私ごとだが、4月に会社を辞めた。そして、自宅でひとり仕事をするようになって早や2カ月。ふとあることに気づいた。それは、ひとりは寂しいということだ。下手すりゃ、3〜4日誰とも話さないこともある。女優の岸恵子さんは「孤独の裏には自由があり、自由の裏には孤独がある」と言ったらしいが、今の僕がまさにその状態だと思う。
これ以上の孤独には耐えられそうもないので、ペットを飼うことにした。そのペットとは「金魚」である。
(榎並 紀行)
なぜ金魚なのか?
「ん? 金魚?」と思った方もいるだろう。
確かに金魚はペットとしては地味かもしれない。しかし、よくよく考えるとあいつらはかなりカワイイと思うのだ。つぶらな瞳、ずんぐりした風貌、四六時中パクパクしてる口。癒し系としての金魚のポテンシャルには、じつは以前から一目置いていた。
しかもだ。なんでも僕が住んでいる東京都江戸川区は日本の「金魚三大産地」のひとつらしいのだ。日本にはいろんな三大があるものである。
自宅からタクシーで10分ほどのところに「金魚団地」と呼ばれる一角がある。そこはかつて地場産業である金魚の養殖が盛んに行われていた場所なんだそうだ。今では2件の養魚場を残すのみだが、「金魚団地」という愛称は今も地元に浸透している。
今回はそんな「金魚団地」にある「佐々木養魚場」を訪れた。
茨城の広大な池で育った金魚たち
金魚専門の小売店としては日本最大との呼び声も高い「佐々木養魚場」。いくつもの生簀の中に様々な金魚が泳いでいる。
そんな金魚たち。江戸川区生まれかと思いきや、じつは茨城産らしい。以前はこちらでも養殖していたようだが、養殖用の池を最近つぶしてしまったそうだ。
見たこともない金魚がいっぱい
さて、金魚といえば縁日の金魚すくいでみかける「あの金魚」か、せいぜい出目金くらいしか見たことないという人がほとんどだろう。僕もそうだった。ここに来てまず驚いたのは、金魚のバリエーションの豊富さだ。これまで見たこともない姿かたちをしている金魚ばかりなのである。
なんだか本気でいいじゃないか金魚。ここに来る時、タクシー運転手のおばさんが「今年は金魚ブーム来るわよ」と言っていただけのことはある。金魚ブームというのが具体的にどういうものなのか想像つかないが、ドッグカフェやネコカフェのように、金魚カフェが渋谷にできたりしたら痛快だ。
そうなれば僕にも金魚ライターとしての仕事が増えるだろうか。