フォークソングで有名な神田川。 東京の都心の排水を一手に担う、宿命的な川だ。 河川界のなかで、一番の貧乏くじを引いているかもしれない。 しかし、神田川の桜はいい。 普段は陰気な排水河川が、ぱっと華やぐのだ。 今日は地元出身の僕が、神田川の桜のことを全国に伝えたいと思う。
(加藤まさゆき)
神田川はドブ川だ
地元出身なので遠慮なく言わせてもらうと、神田川はドブ川だ。 そこらじゅうに自転車が沈んでるし、水の臭いもちょっと臭い。
川沿いを走っている人もいるが、臭いのこともあって、僕はあまり走る気にならない。
都心の雨水を排出するために、両岸は切り立った崖になっており、暗く、深い。 隅田川のような、のどかな空気はなく、沈んだ雰囲気の川である。
神田川が華やぐ季節、桜の季節。
しかし神田川にも、年に一回だけ驚くほど輝く瞬間がやってくる。 桜の季節だ。
神田川の近くには、千鳥ヶ淵・靖国神社と、国民的な桜の名所があるため、いまいち目立たない存在だ。 しかし僕は、神田川の桜がどこよりも大好きだ。 ふだん陰鬱な雰囲気のドブ川へ、桜が一面に咲き誇るというギャップがたまらないのだ。
また、千鳥ヶ淵や靖国神社みたいに、「桜」を前面に押し出す気が無いのも非常にそそる。 どこまで行っても実用性の町の中に、気取らずに桜並木が咲いている。
千鳥ヶ淵がモデル事務所の女の子だとすれば、神田川はホームセンターのレジ打ちの女の子のような魅力がある。 今日はみなさんに、そんな神田川のお花見コースを案内したい。