ここでいう石とは道端に落ちているそのへんの石のことである。
ふだんは気にも留めないが、パカっと割れて断面をさらしている石のなかに「おや」と思うものがたまにあり、眺めると地味に楽しいのだ。とりわけ、断面が地層状態になっているものにそそられる。
というわけで石を集めて割り、中を眺めてみよう。
(榎並 紀行)
街の石を集める
ご承知の通り、石はそのへんにいくらでも落ちている。
この調子で、ざくざく石を集めていこう。
ふだんそれほど興味がなくても、いったん始めると夢中になる石集め。振り返ったら、まだスタートして50mくらいしか進んでいなかった。
少しペースを上げていこう。
街中だけでも石は採取できるのだが、もっと自然に近い石もほしいところだ。
近所の海へ
葛西臨海公園(東京都江戸川区)の奥に「葛西海浜公園」という東京湾に面した公園がある。ここには浜辺が広がっていて、石を採るにはなかなかいい雰囲気なのだ。
この日は幸いにも冬の海の冷たさを感じさせない素晴らしい陽気。ただ、いい陽気ゆえバーベキューを楽しむ若者や水遊びに興じるファミリーが多いのは、孤独な石集めニストにはあまり幸いじゃない状況だ。
さすが海。街以上に多くのタイプの石が採れる。波にもまれた傷跡がまだ生々しい荒削りの石から、すっかり角がとれてつるつるになった石まで多様だ。
では、割ります
ハンマーを振り下ろすと、拍子抜けするほど簡単に石は割れた。
石がパカっと割れるとけっこう嬉しい。でもたぶん浜辺イチ地味な喜びだ。
…という感想くらいしか浮かばないほど、しばらく凡庸な断面が続く。
そのどうしようもない地味さ加減。人事とは思えませんな。
ついに、素敵な断面に遭遇
背後に容赦なく打ちつける波の恐怖と、素敵な断面になかなか出合えない焦りからイライラしてきたころ、カントリーマアムみたいな石を割ったら求めていた素敵な断面が表れた。
…というほどのことではないかもしれないが、浜辺で2時間ハンマーを振り続けたつもりで断面をを見てもらうと、当時の僕の興奮が少しは伝わるかと思う。
ふと地層が見たくなったら、崖を探す前に石を割るといい。小規模な地球のダイナミズムを感じることができる。
大自然の前では人間はちっぽけだなんてよく言うが、石が相手ならそんな劣等感を抱く必要はない。なぜなら石はそれ以上にちっぽけだからだ。