。


DNAの混ざった液体を
アガロースのくぼみにピペットで注ぐ

さて、とうとう結果の写真がでた。これだ!

アガロースの写真をデジカメで撮影し、PC画面に映したもの

ええと、遺伝子に異常があると切れないようになっていて、写真のDNAは上の方が切れてないもので、下の二本は切れたもので……

つまり、切れてないDNA(上)が強く白く写っている私は異常があって、それが薄く写っている古賀さんは異常がなくて……。

さらに詳しい結果レポートをいただいた。
私のアルデヒド分解酵素を作る遺伝子のタイプは1/2、古賀さんは1/1だという。

レポートの説明を引用すると

タイプ1/1(強い)
アルデヒドの分解が速く、アルコールに強いタイプです。
気持ち悪くなりにくく、二日酔いにもなりにくいです。ただ、アルコールの分解速度によっては、分解酵素の働きが追いつかず、あまり急激に飲むと気持ち悪くなることもあります。
基本的には気持ち悪くなりにくいので、アルコール依存症になりやすいタイプとも言えます。
いくら強くてもやはり飲み過ぎには注意しましょう。

タイプ1/2(中間)
アルデヒドの分解が若干弱いので、お酒は強くも弱くもない程々に飲めるタイプです。
飲み過ぎると気持ち悪くなったり、二日酔いに悩まされます。全然飲めないわけでもありませんが、たくさん飲めるわけでもないので、ご自分で量をしっかりと管理して、健康維持に役立ててください。

ものすごく納得できる診断結果でした……。

遺伝子様の言うとおり! とひれ伏すような結果が出まして、どんな占いよりも当たるような診断でした。

しかし体内でおこる様々な作用には複数の遺伝子が関係していることが多く、一つの遺伝子だけで「絶対こうだ!」とも言いきれません。
結果を参考に体質を知り、対策をたてると良い、という感じです。
ちなみに今回検査したアルデヒドですが、毒性が強く、ガンの原因にもなります。
なので酒量を控えよう、等という具合に。

この診断で出るタイプは上で二つ書きましたが、もう一つ、2/2(弱い)というものもあります。
アルデヒドを分解できない、お酒に弱いタイプ。気持ち悪くなりやすく、二日酔いに悩まされやすい人だそうです。無理に飲むことは体への負担が高く危険だそうですよ。

日本人は人口の3分の1にこの遺伝子の変異があるそうです。タイプでいうと1/2、2/2ですね。
ああ少数派の私。でもお酒は好きだ。やめられない。
結果を参考に、節度を持ってお酒と付き合っていくことにします。

……次は肥満体質検査かな……。

研究所は立派な建物の中

取材協力
  ディーエヌエーバンク


もうちょっとDNAのことを読んでやってもいいよ、という方は
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