沖縄を代表する酒、泡盛。タイ米から作られる伝統の酒だ。泡盛はアルコール度数が高く独特のくせもあるのだけど、何年も寝かすと口当たりがまろやかになる。こうやって長年寝かせた泡盛を古酒(クース)という。
沖縄北部の金武(きん)町にある鍾乳洞で大量の泡盛が眠っていると聞いて行ってきました。
(安藤 昌教)
洞窟はどこだ
泡盛の眠る洞窟を目指して車を走らせる。目的地付近の金武町町役場まではスムーズにたどり着いた。で、洞窟はどこだ。ダウジングを取り出そうかどうか迷いながらしばらく車を走らせていると「鍾乳洞」と書かれた看板を発見した。
目的地はどうやらこの近くらしい。
鍾乳洞と書かれた看板の矢印の方向へ顔を向けると、そこには寺へと続く参道が延びていた。道の左右では地蔵がにらみをきかせていて小心者の足をすくませる。入っていいのか。
しかし他に手がかりもないので目をつぶってまっすぐ寺へと向かった。しかしどうみても寺だ。鍾乳洞ではない。
控えめな入り口を発見する
途方にくれて寺の境内を歩いていると隅の方に看板が立っていた。「鍾乳洞、酒蔵」。
え、ここ?
鍾乳洞の入り口はあまりにも控えめだった。周りにはシダっぽい植物が鬱蒼と茂っていて入り口を覆い隠してしまいそうなほど。しかし地下へと続くその小さな穴を覗き込むと、果ての方から冷たい空気が上がってくるのを感じる。どうみても怖い。
入ります
しかし実はここまで車で1時間半かけて来ている。早起きして来たのになぜかすでに昼飯時だ。入らないわけにはいかないだろう。意を決して階段を下ることにした。
洞窟に入るには入場料が必要だった。寺の境内にある売店でおばちゃんに400円を払うと、引き換えに
「25メートルくらい階段を下りると広間に当たります」
という情報を教えてくれた。ドラクエみたいだ。
おばちゃんに言われたとおり、25メートルくらい下っていくと道は腰をかがめないと通れないほど狭くなってきた。鍾乳洞内にはところどころにほこらがあって明らかになにか供養されている。そういうリアルが観光スポットと一線を画してきた理由なのだろう。
狭いトンネルを抜けると一気に天井が高くなった。ここがおばちゃんの言っていた大広間か。足を踏み入れると鼻の奥にほのかに泡盛の香りを感じる。
目が暗闇に慣れると目の前に巨大な酒蔵が現れた。
スケールがでかいです
鍾乳洞は年間の平均気温が約18度付近と安定していて泡盛の貯蔵には最適なのだという。酒蔵のある大広間は畳約140畳。この環境の中で4000本以上の泡盛がじっとその日を待っている。それからこの鍾乳洞は今から約50万年から100万年前に出来たらしい。どの話もスケールがやたらでかいのだ。
未来の自分へのプレゼントです
泡盛は1万円で5年間、2万円で12年間貯蔵してくれる。12年というと僕は42才だ。たぶん厄年。その日のために2万円払おうかと思ったが、30才の今、財布に2千円しか入っていなかったので無理だった。ごめんな、12年後のおれ。
泡盛は貯蔵期限になると連絡、発送もしてくれるらしい。忘れた頃にまろやかな古酒が届くというのは考えただけでもうれしくなる。未来の自分へのプレゼントには最適でしょう。
有限会社 金武酒造
〒904−1201 沖縄県国頭郡金武町金武4823−1番地 電話098−968−2438