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コネタ


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朝ご飯と夜ご飯をそのまま野外へ

「外で食べるとなんでも美味しい」人はそう言い、私もそう思う。ピクニックは楽しいし、ビアガーデンやらオープンカフェやらは興奮して雰囲気だけでお腹一杯だ。

この野外マジックというのはどこまで通用するのだろう。

たとえば、毎日食卓で食べている地味なご飯を、弁当箱に入れることなくそのまんま野外で食べたら。それでも美味しいと感じるのだろうか。

野宿ならぬ野食。検証してみました。

(text by 古賀及子

朝7時、公園へ

ある平日の午前7時15分。普通だったら、家で新聞の四コマを読みながら朝ご飯を食べている時間だ。

今日は食卓ではなく近所の公園へやってきた。ここにはかなり広い芝生がある。芝生育成のため長く広場に入れなかったのがこの頃開放されて、いい感じのピクニックスポットだと目をつけていた。

見るからにさわやか

芝生が朝露にぬれて草のにおいがする。風があって涼しい。空にはトンボも。おお、うろたえるほど秋だ。

通勤や通学の通り道になっているようで、公園内の歩道を歩く人は多いが芝生の上には誰もいない。

非常なさわやか加減にどきどきしながら敷物を広げて座った。普段だったらここからはお弁当箱が出てきそうなところだが、今日は普段使ってる皿とコップを持ってきた。

皿はヤマザキ春のパン祭りでもらったやつ。コップは今や懐かしい太陽神戸三井銀行でもらったやつだ。色気も何もない。

食事の内容も、食パンと目玉焼きとサラダ。もう、ありのまま、しょぼい普段の食卓をそのまんま公園へスライドさせたかたち。

が、いざ物々を敷物上に並べて驚いた。

おや?

なんだこりゃ! 美味しそうじゃないか。

単純に、本当に芝生の上に普通のご飯を連れてきただけなのに、なんだかステキ生活系の雑誌かのようですよ! それは言い過ぎにしても、敷物にした我が家に30年以上あるらしいテーブルクロスまでがレトロでオッケイな風に目に映る。

これはうっかり優雅だ

ご飯の味もやはり美味しく感じる。す、すごいぞ。外!

ぶっちゃけ、どんなトホホな結果が待っているかと不安だったのだ。蚊に喰われまくるんじゃないかとか、公園の周りの歩道を行く通勤の方々にジロジロ見られるんじゃないかとか、散歩中の犬にパン食べられちゃうんじゃないかとか。

あまりにちゃんと美味しい結果が出てしまった。


何か面白いことやらなきゃと思って焦ってでんぐり返しとかやってみたが
だからといって食事のステキ感はまるで変わらず

そういえば、以前ウェブマスター林さんが海で朝ご飯を食べていた。ここでも普通のご飯がやたらおいしそうなのだが(特集「海ごはん海ごはん」)、海まで行かなくても、芝生でも十分日常のご飯が輝くことが分かった。

ご飯はどうだ

さて、調子に乗ってその日の22時過ぎ。晩ごはんも同じ場所で食べてみることにした。

朝と同じ公園、夜の顔

夜の公園、芝生の上には朝同様誰もいなかった。芝生のむこうにコンクリートの階段があって、女子高生がそこにたむろしていてときどき笑い声が聞こえる。女一人で座り込んで食べるのにはこれぐらい外野がいてくれると安心だ。

通路やコンクリートの方は街灯が照らしているが芝生の上は真っ暗だった。なんとなく目が慣れるのを待っておごそかに敷物を敷く。朝とは違う生ぬるい風が吹いている。どきどき。

かなり暗いです

お送りしたとおり、朝は洋食であった。もしかすると、洋の要素がステキ感を演出してしまったのかもしれないとおもい、晩ご飯は和を意識した。

ここでも朝と同じルールで、家で普段食べているものをそのまま皿ごと持ってまいりましたが、さて。


暗くて見えなかったため→

フラッシュを炊いて撮影

あっ! 今気付いたのだが、「私の普通の夕飯」というのは、ほとんど「居酒屋メニュー」だ。サバの煮物、ひややっこ、枝豆、あとビール。白飯はビールを飲みきった後に食べるのであえて持ってきていない。

そうか、つまりこれはビヤガーデンか。

しかし、辺りの暗さで、食べているときはビアガーデンといった趣はそれほど感じなかった。そのときの私の目に映っているのはあくまで上の左側の写真なのである。

それほ居酒屋な感じはしないと思うのですが、どうでしょうか。

因みに当時の記録メモには以下のように書いてあった。

・暗いので食べるまで味が分からないわくわく
・酔っぱらっているのかもよく分からない
・何しろ暗い
・暗くても枝豆は的確に食べられる。豆腐は食べるのが難しい。魚は骨の少ないものが好ましい。

外で食べる云々というよりも、概ね、暗くて何がなんだか分かっていない様子である。

暗い、うまい

分からないなりにも食べている間、私は「ああ、やっぱり外で食べるのはいいな」と素直に思っていた。暗闇が食事のアラを隠しているのか。

朝も夜も、どんな食事でも、やはり野外で食べるのは気分がよい。そうゆうふうに世界はできているのだ。

その時!

すっかり納得して食も進み、ビールもう1本飲もうかなどと浮かれ始めた頃。私が座る後ろの草むらをガサガサっとかき分ける音がした(芝生の広場のヘリ部分に陣取っていたため、すぐ後ろが草むらになっている)。

驚いて凍っていると、ヌッと女性が出てきて私をちらっと見て広場に入り、そして律儀にサンダルを脱いで芝を横切っていった。

サクをまたいで

どうやら、公園を抜け道にして通っている人のようだった。いや、驚いて冷や汗だ。食事は美味しいが、夜の暗闇はやはり怖い。外でご飯を食べるときは、浮かれずにそのあたりも注意したい。

などと言いつつ、多分驚いたのは私よりも通っていった女性の方だろうと思う。

せめて、誰かと一緒に喋りながら食べていればお互いに驚かずにすんだかもしれない。

・朝は一人でも可、夜は二人以上が好ましい
・夜は暗闇の場所では懐中電灯を持って行くとよい

この辺りをポイントに今後とも地味な自宅ごはんをどんどん野外に開放して行きたいと思います! あと、外だと食が進むので、パンはもう一枚焼いていくことを、ビールはもう一缶持っていくことをお勧めします。

 

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