シラフでじっと立っていると、いろんな音がする。
高い声、低い声、BGM、
隣のスナックから、ものすごい低音が聴こえてきた。
どこぞのおじさまが、カラオケを熱唱しているっぽかった。
何の曲か解析しようとしたが、全然分からなかった。
時間によっても音が変わる。深い時間になるほど、空気がしんとして、シャッフルがよく聴こえた。
終了時間は24時を予定していたのだが、席が盛り上がりっぱなしだったので、延長することにした。
お店のブッキングマネージャーが遊びに来てくれて、「疲れちゃうから、代わりばんこに座ったりして、休んだほうがいいよ」とアドバイスしてくれた。
しかし何故か意地で「平気ッス!」と立ち続ける私たち。
やっぱりカウンターの内と外は、別世界だ。
当たり前だが、カウンター以外の場所は、陽気だ。友達来てくれてるのに、一緒に騒ぎに加われない。
中島らも著の「今夜、すべてのバーで」っていう酒飲みの本があるけれども、
「今夜、すべてのシンクの前で」同じような気持ちで立ってる飲食業の人が、私たちと同じようにたくさんいるんだよねえ、と、Mさんと話した。
別に困ったことは何もなかったんだが…、
かなり酔った男性に「これかけて」ってiPod出されて、 別にいいっすよと、ジャックを貸したのが、実はほんのちょっとイヤだった。
1日店長とはいえ、私のお城。BGMも自分たちで選びたい。
今後、人のお店に行った時、どんなに仲良い店長さんでも、「これかけて」は慎重に言おう、と思った。
あと反省点は、ビール瓶やコップを下げるタイミングが分からず、コップが足りなくなってしまったこと。
コップの底に、どうしても、自家製シロップが溜まるので、お酒部分を飲みきっても、氷とサムシングが残ってしまうのだった。あれは下げにくい。あの見極めは難しい。
……結局、人が少なくなったのは4時頃。閉店したのは5時であった。
1キロ作ったポテトサラダと、スープは、すっかりはけた。
鶏肉だけちょっと残ったので、人にタッパーごとあげた。
ビールは53本売れた(結構売れた!)。
シロップは、しょうがゆず、生しょうが、生ゆず、ゆず、ローズが人気があった。
青汁割は、不人気で、たくさん余ってしまった。
荷物をまとめると、随分と軽くなっていた。あんなに用意したシロップを、皆で飲んじゃったんだなあ、と思うと不思議な感じがした。
店を閉めて、徒歩で帰る。空は少し白っぽくなっていた。
ぽやーっと歩いていると、知人カップルがチャリで追ってきた。ジグザク走りで、私のペースに合わせてくれる。
「またやってくださいよ」とニヤリと笑う。
「そうですねえ、ハハ」と誤摩化す。
全然、青春っていう年齢じゃないんだけど、きっとハタから見たら青春っぽい光景なんじゃないかなあ、と思った。
曲がり角でカップルとわかれたら、足からガクッと力が抜けた。どうも、緊張していて、気合いで頑張っていたらしい。
総合的には楽しかったのだけれど、翌日、過労と腰痛で、1日寝込んだ。
フードの仕事の人、すごいなあ! と、ただ感心してしまう。こういうのを毎日こなして、より良くしていくなんて。好きじゃなきゃ、絶対に出来ない。
でも、自分が「いいな」と思う食べ物を出して、好きな音楽をかけて、皆が笑って盛り上がってくれる仕事なんて、ハマったら止められないだろうな、と想像は出来た。
さて、次はいつやろうか。とりあえず体力をつけないと…。 |