いざ、火の道へ……
ナニゴトもはじめての体験というものは胸が高鳴るものです。
巨大な盛り塩をグイッと踏みしめ、いかにも修行を積みあげてきたお顔立ちの山伏の方に、「えいっ!」と背中から気合いを入れていただくと、炎の上だろうが水の中だろうがガンガン歩ける気になるのがふしぎです。
水ぶくれも流血も、うちのオカンも、もうなにも怖いものはありません。
しかしながら、我々下界人が歩くのは燃えカスの上でした。無念の気持ちが伝わったのか、一歩を踏みだした私は制止され、端に寄せていた火のくすぶった枝を、山伏の方がほうきで掃きながら中央によせはじめました。
「うあああああーーーーだめだめだめえーー熱いから!それ熱いからっ!」
心の叫びは伝わらないようです。
しかたありません、よほど高尚な人物だと勘ちがいでもされたのでしょうか。
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