他力で急展開
のどかな一本道で出会った人に「ニホンザリガニ知りませんか?」とドラえもんに道具を頼むのび太のような感じで聞いてみたら、なんとニホンザリガニがいるところまで案内してくれることになった。なんていい人なのだろう(以後この方をAさんとします)。急展開だ。
もうついでにポケットからニホンザリガニを出してくれればいいのに、と例のごとく思っていたら、「以前捕まえたのがいるから」と見せてくれた。
え、とちょっと焦る。 そうは言いつつも、何なんとなく初めて見る生ニホンザリガニは自力で捕まえたのがいいと思っていた。でも、そうか、捕まえたやつがいるのか。そうか、そうか。
ということで、3年間探し求めていた幻のニホンザリガニとご対面です。
初めて生で見たニホンザリガニ。実に美しい。 アメリカザリガニとは品が違う。もしこれが女性ならばミッション系の女子大を出ていると思う。
さらにこのニホンザリガニは、千匹に一匹というただでさえ幻のニホンザリガニの中でも、さらに幻のニホンザリガニとなっている。いきなりすごいニホンザリガニと出会ってしまった。他力で。
普通のニホンザリガニはアメリカザリガニほどではないけれど赤い。それがこのニホンザリガニは青いのだ。感動してしまった。
問題はこの後。 これから自力(Aさんと一緒だけれど)でニホンザリガニを探しに行くわけだ。しかしすでにすごいニホンザリガニを見てしまった。きっとこれから見つかるのは普通のニホンザリガニ。ちょっと感動が薄れるかもと心配している。
熊がいる
幻の中でもさらに幻のニホンザリガニを見せてもらってからのニホンザリガニ探し。真夏につけるエアコンの設定温度が26度から28度になったような若干のテンションの変化は感じられるけれど、今度こそ自力なのでやっぱり楽しみ。
Aさんは熊よけのスプレーを持っていた。「これがないと怖くてここにはこれない」と言う。僕が思っていたよりずっと熊の危険があるようだ。本当にこの人に声をかけてよかった。
山道を10分くらい歩いてニホンザリガニスポットに着いた。先に僕が探していたような沢と変わらない。どこに生息しているかは紙一重のようだ。この辺だとここにしかいないんじゃないかな、と言っていた(札幌全体でもここと、あともう一箇所くらいにしかいないのでは、とのこと。やっぱり幻なのだ)。
石をのけるとお目当てのニホンザリガニがいた。 幻の中の幻のニホンザリガニを見せてもらった後だから若干かすむけれど、十分に嬉しい。きっとノーベル賞を受賞したらこんな気持ちなんだろうと思う。
ニホンザリガニラッシュ
この後も石をのけるとニホンザリガニが、街を歩けば必ず見かけるインド料理屋くらいの頻度で見つかった。今までの幻がウソのようだ。しかし、何匹見つけても僕の心は美化した初恋の思い出みたいにキラキラしている。
やっと出会えたニホンザリガニは宝石みたい。 お世辞抜きで美しいのだ。今までのザリガニのイメージを覆す。ダイヤなのだ。サファイヤなのだ。女性の誕生日にこれを贈ったら喜んでくれる気がする。
大きさは10センチくらい。これでやっと長年の夢が叶った。 彼らに名前を付けるならマリーアントやエリザベートという高貴っぽい名前を付けたい。ここでも顔見知りになりそうなほどブヨが飛んでいたけれど、興奮で全く気にならなかった。
3日目も探した
3日間探す予定が2日目で見つけることができた。 運が良かったとしか言いようがない。3日目は違う場所へ探しに出かけたのだけれど、見つけることはできなかった。やっぱり幻なのだ。
長年の夢だったニホンザリガニに出会えた夜は興奮で眠れなかった。 今でもあの美しさを鮮明に思い出すことができる。いい人たちに出会えたおかげだ。また人から話を聞いてどんどんと情報が増え、道が開けていく感覚はRPGゲームのようで楽しくもあった。ただ一生分の運を使った気がする。