以前、安藤さんの記事「物を金にする」で、金色に塗られたバナナを見た。普通のバナナが金色になると、なんだかわからないゴージャス感が出てくる。
見た目が少し違っただけで、別の雰囲気が見えてくる。勝手にかもし出てくる豪華さ。
普通のバナナだって、個性を出したいときもあるだろう。ゴージャス感とは別のものをかもし出すべく、バナナをいろいろ塗ってみました。
(text by 小野 法師丸)
数あるフルーツの中でも、バナナの人気度はそのかわいらしさもあって、結構な上位に食い込んでくるのではないだろうか。
明るい黄色、クイッとカーブした形。栄養がありそうなイメージや価格の安さからも、人気の高い果物だと思う。かわいいバナナを見つめていると、愛憎入り混じってどうかしたくなる気にもなってくる。
いつもは黙って食べるバナナだが、今回は無駄なひと手間をかけてみたい。用意したのはアクリル絵の具。うーん、黄色のベースを生かしてみようと思うのだが…。
思い浮かんだのはトラだ。黄色地に黒のシマシマということで、まあ簡単だろうと思ってやってみたのだが、なかなかそれっぽさを出すのは難しい。
単純と思われた柄も、雰囲気を出そうとすると思っていたより技術が求められるようだ。まあ全然違うという感じではないかもしれないが、今ひとつ本格さが欠ける。
ところで今回は、ちょっと絵の心得がある知人を助っ人として呼んでいた。単純柄は私でやりつつ、難しそうなのは頼んでみたのだ。
お願いしたのはキリン模様。私がやったのよりもそれっぽさが高い。完成したのを手に取ると、これはありだなという感じでしっくりくる。意外と売れたりするんではないだろうか。
もっと違和感が出るかと思ったが、なんだかなじんでる感じもする。バナナという密林出身の果物ということもあるのかもしれない。
●さらにアレンジが暴走気味に
これまで試した3つはベースの黄色を生かしたものだったが、完全に黄色を殺してしまう風にしてみるとまた違う雰囲気が出てくるのではないだろうか。
そんな話をしてみたところ、知人が塗りだしたのはホルスタイン柄。これもやっぱりかわいらしい。ミルクをふんだんに使った感じに生まれ変わったバナナ。食べてみたい気持ちも自然と湧いてくる。
技術に欠ける私はショッキングピンクでベタ塗りしてみた。もっと過激な感じになるかと予想していたのだが、思っていたほどでもない。バナナのかわいさあなどりがたしだ。
さらに青の水玉を投入。毒キノコっぽい感じがやっと出てきた風でもあるが、意外とポップなかわいさもある気がするのは、変なバナナを見すぎて私がおかしくなっているからだろうか。
知人は創作意欲が乗ってきたのか、今度は迷彩模様に塗っている。まさにジャングルバージョンのバナナであるが、バナナはもともとジャングルのものではなかっただろうか。
動物たちに奪われないように隠れて食べるためのバナナとも言えるか。サルにこのバナナを見せたらどんな反応をするかもおもしろそうだ。
●おかしなバナナを食らう
すっかりどうかしてしまったバナナたちだが、それはあくまで見た目だけ。中身は普通であるバナナ、ちょうど小腹も空いてきたところなので食べてみよう。
軽い悪夢に出てきそうなポップバナナも、こうして皮をむいてみると本来のバナナっぽさを取り戻す。うん、いいんじゃないのと思っていたのだが、ウェブマスター・林さんに写真を見せたところ、「きもちわるいですなー」との反応。
やっぱりそうなのか。自分で描いたかわいさがある分、少し感覚がおかしくなっているのかもしれない。
見た目がメンタルに与える影響で味にも変化が出るかと思ったが、やっぱり普通にバナナ味。思っていたほどの破壊力はない。
それに対して、知人が描いてくれたキリンバナナは、むいてみてさらにかわいさがアップ。ちゃんと中身がバナナになっているという、ちょっとした感動がある。これなら味も素直に楽しめるだろう。
さらには残った皮もその柄ゆえに楽しい感じ。クターッとなりつつ、まだまだちゃんとキリンのふりをしている。
●思っていたより普通に楽しい
もっとおかしな感じになるかと期待していたのだが、割と普通にかわいさがかもし出されてしまって、うっすら抱いていた悪意も拍子抜けだ。
どうやってもあくまでかわいいバナナ。やるなこいつ。
別にバナナに特別な恨みがあるわけではないが、その人気の秘密がまたひとつわかったような気になってしまって、ちょっとくやしい感じもする。