自宅で月食。
先日、全国的に話題となった皆既月食。
12月21日の月は月食状態で昇ってくる、しかも神秘的に赤いらしいということで、日本中みんな見たくて見たくてしようがなかったと思う。そこまで熱狂的じゃなかったかもしれないが、少なくとも僕は見たかった。
でも雨だったじゃないですか。
(安藤 昌教)
天気が悪いのだ
その日は朝から雲が多かった。
3年ぶりに皆既月食が見られるという東京の月の出は16時25分。僕は撮影機材を背負って16時過ぎから外でスタンバった。
神秘的な赤い月。天文ファンでなくともとりあえず見ておきたいだろう。
とりあえず東京にいては無理だ、そう判断して東の空がひらけている自宅近くの海岸へ向かうことにした。海辺ならば空が広いので雲の切れ間からちらりとでも月が見えるかもしれない。この際うっすらとでもいい、とにかく何か見たい。
大急ぎで電車に乗ったものの、駅に着いたら絶望的な天候だった。この時点で月食終了まであと1時間。
もういい。
くやしいので家の中でどうにかして月食を見たいと思います。
月、自作
ここからいきなり話はせせこましくなりますが、夢破れたうえにずぶ濡れで帰った僕に免じて許してください。
実はこの日は最初から天気が悪そうだとわかっていたので、ここから先の準備は事前にしてありました。
自宅で月食を再現するためには、なにはなくとも月が必要だ。
まず発泡スチロール製の玉を芯にして粘土で月を作る。この玉の大きさにも実はこだわりがあるのだけれど、そのあたりは後で説明したい。
インターネットで月の表面の画像を検索しながら粘土の表面をそれらしく仕上げていく。
クレーターを作るには画びょうがちょうどいい大きさだった。
大小さまざまな画びょうを使って表面のでこぼこを作っていく。
作業中、テレビにはエグザイルが出ていて、すごい面白い話をしていた。
「歌とダンスがうまくてトークまで面白いのだ、月だってきっと僕よりうまく作れるんだろう。」
僕のリアルつぶやきをメモするボイスレコーダーにはそう録音されていた。かなり卑屈になっていたのが読み取れる。
もやもや考えながら2時間ほどかけて月を作った。
できた月をヒーターで乾かす。この時点で月食見逃してからはや10時間くらい経っているのが信じられない。
でも出来上がりを見たら突然元気が出た。これがなかなかの仕上がりではないか。