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ちしきの金曜日
 
「ガビガビ」という名の悲哀に向き合う
ガビガビ、ガビガビ

コンビニ雑誌は多くの人の手により立ち読みされる。結果、表紙がガビガビになりがちだ。ある程度の段階を超えたガビガビ本はもはや新品としての体をなしておらず、買われなくなるため、より一層ガビガビしていく。ガビガビループだ。

今回は一冊の雑誌がそんなガビガビループにはまっていく様を見届けていきたい。

榎並 紀行



ガビガビの始まりは月曜日

コンビニで雑誌を買おうと手に取った時、表面がガビガビしていて、思わず買うのをためらった経験はないだろうか。 そんなガビガビ本はいかにして生まれてしまうのか?

僕の経験からして、雑誌界においてもっともガビガビが生まれやすいのは『週刊少年ジャンプ』である。週刊少年ジャンプは発行部数300万部を超える日本一のマンガ雑誌。毎週月曜日に発売され、ビジネスマンにとって憂鬱な一週間のはじまりをやさしく癒してくれる存在だ。

それだけに立ち読み率も高く、日を追うごとにガビガビ度が増してくる傾向にある。


調査ポイントは近所のコンビニ3店。まずセブンイレブン
きれいな状態の新品が整然と並ぶ

サークルKサンクス
ガビガビなど、どこ吹く風。さすが新品

ファミリーマート
この中の何冊が、ガビガビにならずに買われていくのか?

月曜朝のコンビニ本棚は、新発売の様々な雑誌が整然と並べられ、とても清々しい。もちろんガビガビ雑誌など、ひとつもない。このなかで、運よくガビガビを免れて買われていく子は幸せものだ。

しかし、一度ガビガビのループにはまるが最後。週末まで売れ残り、しまいには「今週のガビガビ本」のレッテルを張られてしまうだろう。そしてそのまま廃棄の運命をたどるのかもしれない。

これ以上そんな不幸なガビガビ本を生んではいけない。廃棄される前に僕が買ってやることにしよう。


表紙がめくれあがってくると、ガビガビのきざし
若干の手あかはみられるが、まだガビガビとまでは言えないレベル

本棚から下手に飛びだしたりすると、ガビガビの餌食になりやすい
ガビガビ養生中

ガビガビが加速する水曜日

とりあえず、月曜、火曜の段階では雑誌としての鮮度が高いため、多少のガビガビはものともせず飛ぶように『ジャンプ』は売れていく。問題は鮮度が落ち、商品としての訴求力が低下してくる週の半ばだ。

というのも、『ジャンプ』を毎週楽しみにしている人ならば、ふつう月曜日、遅くとも火曜日までには買う可能性が高く、水曜日まで売れ残ってしまうと買われる確立はおそらくガクンと下がる。

しかも水曜日は『マガジン』『サンデー』という2大ライバルが発売される日でもある。本棚の一番目立つ場所に鮮度の良いライバル雑誌が並ぶのだ。月・火の立ち読みによってガビり始めた『ジャンプ』は立ち読みで済まされてしまう可能性が高くなる。


3大マンガ雑誌がそろい踏みする水曜日。立ち読み率も高まる

表紙が軽く折れ曲がり、ガビガビループの初期症状
閉じ込みページが、閉じ込まなくなるタイプのガビガビ症状も

様々な人の手により、新たなガビガビが付与されていく

というわけで、水曜日の夕方ともなれば、かなり年季の入ったガビガビが散見されるようになってくる。

こうなったら中途半端に買われるより、むしろ「ガビガビを極めてやれ!」と応援したくなる気分だ。安心しろ、骨は拾ってやるからな。


新勢力であるサンデーの台頭に、追いやられるジャンプ

入りきらなくなって奥に追いやられてる
引っ張り出してみると、なかなかのガビリ具合

ガビガビは勲章だ

試練の水曜日を耐え、なお店頭に居座り続ける『ジャンプ』。この頃になると、歴戦のガビガビも勲章のように思えてくるから不思議だ。

そして調査最終日の木曜。この日は青年誌も含め、ほぼ全ての漫画誌が出揃う。立ち読み客も増えるため、本棚はカオス状態に陥りがちである。


木曜夜の最終ガビガビチェック

こんな雑な扱われ方もガビガビを加速させる
定位置もなにもあったもんじゃない

セブンイレブンではけっきょく4冊のガビガビ本が誕生した
閉じ込みページガビガビのアイツも最後まで売れ残ったようだ

一見ダメージは少なく見えても
めくってみるとこんなことも。裏表紙ガビガビ

ガビガビ三銃士

ということで、木曜日まで多くの人の手でたらいまわしにされた『ジャンプ』はやはりそれなりのガビガビを背負い、売れ残りの憂き目に遭っていた。

そんな精鋭たち(あえてそう呼びたい)をレスキューしてきたので、最後にご覧いただきたい。


珍しい裏表紙ガビガビ。数ページにわたり激しく折れ曲がってしまっている。ガビガビというよりビローンという感じか

表紙が南アルプスの稜線のようにうねる、山脈ガビガビ。もっともオーソドックスなガビり方といえる

個人的に最も悲しみを覚えた閉じ込みガビガビ。閉じ込み特集まで熱心に読まれながら、買われなかったのがかわいそう

と、この3冊はいずれ劣らぬガビり具合。まさに、ガビガビ三銃士だ。それだけ多くの人の手に渡り、楽しませてきたからこそのガビガビであって、4日にわたって彼らの闘いを見届けてきた今となっては、ひとつひとつのガビガビがとてもかっこいいものに思える。

ガビガビはまさに男の勲章だ。

三銃士の休息

僕自身、これまでガビガビになった雑誌に対してあまりいい印象をもっていなかったのは事実である。だが、これからはきっとそんなガビった雑誌を発見するたび「よく頑張ったね」と温かい気持ちになるだろう。

彼らのくたびれた姿は、未来の僕そのものかもしれないのだから。


 
 

 

 
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