さて、中に入り、二階に通される。事前に電話で件の広告に載っていた酒鍋を予約しておいたため、すでに人数分の鍋の具材がセッティングされていて、とてもおいしそうだ。
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お店の照明がオレンジ色のため、このような色の写 真になってしまった(以下同)。申し訳ない。 |
「燃える酒鍋」の準備をしてもらうことにすると、見た目は普通の鍋のような、透明の液体の入った鍋がやってきた。しかし普通 の鍋と違うのは名前から察しがつくとおり日本酒が5合入っているのだとか。
新潟では酒鍋自体は割とポピュラーな食べ物らしいが、こちらのお店ではオーナーの父でもある先代が、30年ほど前に考案したらしい。
それではさっそく食べてみよう。
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一見普通の鍋だが、火をつけると物凄い火柱が!!(マウスオーバーで画像が変わります) |
単なる酒鍋ではなく「燃える酒鍋」ということで、実際に火をつけてもらう。何故燃やすのかというと、鍋に入った日本酒のアルコールを飛ばすためだというが、観ていて「火事になるんじゃないか」と不安になるほど、勢いよく火柱をあげて燃える。普通 の水炊きではなく敢えて酒鍋にしているのは、豚肉のもつ臭みを消させる為だとか。
5分程で自然に鎮火したら、後は普通の鍋と同じ要領で食べるのだが、豚肉独特の匂いがほのかに漂う日本酒の香りにかき消されて、これがまたウマイのだ。
同席した一同、ウマイウマイとただそれだけをオウムのように繰り返しながら、鍋を突きあうのだった。
そうこうしているうち、広告に載っていた「ニュータッチとんかつ」が、テーブルに運ばれてきた。
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見た目は普通のトンカツと変わりないのだが……。 |
はむ、と一切れを一気に口にほおばると、ウッ!ウメー!! なんでも豚バラ肉を10時間煮込み、さらにトンカツにしたというこのメニュー、油っぽさはほとんど抜けていて、コラーゲンのとろみが口の中でトロトロととろける。
こんな美味しいトンカツは初めて食べた。
オーナーの話だと、なんでも本職のトンカツ屋が食べに来ることもあるそうだが、みな口々に「これは邪道だ」と負け惜しみのような言葉を残していくのだそうが、 別においしければなんでもいい筆者のような人間は、邪道であろうとなかろうと、これだけおいしければ大満足なのだった。
取材は夜に行われたため、鍋ととんかつをビールと共に味わうという贅沢な取材になってしまったのだが、昼間は定食屋としても営業をしているらしい。
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壁に貼られた定食のメニュー。この味でこの値段は、いってみなければ分からない安さだ!! |
ちなみに冒頭に掲げたユニークなイラストは、先代の時にあの「サザエさん」で有名な長谷川町子先生(!)のアシスタントの方に、お願いして描いてもらったそうだ。
他にも、先代のアイデアマンぶりや、現オーナーと父との心温まるお話も訊いたのだが、それはここでは割愛させていただく。実際に訪れて、美味しいものを食べながら尋ねてみるといいだろう。きっと快く応じてくれるはずだ。
この一枚の広告に惹かれて行ってみた「どん平」は、想像以上に美味しいお店だった。筆者が自信を持ってお勧めする、本当に良いお店だ。この記事を読んだら、多少遠方の方でもわざわざ足を運ぶ価値はあると、ここに断言しておこう。そこであなたを迎えている美味しいものの数々に、落とすホッペがいくつあっても足りない位 だ。
都営荒川線の宮ノ前という、地元じゃなきゃまず行かないようなローカルなところに、こんな美味しいお店があるなんて、 本当に油断できない。
もしかしたら僕の家の、そしてあなたの家の近所にも、しらないだけで「どん平」に勝るとも劣らないような、そんな美味しいお店があるかもしれない(正直、どん平ほど美味しいお店は、そうそう見つからないとは思うが)。
自分の家の近所の定食屋さんにも、今度足を運んでみよう。そうすれば、どん平ほどではないにしろ、地元に住んでいて良かったと思えるくらい、美味しいお店がみつかるかもしれない。
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