スーパーやコンビニに並ぶ商品のほとんどはバーコードで管理されている。１０円の駄菓子にだってちゃんとバーコードが印刷されていて、レジに通せば品名と金額が読み込まれる。そこで思った。現在世の中に出回っているバーコードの中で、一番高い金額が登録されているバーコードはどんな商品だろうか？

調べて来ました。

（text by 住 正徳）

まずはバーコードリーダーのメーカーである日栄インテック株式会社（千代田区神田）からバーコードについて色々とお話を伺った。
対応してくれたのは、バーコード営業部の川崎さん。

普段、スーパーやコンビニなどで手にする商品についているバーコードはJANコードといい、１３桁と８桁のものがある。今回は、このJANコードを持つ商品の中で最も高額なものを探そうと思っている 訳だが、そう簡単にはいかないらしい。

日栄インテック社のバーコードリーダー

「そもそもバーコード自体には金額データが登録されていません。最初の２桁に国コード、次にメーカーコード、最後に商品アイテムコードが登録されているだけです」

スーパーやコンビニは、それぞれに独自の流通システムを持っていて、金額を含む商品情報をデータベースで管理している。レジではバーコード自体から金額データを取得している訳ではなく、アイテムコードをキーコードにしてデータベースからその金額を引っ張ってくる訳だ。

それぞれが独自のデータベースを管理しているという事は、現在JANコードをつけて世の中に流通している商品全部の金額を把握する事は相当困難な作業になるという事だ。

一番高いJANコードを持つ商品を探し出す事は不可能なのだろうか？

「でも、JANコードを持つ商品の中で、高額なものといったら限定されてくると思います。例えば住宅とか車にはJANコードは付いてないでしょうから」

と川崎さん。

「高額なJANコードをお持ちなのは宝飾店でしょう」
なるほど。確かに宝飾店には高額な商品がゴロゴロしていそうだ。
一番高いバーコードに辿り着けないまでも、相当高額なバーコードには巡り会 えるかもしれない。

ブライダルダイヤモンドの専門店へ

一番高額な商品のバーコードを見せてください。

そんな依頼に快く応えてくれたのは、 銀座一丁目に店舗を構える「銀座ダイヤモンドシライシ」さんだ。エンゲージリング、マリッジリングを中心に取り扱う、日本最大級のブライダルダイヤモンド専門店である。

この銀座本店には時価総額７億円の商品があるらしく、そのバーコードも存在するという。

７億円！

早速見せてもらう事にした。

本店の最上階に案内されると、ショーケースの上にメイクさんが持ち歩いている様なカジュアルな箱が置いてあった。
この中に７億円の商品が入っているのだ。普段は店頭には飾らず、金庫で厳重に保管されているという。

対応してくれた大田さんと渡辺さんは白い手袋をして商品を取り扱っている。
両端に屈強な外国人SPが立っていても不思議ではない光景だ。

どーん！

どーん！どーん！

このティアラ、ネックレス、イヤリングには、全部で１０００個弱のダイヤモンドがあしらわれている。総カラット数は、何と２００カラット。「キャラット」と巻き舌で発音しないと失礼なんじゃないか。そんな風に思える豪華な３点セット。

しばらく７億円の輝きに言葉を失ってしまう。

が、僕の本当の目的はダイヤモンドではなく、バーコードなのだ。
７億円のバーコードを見せてもらった。

バーコード表示の上に数字で金額が併記されている。
いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、ひゃくまん、いっせん、……ななおく。

こんな値札、見た事ない。

更に、実際にバーコードリーダーで読み込んでいただいた。

バックヤードのパソコンに「受注合計　700,000,000」と表示された。

スーパーにある様なレジに「700,000,000円」と表示されるところを想像していたのだが、宝飾店にはそういうレジは置いてないらしい。

スーパーのレジでは７億円も入らない。

ちなみにこちらは１０円のバーコード。
バーコードだけを見比べても両者の間に大差はないが、金額的には699,999,990円の違いがある。