さらば、象のあし
ああ、今日ほど私が、念写ができる体質でないことを悔やんだことはない。
みなさんに、あの『象のあし』をご紹介することは完全に不可能になってしまったのだ。
あまりにもくやしいので、まずは『象のあしを偲ぶ会』に一人で行ってくることにした。
なにかの"まじない"なのか、土嚢(どのう)が積んであった。もしかしたらこの土嚢で私のような『象のあし鑑賞家』の目をあざむこうとしているのかもしれなかった。
「そうはいくもんか」
と思いながら うっすら『あし』の面影がのこる場所に立つ。しばし眺めること2分。
『コンクリが先か。木が先か』
どうやってこの木は、コンクリを侵略していったんだろう、いったい内部はどうなってるんだ?とずっとふしぎだった。
この場所を通るたびに浮かんでいた疑問は、その切り口を見てやっと判明した。
伐採されるまでは、木の左右のコンクリ塀がつながっていると私は思っていたのだ。バカか。
よく観察してみると、木だけではない、コンクリートもバッツリとカットされている。相討ちか。いやちがう。
まず最初に木、ありき。
のちに左右にブ厚い塀が作られたようだ。
長い年月を経て、そりゃあ木が食い込むのはむりもない。なにしろ侵略していったのは木ではなくて、コンクリだったのだ。
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