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コネタ


コネタ702
 
土の緩衝作用をためす
実家の裏の林にて

たとえば、酸性雨が土にしみこんだ場合、土は自分自身が酸性になるかわりに、土を通り過ぎて地下にぬける雨水は中性に戻るらしい。

こんなふうに、土が、その中に含まれる水のPHを中性に保とうとする働きのことを、土の化学的緩衝作用と言う、ということをさいきん知った。

なんだか、腐海の底の水はすごく澄んでいた、という風の谷のナウシカのような話だけど(分からない方はごめんなさい)、

そういうエコっぽいところを忘れると、ようするに酸っぱい飲みものも、土を通すと酸っぱくなくなって出てくるという話にちがいない。

というわけで、本当かどうか、飲んで試してみました。

(text by 三土 たつお

土でろ過したりしなければ普通においしいです。
最初はソフトなところから

とはいえ、いきなりレモン果汁の原液などのハードな酸をためすのは、飲む側としてもきつい。

まずはウォームアップとして、C1000タケダ レモンウォーターを試してみる。果汁1%。いい感じだ。

土を通した後の味と比較するために、まずはこの状態のままで飲んでみる。甘すぎず、酸っぱすぎず、とてもおいしい。

土でろ過なんかしちゃいけないような気がしてきたけど、ここは気づかないふりをしてやり過ごすのが、大人というものだと思う。

 

まず土をあつめる

土は、かたまりのままの状態よりは、ほぐれてバラバラになっているほうが、水との接触面積が増えていいらしい。

そこで、近くに落ちていた石で足元の土を削り、適量をシャーレに取る。シャーレが本来の使い方をされていないような気もするけど、これも深くは考えない。


手にもった石で土の表面をけずり、
あつまった分をシャーレに入れます。

 

そして、ジュースにまぜる

土があつまったら、おもむろにビーカーにあける。ジュースを土に十分に触れさせるために、ここでよくかき混ぜることが重要になる。

かき混ぜたらしばらく静置して、うわずみを漏斗でろ過する。十分な量がたまるまでには、5分ほどかかる。


あつめた土を躊躇なくジュースに注いでかきまぜ、

漏斗をつかってろ過。

5分ほど待ちます

 

変な人がいたね、お父さん。
親子に声をかけられる

ろ過が終わるのをボーっと待っていると、男の子と一緒のお父さんに声をかけられた。親子でトンボをつかまえているらしい。

「・・何かの実験をしてるんですか?」
土の緩衝作用っていうのがあるらしくて、それをためしています。

「へー、それでその白衣も?」
ま、まあそうですね・・

「・・・(無言)」
・・・(無言)

こういう状況をうまく説明するのはとても難しい。

 

いよいよ結果をみる

ろ過がすすみ、フラスコの底にそれなりの量がたまったところで、いよいよ試飲。どんな結果になるか、ちょっとわくわくする。


これが最初の状態。味は甘く、適度に酸っぱい。 PHは4くらい(7未満が酸性)。

そして土を通した後。 全体的にうす味になっていて、甘さと酸っぱさが抑えられている。ほのかに土のにおいもする。PHは6くらいに見える。

デジタルPH計で正確な値をみる。
最初は 4.19 だった数値が、

5.43 まで上昇している。

 

なかなか好調

というわけで、完全に中性に戻るというわけには行かなかったけど、飲んでみたかぎり、酸っぱさはほとんど感じられなくなっていた。

実際には地面の下の土の層は何十メートルも何百メートルもあるのだから、その間には、酸性の雨もすっかり中性に戻るんじゃないかという気がする。

 

土はミツカン穀物酢の酸性に耐えられるか

さらに過酷な試練をあたえる

レモンウォーターは酸としては軟弱かもしれない。母なる大地にとっては役不足というものだろう。

そこで次は、酸っぱいものの台所代表として、お酢を試してみることにした。

まずは何もしない状態のままでお酢を飲んでみる。最初にほんのりとうまみを感じて、しかし次の瞬間つきぬけるような酸っぱさがやってくる。本格派の酸だ。

次に、さっきと同じ過程をへて、土でろ過したものを飲んでみると、全体的にうす味になっているけれど、後味の酸っぱさはあまり変わっていないように感じられた。ただし、土のにおいが加わっている。

計ってみると、PH は約 0.8 ほど上昇していた。レモンウォーターのときほどではないものの、実はちゃんと中性に近づいていたのだった。

やるな、大地。

ろ過前。ものすごい酸っぱさ。デジタルPH計の値は 3.35
ろ過後は 4.12 まで上昇。微妙に黄色がかってみえる。

 

重曹。ふくらし粉として使うあれです。

最後にアルカリもためしてみる

土には酸性を中性にもどすだけでなく、アルカリ性を中性にもどす作用もあるらしい。ついでに試してみよう。

身近にあるアルカリ性のものといって思いつくのは石ケン水だけど、飲むとすごくいやな味がするのを、ぼくはすでに知っている。調べたところ重曹が具合がいいようなので、今回はこれを使ってみた。

試した結果は以下のとおり。

土を通す前と後で、見た目も飲んでみた感じも、ほとんど変わらなかった。ただし土のフレーバーがプラスされている。

アルカリに対する作用はそれほど強くないのかもしれない。

ろ過前。かすかにしょっぱい。PHは 8.45
ろ過後はほんのり緑がかったように見える。正確なPHの値は 8.21

まろやかフィルタとしての土を見直す

このように、土には、酸っぱすぎるものをそうでなくする、まろやかフィルタとしての働きがある。このことはもっと強調されていいように思う。

たとえばきゅうりとわかめの酢の物を作っていて、お酢を多めに入れてしまった場合。ボールに土をひとつまみ入れるだけで、味はいくぶんまろやかになるはずだ。

ぼくはためそうとは思いませんけど。


 

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