外に出ると、自販機で売っているあったかそうなコーンクリームスープばかりが目について仕方がない。12月に入りだんだん寒くなってきた。
冷静に観察してみると、各メーカーからいろんな種類の物がでている。うまそうなので見つけたやつは全部飲みたい。10種類飲み比べてみました。
(斎藤 充博)
特濃コーンポタージュ(伊藤園)
「特濃」って改めて見ると凄い言葉だ。「濃」という文字の画数がすでに濃い。飲んでみると、確かに相当ドロドロしている。ドロドロし過ぎていて、なんかちょっとしたきっかけで生物とか生まれそうだ。
飲み終わったらかなりお腹にたまった。小腹が空いた時や、ランチが物足りない時。そういう需要に応えてくれる頼もしいスープである。
じっくりコトコト(ポッカ)
缶に「シャキシャキコーン入り」って書いてあるのだが、本当にコーンが過剰な位シャキシャキしてビックリする。思えば、今までなんの気なしにコーンスープを飲んで、小さくビックリすることが何度かあった。意識はしていなかったけれど、アレはきっと全部「じっくりコトコト」だったんだろう。そのくらい特徴的なコーンだ。
スープ自体は甘めでとても優しい味がする。シャキシャキのコーンとのコントラスト!というメーカーの狙いがあるのかもしれない。
ビストローネセレクト・コーンポタージュ(コカコーラ)
とても高級そうな缶のデザイン。よくよく見てみると他の缶に比べて文字が小さい。「盛りつけ例」の写真も俯瞰だ。
なるほど、こういうところが高級感なんだな…と思って飲んでみると、とても上品な味がする。特徴的なことは無いが、味のバランスがとれているような気がする。おいしい。
しかし、いいのだろうか。高級そうな缶のスープが、上品な味、なんて感想で。どうも缶に惑わされている気がしてならない。
ビストローネセレクト・トマトバジル(コカコーラ)
ここで目先が変わり、トマトスープ。さっきのコーンポタージュと同じシリーズで、高級そうな雰囲気だ。
ところがこれは缶のデザインとは裏腹に、かなりジャンクな味がしてビックリする。口の中を豪速球で「トマト」「塩気」「トマト」「塩気」「トマト」「塩気」…が駆け抜けてゆく。一般的なコーンポタージュの「ほっとする感じ」とは真逆の方向に狙いを定めているのが興味深い。
コーンポタージュの時は「缶のデザインに惑わされているのかもしれない」と書いたが、どうやらそんなこともないらしい。今回は真逆の感想を持てた。自分に自信が持てて嬉しい。
つぶたっぷりコーンポタージュ(サントリー)
コーンスープはどうも「濃厚」「とろとろ」みたいな方向に行きがちなのだが、このスープは違った。とろみが少なくて、飲み口がとてもサラっとしている。希少なタイプのスープだ。
ところでこれ、商品名で「つぶたっぷり」とうたっている。確かに粒はたっぷりだと思うが、他のスープもだいたい同じぐらいの量の粒が入っていたような気がする。
クノールコーンポタージュ(カルピス)
これはうまい。飲んでみると、これまで飲んできたスープとはちょっと違う後味が口の中に残るのだ。とろみが引っかかっているわけではないし、塩っけが残っているのともちょっと違う。
こういう感じって、どう表現したら良いんだっけ…ふと缶を見てみたら、そこにあっさり答えが書いてあった。
ああ、僕がなんだか解らなかったのは「コク」だったのか…と納得した。感覚が言葉に定着するという、ちょっと哲学的な瞬間を認識できて、得したと思った。
コーンポタージュ(キリン)
これは、とても普通のコーンスープだ。特筆して、でっぱったところも無ければ、足りないところも無い。非常に文章に書きにくい感じの普通さである。
むりやり何かに例えてみると、「とても真面目な人との雑談」がこのスープの普通さに近いだろうか。
試しにイラストを描いてみたら、かなり表現として適切なんじゃないかな、という気がしてきた。みなさんも近くの自販機で売っていたら、是非飲みながら上のイラストを見て下さい。普通の雑談みたいな味がします。
うまみとろとろコーンポタージュ(ダイドー)
缶の飲み口がキャップ式で広い。これだけでこのスープは100点である。
実はさっきからいろんなコーンスープを飲み比べていて、一つもコーンを食べきれていない。その点、これは素晴らしい。残っているコーンを目視しつつ、確実に全部食べることが可能だ。
スープを飲み干し、缶の底に一つだけ残ったコーンを見る。なんだか笑っているようにも感じられなくもない。それは多分「自分は缶に置き去りにされないで、確実に食べてもらえる」という安心感からじゃないか。
とろとろ煮込んだカレーリゾット(ダイドー)
自販機で「カレー」を売っているなんて凄い!と買ってみた。
飲んでみると、かなりの甘口。コーンスープと比較してもまだ甘い方かもしれない。そして更に「お米」の変わりに「粒のこんにゃく」が入っている。
感想としては、とにかく「意外」、そしてもう少し付け加えるとしたら「不思議」といったところだろうか。
会話に例えてみると、この位のレベルの意外さはあると思う。
みそ汁(伊藤園)
缶スープがあるんなら、味噌汁だってなきゃおかしいだろ!…そんな伊藤園の主張が聞こえてきそうな、缶みそ汁だ。
飲んでみると、どことなく味噌汁からはすこし遠い味がした。距離で例えると、3キロメートル位のイメージである。
ただ、歩きながら味噌汁を飲めるのは面白い。外の風景を見ながら食べたなめこは、美味しかった。
まとめ
一見同じようなコーンスープも、比べながら飲むと味の違いがある。少なくともコカコーラとペプシコーラ以上の違いはあると思った。
それなのに、普段銘柄ごとの印象がぼやけてしまっていたのは、缶のデザインにあるんじゃないかと思う。メジャーな3銘柄がそっくりだ。