「『どうしても今日話するか?』って言うから『お願いします』って言って、どこかコーヒーでも飲みながら…ということになったんです」
−−やっぱり会社じゃね、と。
「で、ちょうどそのころ近くにタワーのあるホテルが出来たんですよ。夜景が見えるスポットで人気だったんですけど、せっかくだからそこに行くことになって。それでエレベーターで上まで昇って、レストラン着いたらウェイターに『お二人様ですか?夜景の見える席が空いておりますが』って言われたんですよ」
−−男ふたりに。
「それに社長が『はい』って言っちゃって。それで通されたのが、2人掛けのソファーが夜景の見えるガラスに向けて置いてある、いわゆるカップルシート」
−−アハハハ!空気読めよ、ウェイターも!
「ぴったり2人寄り添って座るみたいな席で。時間も夕暮れから暗くなってく最高の時間なんですよ」
−−告白違いって感じですね。
「それで世間話してから『実は話ってのは辞めさせてほしい』って切り出して。それで理由を聞かれたんですけど、その時は荒唐無稽な理由がいいと思って、留学したいってウソついたんですよ」
−−理由大事ですよねー。
「する気もないんですけど。それでだんだん外が暗くなって、ガラスにふたりの顔が写るんです。窓に映る自分を見て、僕は何をやってるんだろうなって…」
−−いらないムード感が!
「それで社長も『君の未来があるんだから止めることは出来ない。でも一回だけ考え直して』言ってきたんですけど、こっちは『さんざん考えた結果なんで…』と」
−−ちょっと別れ話っぽいなあ、そのくだり。
「あとその後になぜかケーキ頼んだんですよ。ご飯食べるほど腹減ってないし、『ケーキでも食べるか!』って」
−−スイーツな退職でしたねえ。 |