僕の家にある壊れたカメラは学生時代に使っていたもので、1/90秒でだけシャッターを切れるという変な壊れ方をしている。 今日はこの壊れた30年前のフィルム一眼カメラで写真が撮れるのか挑戦してみた。
(加藤まさゆき)
修理不能の一眼カメラ
僕の家には壊れた一眼カメラがある。
18歳のとき、父親からもらったものだ。 今はもう、まともに動かない。10年くらい前に突然シャッターが壊れてしまった。 Nikonに聞いたら、修理するための部品がもう無く、修理不能ということで、僕はあきらめてデジカメを買ったのだった。
それ以来、こいつは僕の部屋のインテリアとなっている。
まあそんな経緯で、10年間壊れたままのこのカメラだが、今見ると不便なカメラだ。 まず、ピントがマニュアルなのだ。手動で合わせる。 そしてレンズにはズーム機能が付いていない。 それでも学生のときは金がなくて、どうしても一眼で写真が撮りたいから、無理やりにこいつを使い続けていた。よくやっていたと思う。懐かしい思い出だ。
これは「メカニカル・90分の1秒」の略で、バッテリーが切れても、ここに合わせれば1/90秒のシャッター速度で機械式のシャッターが切れる機能である。 シャッター速度というのは、速すぎても遅すぎてもいけない。1/90秒というのは、それなりに写せるシャッター速度で、電池切れ時に備えた、いわば非常用の機能だ。
幸運なことに、電子シャッターが壊れたこのカメラも、この機械式の1/90秒だけは何とか切ることができる。 ということは今やインテリア&授業用教材に成り下がっているこのNikon FGも、うまく条件が合えば、まだ写真を撮ることができるんじゃないだろうか。
よし、さっそくやってみよう。
まずは、フィルムを買ってきた。
というか、この時点ですでに懐かしくて楽しくなっている。フィルム。10年以上買っていない物体だ。若い読者にはもう、懐かしいどころか、フィルム自体を扱った事がない方もいるんじゃないだろうか。
これをカメラに装着する。古いマニュアルのカメラなので、装着にちょっと手間がかかる。
もちろんフィルムは手巻きだ。 「巻く」という作業が存在しないデジカメに慣れていると、カチャリ、キチ、という巻き音が気持ちいい。 シャッターの音も、パシャンンッ! と軽快に響く。 そうそう、この音、この振動。10年前の感覚が、めきめきと指先に蘇ってくる感動。 早くシャッターを切りたくて、公園に行ってみた。