年配の女性に対し、親しみを込めて「おかあさん」と呼ぶことがある。例えば家族経営の居酒屋などでおかあさん的な店員さんを呼ぶ場合は「店員さん」では愛想がないし、「お嬢さん」ではみのもんただし、やはりおかあさん的な人には「おかあさん」と声をかけるのがベストだと思う。
しかし、人見知りで照れ屋の僕にとって知らない人を「おかあさん」と呼ぶのはなかなかハードルが高い。これはぜひ克服したいもののひとつなのだ。
そこで、街中のおかあさん的な人を積極的に「おかあさん」と呼んでみることにした。
(榎並 紀行)
新宿でおかあさんを捜索
とはいえどんな女性に対してもやたらと「おかあさん」と呼べばいいってもんじゃない。「おかあさん」の呼称を受け入れてくれるのはあくまで「おかあさん的な女性」に限ると思われる。中には「おかあさん」と呼ばれて不快に思う人もいるはずなので注意したい。
そこでまずは「おかあさん的な人」を探さなくてはならない。年の頃は60歳くらいで、かっぽうぎやエプロンが似合う。そんな「ザ・おかあさん」を探そう。
「雰囲気はあるがちょっと若い」「年齢はバッチリだけど、どちらかというと友達の綺麗なおかあさん」などと、自分が求めるおかあさん像の合格ラインに届く逸材がなかなか現れない。
本日のファーストおかあさん
そんな30分におよぶ厳選の末、一軒の定食屋に狙いを定めた。暖簾の隙間から見えたエプロン姿のおかあさんがかなり理想に近かったのだ。
背後におられるのが本日のファーストおかあさんだ。全身から醸し出されるおかあさん的たたずまい。誰がみても「おかあさん」としかいいようのないほどのおかあさんである。
しかし、いざ「おかあさん」と呼ぶとなるとやはりモジモジしてしまう。
それに、いきなり「おかあさん」なんて呼んだりしたら困らせるんじゃないか。