セレブな鯉たちにジェラシー
会場をウロウロしながらお話をうかがっていると、鯉の所有者が飼育をしているとは限らないということを知る。
養鯉場やニシキ鯉センターで育てることが多いらしい。季節ごとに場を移すばあいもあり、茨城、長野、新潟……私よりずっと旅なれているようだ。
「仕上げ」という言葉もよく耳にした。野池飼育で仕上げるのは高等技術なんだそうだ。
一番おどろいたのは、整形をする鯉がいるということ。よりよい見栄えにするために模様を削るそうだが、見る人から見ればわかるらしく、こういった鯉たちが品評会で評価されることはまずないらしい。
「入れ墨とかいれるんですか?」
と聞くと、笑われただけで返答はなかった。
それにしても、鯉が美容整形しているなんて庶民のみなさんは知っているのだろうか。まるでセレブだ。
鯉といえば、エサを求めて口をパクパクするあの行動こそが鯉だと思っていたのだが、会場では一匹もそんなまぬけなマネをするものはいなかった。セレブなら指をさしだしてもまるっきり相手にしないのは当然だ。
よほど高級なお食事をなさっているのだろう。すくなくともウチの犬よりかは、はるかにいいもん食ってるはず。
さて。ここまで手塩にかけられ大切にされているニシキ鯉、一番気になるのはそのお値段だろう。 方々で聞いてまわったが、誰もハッキリとは答えてくれなかった。なにか規約でもあるのだろうか。
唯一、
「まあこれくらいのもいるよね」
と人差し指を一本立ててくれたおじさんがいた。
「100万ですか?」
「ははは、育てるのにそれくらいは軽くかかってるよ」
と一笑され、こちらも力なく笑顔を返す。
ははははは……。はははははははー! |