埼玉県の浦和(現・さいたま市)は、うなぎを名物にしている。江戸時代は浦和でもうなぎがたくさん採れたそうだ。
現在では浦和でうなぎを採るということも無いそうだが、市内に老舗のうなぎ屋さんは多い。
今回は、そんな浦和のうなぎを大々的にフィーチャーした市民祭りに行ってきました。
(斎藤 充博)
浦和うなぎまつり
浦和の名物がうなぎ。このことをあまり知っている人はいないと思う。僕も『散歩の達人』かなにかの浦和特集で知った。
しかし、知っていても老舗のうなぎなんてそんなに気軽に食べに行けるものじゃない。住んでいるのは川口なんで地理的には近いのだが。
左の写真は江戸時代から続くうなぎの店、山崎屋。ここの前を通る度に「一度浦和でうなぎを食べてみたいなあ」と思っていた。
そこにこのお祭りである。台風の接近で昨日から強い雨が降っていたが、喜んで僕は家を出た。
やなせたかしが大いにからむ
このうなぎ祭り、イメージキャラクターの「うなこちゃん」をやなせたかしが作成している。うちから会場に行くまでにそこかしこで「うなこちゃん」を見かけた。
市民祭りの前夜祭なんて聞いたことがない。さらにその内容は「やなせたかしとアンパンマンコンサート」であんまりうなぎと関係なさそうなのも気になる。
前夜祭から取材しておけば良かった。
駅前の像を見ると、町興し感というか、ちょっとがんばって盛り上げようとしちゃっているように感じられてしまう。ちゃんとお祭りに人は来ているのだろうか。
そんなことを考えながら会場(市役所の駐車場)に到着すると
うなぎ弁当、売れ切れ?
なんだ、ダメなのか。このお祭りは午前10時開始で、僕が着いたのは11時。すごい、ほどんど即売だ。苦しみ紛れにうなぎを焼いている様子を撮影したら、ますます思いがつのった。こんな市役所の駐車場が、うなぎの匂いでいっぱいなのだ。
がっかりした顔を3Dカメラで撮ったら、おもいのほか面白い写真が撮れてしまった。ところで、僕を覗き込んでいる子供は、うなぎをもう食べたんだろうか?知らない人の顔を覗き込む余裕があるくらいだからきっともう食べたのだろうな。憎い。
もう一つのうなぎ弁当屋さん
歩き回っていると、もう一カ所うなぎ弁当を出してくれるブースがあることに気付いた。なんだかものすごい行列なのだが、売ってくれるだけありがたい。すぐに並ぶことにした。
行列に並んでいると、近くのステージでアンパンマンショーをやっている声が聴こえてきた。
(お腹を空かせている人は、ここにいますよ)
ふとアンパンマンにテレパシーを送ってみたくなった。
行列に並んで1.5時間。うなぎ弁当1300円。普通に浦和のどこかのお店に行って、空調のきいた部屋の中でうなぎをゆったりと待っていた方が良かったんじゃないのか、と一瞬思う。
でも僕はそれを今までしなかったんだわけだ。やはり祭りで食べることに意味があるのだろう。
このうなぎ弁当なのだが、ものすごくおいしい。
待った分おいしいとか、朝ご飯食べていないからおいしいとかそういうことじゃなくて、ちゃんといい味しているのだ。
フワッとしてて、それで表面はちょっとサクっと歯触りの良いような感じもある。
うなぎを食べたくなったら、浦和だ。僕はもう今からそう断言することにする。
ここにも、やなせたかしの影
食べ終わって容器を片付けようとすると、弁当の包み紙の裏面にも何か印刷されていることに気付いた。「ウナギヌラヌラソング」…なんだこれは
なんとこんなところにも、やなせたかしだ。「ウーウーウナギ〜」がちょっと食べられる物の断末魔っぽくてこわい。この歌が昨日の前夜祭で披露されたのだろうか。気になって仕方がない。やっぱり前夜祭も行くべきだったのだ。
ところで、落ち着いて周りを見渡すと
他にもうなぎを販売しているブースがあることに今さら気づいた。なんだろう、そんなに今まで自分は切羽詰まっていたのだろうか。
この静岡県のブースは、どちらも「うなぎの蒲焼き」は販売しているのだが、「うなぎ弁当」は販売していない。そして、特に行列ができていたりしなかった。 ということは…、僕はうなぎのためにさっき並んでいたつもりだったのだが、実際は「ご飯」のために並んでいたのかもしれない。冷静さを欠くとは、こういうことなのだろう。
うなぎと、やなせたかしの祭り
うなぎを軸にした市民祭りなのだが「うなぎ」と「屋台」の組み合わせはなかなか難しそうである。様子を見ていると提供のオペレーションは大変そうだし、どうしても一つ一つの商品の単価は高くなってしまう。お客さんたちも、一つ1500円位する物を何種類も買って食べるというわけにもいかない。
それでも雨の中人はたくさん集っていたし、僕もけっこう楽しめた。やっぱりうなぎの力はすごい。それから、やなせたかしも相当すごいな、と心の底から思った。